ベースボール白書

野球場で逢おう

グリーンスタジアム神戸〜八月のカクテル光線

甲子園や大阪ドームと違い、野球ファンしか名前を知らず、オリックスの準本拠地である「グリーンスタジアム神戸」。正式名称は「神戸総合運動公園野球場」 神戸にあるのにアクセスは不便。神戸市営地下鉄の西神・山手線で「総合運動公園駅」を目指す。すでに…

千葉マリンスタジアム〜マリンの風は熱く

千葉マリンスタジアム(ZOZOマリンスタジアム)とは因縁がある。立命館大学の卒業を半年後に控えた2005年、タイガースファンの友人からロッテー阪神の日本シリーズを観に行こうと誘われた。 「巨人以外は草野球」を公言していた自分だったが、青学に通う弟の…

大阪ドーム〜レイジング・ブルース

2023年の夏、宮城大弥を観るために大阪行きを決めた。毎週水曜日に登板するはずなので事前に往復の深夜バスと一塁側の席を予約。 京セラドームは2010年9月25日、ロッテの西岡剛がシーズン200安打を達成した日から13年ぶり。朝から甲子園で2試合を観てドーム…

神宮球場〜終わらざる夏

甲子園では準々決勝が行われ、海の向こうでは大谷翔平が43号グランドスラムを放った2023年8月19日の土曜。相も変わらず東京は殺人的な酷暑に襲われた。お盆を過ぎても秋の気配は来ない。終わらざる夏が続く。 神宮球場に来るのは今年3回目。春の早慶戦、初夏…

ナゴヤドーム〜Dragon Night

そうだ名古屋、行こう。思い立ったのは2日前。秋に出版するWBCの書籍を執筆していたらバンテリンドームに行ってないことに焦った。ナゴヤドームは侍ジャパンにとって重要な地。詳しくは書籍に書くので割愛するが、今回は試合や選手が目的ではなく、あるスポ…

夏のベルーナ、夏の西武ドーム

野球ファンには共通の季語がある。「夏のベルーナ」「夏の西武ドーム」 西武球場に屋根をカポっとかぶせた西武ドームは小籠包の蒸籠(セイロ)のように選手・観客を苦しめる。その噂を確かめたくて2023年8月26日(土)、高田馬場から西武球場前に向かった。…

進撃の巨人たち、さらば熱男

2023年は9月が終わり残暑の秋が始まった。10月1日(日)、侍ジャパンの社会人代表は中国でアジア選手権に挑み、MLBはマイアミ・マーリンズがワイルドカード進出に王手。ジャイアンツの1軍は2年連続Bクラスだが、2軍がイースタンリーグ優勝をかけて西武との最…

ハマスタの風に抱かれて

2023年9月24日。突然の風に吹かれて横浜スタジアムに来た。巨人vs.ベイスターズ。構図的にはクライマックスシリーズ進出をかけた戦いだが、それはどうでもいい。 6チームしかない中で半分の3チームが出られる争いに価値を感じない。場合によっては負け越した…

福岡ドーム〜博多湾の真珠

1993年、日本初の開閉式ドームとして誕生し、2013年にはWBCの1次ラウンドの開幕球場となった福岡ドーム。東京ドーム以外でWBCが行われた日本で唯一の球場である。セ・リーグは6球団すべてが本州にあるが、パ・リーグは北海道、そして福岡と日本を縦断する。…

第106回全国高等学校野球選手権大会

猛暑が続く令和6年の夏、東京では2日続けて人生で経験したことのない大雨が降った。梅田に向かう深夜バス、静岡では大雨による交通規制が出るほどの土砂降り。高校野球が熱を帯びる関西では17日間、好天に恵まれた。甲子園の100周年を神様も祝福。 8月23日、…

遙かなる甲子園〜100年目の詩

2024年8月23日、決勝戦の甲子園球場 令和6年、阪神甲子園球場は100周年を迎えた。夏、9回、金属バット。三重奏が織りなすシンフォニーは日本の八月を照らすカクテル光線であり打ち上げ花火。野球は反時計回りにベースを一周するボールゲーム。時間の法則に逆…

おすすめの野球本

70年代、アメリカで売れない本の2大巨頭が日本人の本、野球の本だった。野球は止まっている時間が長いスポーツ。考える時間が長く、頭のスポーツ。映像で分かるのは氷山の一角。最も頭を駆使するスポーツであり。活字ベースボールに触れることで、野球の真の…

台北・台中トワイライト〜海の向こうの甲子園

2023年9月1日(金)、有給をとって台湾へ。台北のホテルにチェックインし、シャワーを浴びるとすぐに準備。海の向こうの甲子園、18歳以下のワールドカップが開かれている天母野球場へ。 ホテルから近くの中山(ソンシャン)駅から淡水信義線(上り) で淡水…

エスコンフィールドHOKKAIDO〜北海道のアンビシャス

エスコンフィールドHOKKAIDO 札幌ではなく北広島という小さな町に日本一の野球場がある。石狩平野の中央に位置し、明治の開拓で広島からの入植者が集落をつくったことから「北広島」になった。東広島市と姉妹都市。人口5万6000人。生まれ故郷、奈良県桜井市…

都市対抗野球2024〜野球雲が見えた日

「毎日クソ暑くて死にそうですね」なんて書き出しのビジネスメールが届く令和6年7月。プロ野球でも熱中症が顕著になり、夏の野球は給水所のないフルマラソン化している。高校野球の甲子園すら大阪ドームへの遷都が唱えられる。東京ドームが存在しなければ、…

奈良の甲子園〜まほろばの野球

初代の天皇である神武天皇を祀る橿原神宮。大和三山のひとつ畝傍山(うねびやま)が見守る麓に奈良県立橿原公苑野球場(佐藤薬品スタジアム)がある。ここは夏の甲子園の奈良県代表校を決める予選会場。 1952年(昭和27年)7月に開場。その年の9月にはプロ野…

野球殿堂博物館〜蘇った野球殿堂

1990年に刊行された山際淳司さんの『野球雲の見える日』に「忘れられた殿堂」という一遍がある。後楽園球場から東京ドームに移転する前の野球殿堂博物館を描いた短いコラム。1959年(昭和34年)6月12日、 後楽園球場横に開館。山際淳司さんは60年代から70年…

都市対抗野球2023〜一瞬の夏

リモートワークが増え、同じ部署でも同僚や上司と顔を合わせなくなった。たまに会うと仲はいいが連帯感は希薄になりつつある。もし会社に野球チームがあって、企業がひとつになれれば、どれほど楽しみが増すだろう。 アマチュア野球は夏にクライマックスを迎…

今永昇太〜横浜ダイヤのA

最後に横浜の埠頭に来たのは野球を題材にした映画『バンクーバーの朝日』のエキストラに参加した10年前。プロ野球のシーズン前でガランとした横浜スタジアムを見上げていた。今は真夏の熱狂空間に変わっている。 毎週のようにWBC戦士を追いかけているが、最…

社会人野球日本選手権〜晩秋の片隅で

大阪ドームでの日本シリーズが終わり、すぐに社会人野球日本選手権が開幕した。日本シリーズより楽しみな大会。今年で48回目を迎える。 11月8日(水)から19日(日)までの12日間、前年王者トヨタ自動車をはじめ、予選を突破した32チームが優勝旗である「ダ…

Baseball 5

室内でやる野球があるという。ドーム球場ではない。体育の授業で使うような広さの空間。その名を「Baseball 5」という。 5人制、5イニング、道具はゴムボールだけ。18mの正方形のコートの中で行う超コンパクトなスモール・ベースボール。小学生の頃に休み時…

佐々木朗希と宮城大弥〜ジョナサンの翼

9月になっても日中は夏。夕暮れが訪れてようやく秋がおりてくる。2023年9月10日(日)、ふたりのWBC戦士が戻ってきた。巨人の大勢、そしてロッテの佐々木朗希。 向かったのは海浜幕張。錦糸町で師匠と会い、総武線で西船橋。南船橋まで乗り継ぎ、武蔵野線に…

サンマリンの風に抱かれて

WBCを追いかけて6ヶ月。侍ジャパンの戦士を見るためプロ野球12球団すべての試合を観戦し、トーナメント制の野球を学ぶために高校野球の甲子園、全日本大学野球選手権、社会人の都市対抗野球にも足を運んだ。9月は台湾にU-18のワールドカップ、米国はフェニッ…

真夏の侍ジャパン2023

土曜日のベルーナドーム、日曜日の巨人vs.阪神戦、そして月曜も野球観戦3連発。灼熱の甲子園を越えてきた高校球児たち、アメリカに渡って米国代表との激闘を勝ち切った大学生。高校日本代表vs.大学日本代表。侍ジャパン同士の贅沢な対決が観られるのはこの日…

全日本大学野球選手権2023

プロ野球やメジャーリーグは秋に頂点を決めるが、アマチュア野球は夏にクライマックスを迎える。7月に社会人野球の都市対抗、8月に高校野球の甲子園大会があり、夏祭りの先陣を切るのが6月の全日本大学野球選手権大会。 全日本大学野球連盟が主催し、全国の…

ウエストサイド物語〜春の早慶戦2023

野球ファンに共通の印籠がある。 早慶戦 たかが大学野球の、しかも関東の東京都に限定した2校の戦いに、全国の野球ファンは憧憬と敬仰を抱く。日本の大学スポーツにおいて、箱根駅伝と早慶戦はローカルな戦いにもかかわらず全国津々浦々に名を轟かせる。 慶…

浅野翔吾〜あすなろ白書と無限の蕾

2023年4月。春風に誘われてジャイアンツ球場に来た。巨人の2軍を観るのは同郷の岡本和真を追いかけてた8年前以来。今はもう球場のシートも変わっている。平成から令和になり、ついに岡本和真のポテンシャルを超える高卒の野手が現れた。 浅野翔吾。メジャー…

巨人vs.阪神〜伝統の一戦2023

日本のプロ野球の黎明期、「投」の沢村栄治、「打」の景浦將、「守」の苅田久徳と呼ばれた。東京セネタースという今な失きプロ野球チームに所属した苅田は日米野球を経験し、「内野の要は二塁手だ」と言ってショートからセカンドに転向したという。 「日本に…

ローンデポ・パークのムーンライト〜マイアミの奇跡

ニューヨーク、フィラデルフィア、そしてマイアミ。米国に求めるものは、いつも東海岸にあった。2023年9月17日の日曜日。 ビスケーン湾の朝日に救われ、朝食も食べたことで少し気分が晴れた。シャワーを浴びて10時半にUberを頼む。10ドル。この旅で一番安い…

幻のチェイス・フィールド〜アリゾナ砂漠の蜃気楼

2023年9月16日(土)、一睡もできずに朝を迎えた。6時を過ぎても外は暗い。6時半を過ぎて、ようやく空が明けてきた。日の出を見よう。インスタントのコーヒーを飲み干し外に出る。 ホテルの前にはバンク・オブ・アメリカ。人はいない。静かなフェニックスの…