直前合宿は本番以上に重要な存在。まだチームワークができておらず、"選手の寄せ集め"をチームにしていくのが直前合宿。ともに汗を流し、泥だけになって初めて"侍ジャパン"は構築される。
- 10月28日(月) キャンプ前日
- 10月29日(火) キャンプ初日
- 10月30日(火) キャンプ2日目
- 10月31日(木)キャンプ3日目
- 11月1日(金) 合宿オフ
- 11月2日(土) キャンプ4日目
- 11月3日(日)キャンプ5日目
- 11月4日(月)キャンプ6日目
- 11月5日(火)キャンプ7日目
- 11月6日(火)キャンプ最終日
10月28日(月) キャンプ前日
10月28日月曜。新宿は昨夜の雨足が強くなった。シャワーを浴びながら「勘弁しくれよ」と愚痴る。タクシーを使いたいがお金に余裕がない。登山用のレインウェアを着て朝7時にバスタ新宿に向かう。旅の出発日に小雨は何度かあったが、どしゃ降りは初めてだ。新宿に10年以上住んでいて10日間も離れるのは登山家のエヴェレスト遠征に同行した8年前以来。羽田に着いたがターミナルを間違え慌てて移動。散々なスタートだが、あとから良いことがあると前向きに捉える。余裕を持って来たので1時間ある。その間に仕事。プレミア12密着はワーケーションだ。
宮崎空港も小雨。先週22日に大雨が降ったようで日南線の一部が運休。今年は特に雨が多い。今後は合宿も第1回WBCの福岡ドームのように、屋内球場でのキャンプが増えそうだ。
侍ジャパンの合宿が行われる清武総合運動公園へは宮崎空港からJR日南線と日豊線を乗り継いで清武駅へ向かう。
清武はオリックスがキャンプ地にしているため、バファローズ関連のお店もある。運動公園までは徒歩45分。
前回のプレミア12もサンマリンスタジアムではなく清武。侍ジャパンはWBCのサンマリンスタジアムと清武の二刀流で合宿を行う。アジアCSも清武。
途中のファミマで傘を買ったら雨がやんだ。出店の侍パークを設営中。侍ジャパンは町おこしも兼ねているので多くの人に訪れて欲しい。お昼は毎回、侍パークの屋台で食べる予定だ。
メイン球場となるSOKKENスタジアム。明日から5日連続で雨予報だがどうなるか。 日本シリーズで戦う4人を除く24人が明日からキャンプを行う。
野球ファンからは「今回のメンバーはソフトバンク(ホークス)より弱い」と揶揄される。侍ジャパンのユニホームを背負っている以上、 悔しさは結果で見返すしかない。
才木浩人・森下翔太
阪神タイガースの新監督になった藤川球児は「目に見えないものを必ず掴んで帰って来られる」と森下翔太、才木浩人のふたりを送り出した。才木も「世界一を獲ってきます」と頼もしいコメント。
戸郷翔征・井上温大
日本シリーズに進出できなかった悔しさを侍ジャパンで晴らし、初代表になった井上温大をサポートする。井上は夢だった日本代表になれた嬉しさと「左投手の良いところをぜんぶ盗む」と意気込み。
髙橋宏斗
秋季教育リーグのフェニックス・リーグに前日登板し、プレミア12の公式球を使用。3イニングで3安打無失点。試運転で157キロを出した。「スプリットの状態を上げたい」と意気込み。
10月29日(火) キャンプ初日
朝9時、小雨まじりのSOKKENスタジアムでは侍PARKの設営が進み、ファンが球場前で侍ジャパンの到着を待つ。雨足が強くなると映画『シェルブールの雨傘』のように緑、青、白、ピンクと色とりどりの傘が開いた。それぞれ抱えたプレミア12への想い、花が咲いていく。太陽だけでは干からびてしまう。大地を潤し、作物を育てる慈愛のように雨が侍ジャパンを育てる。見学者のほとんどが「侍ジャパン」のファンではなく個別の選手の「追っかけ」。大きな一眼レフを抱えた女性が多い。昭和や平成にはいなかったファンが今の野球を支えている。
10時前、総大将の井端監督を先頭に侍ジャパンが到着。3日前まで韓国シリーズを視察。去年のアジアCS決勝戦の翌日も神宮大会をチェック。とにかく休まず動き続ける。気づけば、どこかの野球場にいる現場主義。
あいにくの雨でコーチ陣の表情も固め。天気によって臨機応変に練習場所やメニューを変えなければいけない。
最年長の源田壮亮を先頭に選手も続々と球場入り。
プレミア12はシーズンの疲労がピークに蓄積するタイミングの大会。対戦国だけでなく自分との戦いも重要になる。
村上宗隆、岡本和真、万波中正というパワーエリート不在の侍ジャパン。スモールベースボールでいくのか、空中戦に挑むのか。鍵を握るのが森下翔太。2年目の選手で唯一の選出。打線の中軸になり、チームに活気を与える存在。
選手は日向夏ドームに移動して室内練習。ウォーミングアップやキャッチボールで体を慣らす。
侍ジャパンの公認サポーターの中居正広も初日から取材。金メダルを目指す侍ジャパンに縁起のいいブロンド・ヘア。
鈴木翔天と坂倉将吾がブルペンに移動して投球練習。坂倉も鈴木のボールを絶賛。フェニックス・リーグでの調整が上手くいっている。投手は13人中8人がパ・リーグなので、できるだけ多く球を受けたいところ。ブルペン観覧席はファンにとって間近で一流選手のピッチングを堪能できる贅沢な場所。
11時40分から侍ジャパンはお昼休憩。侍パークで宮崎キャンプ飯。今回のプレミア12からは駐車料金が3,000円。地元の方の来場が少ない。残ったご飯は半額セールになり、それでも余ったものは処分。宮崎市も侍ジャパンで稼ぐ気持ちは分かるが、地方行政は難しい。
地元宮崎の「輪(りん)」。あったかうどん450円。醤油出汁。寒空の中で身体が温まる。
午後から雨がやみ、予定どおりSOKKENスタジアムで打撃練習。井端監督も笑顔で今日は選手全員に声かけ。金子誠ヘッドコーチが「雨が降ったら室内練習場に移動するぞ」と古賀悠斗に声かけ。選手のまとめ役か。
井端監督は開幕戦のオーストラリア戦に向け「初戦は意外と野球が動かない。そこをスムーズに勝てるようにしたい」と強調。ホームランを狙っていくのではなく、小技や足を絡めた野球を示唆。森下や清宮、五十幡らがバント練習を行っていた。
岡本和真の代わりを期待される清宮幸太郎は井端監督から「久々に良いバッティングが見たい」とハッパをかけられ気合いの打撃練習。良い当たりがあった。
打撃練習では辰己涼介もいい当たり。侍ジャパンのリードオフマン候補の筆頭。
源田壮亮は牧秀悟が来るまで唯一のWBC野手。どこまで若手に経験を伝えられるか。前回のプレミア12優勝メンバーでもある。
初日から柵越え連発の紅林 弘太郎。今年のNPB球には苦労したが、プレミア12のSSK球とは相性がいいか。侍ジャパンへの憧れは他の選手より強い。森下翔太も快音連発で頼もしい。井端監督も去年のアジアCSよりバットが振れているとご満悦。
14時前にフリー打撃を終え、自主練習。梵英心コーチを運転手にゴーカートで数十メートルだけ移動する小園海斗、村林一輝。選手も笑顔でリラックス。チームの雰囲気づくりも井端ジャパンのコーチ陣は上手い。
大勢がブルペンに移動して軽めの投球。一般のファンは見学できず、中居正広だけ取材をしていた。
14時半でキャンプ初日を切り上げ。アジアCSと違い報道陣の数が多く選手はインタビュー対応に追われる。ただでさえ疲労が蓄積している時期。ファンが「サインお願いします」と声をかけると「ごめんね」と謝っていた。
そんな中でも坂倉将吾と五十幡亮汰がファンサービス。ちびっ子たちも大喜び。こうして侍ジャパンを目指す野球少年が育っていく。わずか数時間で見るべきところが多かったキャンプ初日。明日からブーストをかけ、5日の練習試合に向かっていく。
補足:韓国代表のエースが故障離脱
プレミア12で侍ジャパン最大のライバルとなり、日本戦での登板の可能性が高かったエースであるウォン・テインが右肩の故障で離脱。韓国も日本シリーズと同じ韓国シリーズが行われており、激戦の影響が出た。プレミア12は過酷な国際大会。日本シリーズに登板中のモイネロも疲労が見える。日本のエース髙橋宏斗は完走してもらいたい。
10月30日(火) キャンプ2日目
野球場は初めて訪れた場所でも、どこか懐かしい匂いがする。土や芝のにおい、野球好きが風に乗ってやってくる旅愁がそうさせるかもしれない。昨日は5月に広島のゲストハウスで会ったカープファンと偶然の再会。そんな不思議を侍ジャパンは運んでくれる。キャンプ2日目は晴れ予報。ここ数日、宮崎では悪天が続いた。名古屋から来た楽天ファンの女性は2日間とも雨に降られたが、ようやく快晴を迎えた。
地元のちびっ子たちが多く来場。近くに保育園があり春季キャンプもよく来るらしい。「おはよー」と元気よく選手に声かけ、中日の清水達也が「おはよう」と返してあげていた。合宿は15時までが多いので子ども達も来られる。ナイターの試合は観に行けない子も来るので、キャンプは未来の侍ジャパンと野球ファンを育てる大切な土壌。
最初にグラウンドに出てきたのはロッテの佐藤都志也と清宮幸太郎。WBCは他の選手もシーズン開幕に向けて調整を行なっているが、プレミア12はオフに向かう。
秋季キャンプはあるが、治療や身体を休ませる選手も多いため、代わりの選手を追加招集しにくい。ウォームアップは怪我をしないために大事な練習。
ウォーミングアップのコンビは日本のエース髙橋宏斗とクローザー大勢。プレミア12はWBCと違って球数制限がないので、ひとりのピッチャーが多く投げられる。いかに守護神まで繋ぐかが勝利の鍵。
久しぶりのお日様に楽しそうな選手たち。太陽も観客になる屋外球場の力。
キャッチボールのペアは髙橋宏斗と才木浩人。日本が誇る「ヒロト」コンビ。才木浩人はキャッチボールなのに球のノビがエグい。髙橋のグラブが押される。受けた本人も驚いていた。
キャッチボールなのに弾丸を投げる日本ハムの北山亘基。代表に選ばれた嬉しさと気合がボールに乗っている。誰よりも遠い距離で投げ、最後まで残って投げていた。
ピッチャー陣は守備練習。髙橋宏斗が二塁へ矢のような送球を投げるとチームメイトも「おー」と感嘆。
守備のノックでは混乱も。緊急で追加招集された選手のユニホームがないため、サードの守備を背番号8が行い、なぜ辰己涼介がサードの守備を?と思ったら村林一輝、ファーストの守備を背番号24の紅林弘太郎が行っていると思ったら清宮幸太郎。国際大会ならではの光景だが、早く正規のユニホームが届いて欲しいもの。清宮は5日の練習試合でレフトでの起用が決まっている。
ブルペンは清水達也(古賀悠斗、佐藤都志也)、藤平尚真(坂倉将吾)のコンビ。
合宿前に国際球への不安を口にしていた清水達也だが問題なさそうだ。
藤平もストレートは凄い。見学に来た大勢も「高めの直球が強い」と惚れ惚れ。藤平尚真と坂倉将吾は同い年、同じ千葉出身、家も近所、リトルシニアの選抜チームで一緒だった幼馴染。本戦でのコンビが愉しみな2人。
セとパ・リーグを入れ替えて合宿中に息を合わせる。合宿で最も大切な練習の一つ。日本シリーズに投手と捕手が一人もいなかったのは侍ジャパンにとって幸運だ。
キャッチボールで気合いの投球を見せていた北山亘基のブルペン。ストレートの質がエグすぎる。このまま好調を維持したら世界を驚かせる投手。
選手たちは毎日11時40分に、もぐもぐタイム。その間にファンも侍パークで昼休憩。
石坂村地鶏牧場の炭火焼き800円。手羽先をサービスしてもらった。塩と炭の魔力で地鶏が鳳凰のような美味しさ。柚子胡椒の旨味も羽ばたく。
貴重な昼休憩の時間を潰して宮崎出身・戸郷翔征がサイン会。素晴らしきファンサービス。24歳の若さで巨人のエースを背負う器。井上温大も同じく30分ほどサイン会。今日はこれで練習を切り上げか。
5日の練習試合では森下翔太がライト、辰己涼介がセンター、清宮幸太郎がレフト。ベイスターズの佐野と桑原がいないため1試合限定のレフト。五十幡亮汰は良い場面での代走に使いたいと井端監督。
惚れ惚れする走塁を見たら納得の起用。走塁練習でもスピードや躍動感が全然違う。ひとりだけ風が走っているような選手。
午後からは快晴の中、打撃練習。ひとり気を吐いたのが紅林弘太郎。今日も気合いと飛距離ナンバーワン。柵越え連発で球場のファンからも唯一、拍手が沸き起こった。自然と手を叩いてしまうほど気力がみなぎっている。なんなら侍ジャパンの4番候補のひとり。
見事なバッティングに井端監督も近くによって何かを伝えていた。去年のアジアCSはコンパクトな打撃をする打者が多かったから、井端監督も見ていて気持ちいいだろう。
昨日に続いて打撃センスが別格。半グレみたいな表情も国際大会の喧嘩向き。侍ジャパンのリードオフマンは辰己涼介。去年の岡林勇希より打撃センスを感じる。試合でも発揮できればヌートバー並みの起爆剤。ここまで凄い打者だったとは。
古賀悠斗、坂倉将吾、佐藤都志也が打撃練習。国際大会は初めて組む投手との連係で捕手としての仕事が増え、さらに打撃も求められる。過去のWBC、プレミア12で捕手のMVPがいないが、優勝への貢献度は最も高いポジション。坂倉は柵越え連発、佐藤は安定感バツグンの打撃、古賀は初球バント練習でコーチ陣に遊ばれる。
なぜか初球がバントだった古賀悠斗。去年のアジアCSで最高の送りバントを決めたので、それを再現させたのだろう。きちんとバントするとコーチ陣全員が拍手。
今日も14時前に練習は切り上げ。明日も同じメニュー。天気も曇りで雨はなさそうだ。室内練習場(日向夏ドーム)で坂倉将吾と五十幡亮汰が居残りでバッティング練習。坂倉は通常の左打ちと右打の両方で打撃練習。夜は髙橋宏斗、清水達也、井上温大、戸郷翔征の4人で焼肉を食べたらしい。井上温大は眠れない日々を過ごしているので、良い気分転換になってほしい。明日はキャンプ前半の最終日。
10月31日(木)キャンプ3日目
キャンプ前半の最終日。空は濃いグレーの曇り。墨に近い色。天気は持つだろうか。オフの明日は雨予報。お天道様を味方にできるか。この日はロッテの鈴木昭汰が体調不良で欠席。本番には問題ないが、今日は鈴木を追いかけようと思っていたので残念。
グラウンド一番乗りは中日の清水達也。29日は戸郷翔征、井上温大、髙橋宏斗と焼肉、30日は同学年の大勢とも食事。
次にロッテの佐藤都志也。イエローシューズがカラフル。ハロウィーンの仮装をしなくても、侍ジャパンのユニホームは世界一カッコいい。五十幡亮汰(ブルー)、紅林弘太郎(紅ピンク)、隅田知一郎(フレッシュグリーン)、パ・リーグにオシャレ番長が多い。
侍ジャパンのキャッチボール。横山陸人は試合と同じサイドスロー。大勢は誰よりもガチなオーバースローで全力投球。よく肩壊さないなと感心する。
今日の侍ジャパンのユニホームは上下が白。このほうが日本代表の感じがする。
今回のプレミア12は日本の投手が未体験の20秒ピッチクロックが導入される。第2クールからは時短への適応も重要になる。
ピッチャーが守備練習をする横で亀井コーチが外野ノック。初球は飛ばしすぎてフェンス直撃。その後は的確なノック。あのウォーカーに守備を教えるのに手を焼いた経験が活きているか。
背番号24の紅林弘太郎と背番号24の清宮幸太郎の「コウタロウ」キャッチボール、紅林弘太郎から清宮幸太郎へのダブルプレーの内野守備のあと、清宮はレフト守備練習と大忙し。1試合限定のために動き回る。
第二グラウンドで隅田知一郎、井上温大と戸郷翔征がキャッチボールと投球練習。戸郷は2階から投げ下ろすような角度。
第1クール最終日とあってピッチャー陣が次々とブルペン入り。日に日にブルペン入りする投手が増え人気コーナーに。1人10分の見学で入れ替え実施。まずは才木浩人、北山亘基、早川隆久。ダイナミックさNo. 1の才木浩人。この躍動感は侍ジャパンにとって頼もしい。
才木浩人は国際球の感触とピッチクロックの間隔での投球を確かめ30球。受けた坂倉将吾が驚く球威。井端監督もボールに角度、迫力があると称賛。
打者も目慣らしのために打席に立った。森下翔太は北山亘基の打席へ。5日まで試合がないので一流の生きた球に慣れておく。
他にも辰己涼介、清宮幸太郎、小園海斗が打席に立った。
その北山亘基は最後まで残り、かなりの数を投げ込んでいた。連日、気合い全開。井端監督も「仕上がっている」とご満悦。
早川隆久は国際球に「重さも縫い目も全然違う」と言うが、井端監督が「「ほぼストライクに来て、すべての球種を投げ順調な仕上がり」と褒めた。
続けて髙橋宏斗と大勢、侍ジャパンのエースと守護神のブルペン練習。
髙橋宏斗は27日のフェニックスリーグで3イニングを投げているので出力5割で13球の調整。傾斜確認がメイン。
大勢は全身バネのようなしなり。甲斐拓也が球を受けて怖かったピッチャーに挙げるだけある。
井上温大もプルペン入り。低めへのストレートの威力がすごい。これなら世界を相手にしても打たれない。
戸郷翔征は軽く投げるだけで井上をしっかり見守る。緊張しっぱなしの井上のために一昨日、焼肉会を開いたりと、WBCのダルビッシュ有のような献身。こうして侍ジャパンの全進野球は生まれる。
午前の練習を終えた早川隆久がファンにサイン会。第2クールは大勢のファンが来るので、すごい群れになりそうだ。
午後からは打撃練習と守備練習。国際大会は守備が命。ひとつのミスからボロボロとチームが崩壊していく。鉄壁の内野を築いてほしい。そのためにショートの源田は重要。
グラウンドの飛行機のように低空で翔んでいく五十幡亮汰。早く試合で韋駄天を見たい。
全体練習の締めは、清宮幸太郎と紅林弘太郎の「背番号24こうたろう」コンビの打撃練習。宮崎キャンプで最も拍手が起き、侍ジャパン名物。清宮はスコアボード直撃弾、紅林弘太郎も柵越え連発。井端監督は紅林を「シーズン2本塁打と思えないバッティング。打球速度も素晴らしい。ちょっと驚いている」と絶賛。第2クールも調子を維持できれば4番で試してもいいのではないか。
侍ジャパンの宮崎合宿は3日間で最も早い13時20分終了。坂倉将吾、古賀悠斗が特打、佐藤都志也が室内練習場で自主トレ。キャッチャー全員が居残り練習。こういう姿を見ると、勝てると安心させてくれる。心強い捕手陣。
室内練習場で居残り練習をしていたのは小園海斗、五十幡亮汰、辰己涼介、森下翔太、佐藤都志也の野手陣。
森下と佐藤がファンサービス。明日は終日の雨。ちょうど侍ジャパンはオフ。井端監督は天候も味方にした。いよいよ侍ジャパンはキャンプ後半。ギアを上げて5日の練習試合に向かっていく。
11月1日(金) 合宿オフ
11月の頭はオフ。予報では大雨だったが、曇天。そのかわり明日の練習日が雨。予報が当たらない。プレミア12のように先を読むのが難しい。この日はいろんなことが決定した。日本シリーズに出場中の牧、桑原、佐野、栗原は8日から名古屋で合流。状態を見て9、10日開催のチェコとの強化試合に出場する。宮崎キャンプには来ないことが決まった。WBCの大谷翔平、吉田正尚、ヌートバーのような着火剤となるか。
最大のサプライズは栄えある13日のオーストラリア戦の先発を任されることが決まった井上温大。侍ジャパン初選出&追加招集から異例の開幕投手。2015年の第1回大会は大谷翔平、第2回は最多勝の 山口俊と、国を代表するエース格が登板してきたので、今回の抜擢は驚き。井端監督は10月29日の合宿初日に本人に伝えたという。井上温大は5日の広島との練習試合で3イニングほど投げ、中7日で開幕戦に挑む。ブルペン練習では低めのストレートが凄かったので、世界を驚かせるデビューが待っている。
11月2日(土) キャンプ4日目
宮崎キャンプ第2クール初日。朝から強い雨と風が吹いていたが、9時過ぎには晴れてきた。土曜とあって、すでにファンが多い。それでも平日より2、3割増し。やはり全体的に少ない。次第に雨が降ってきた。雨だって侍ジャパンの合宿を観たい。
キャンプ後半戦のスタートとあって気合いが入っているのか、髙橋宏斗や大勢、早川隆久、紅林弘太郎などが予定より早く到着して自主練。明日からは9時前に来ないと。今日から実戦練習のメニューが組まれ、エンジンを温めていく。
9時半に選手バス到着。10月29日と同じく後半戦も室内練習場のスタート。
練習が始まる前に1人限定でファンにサインしてあげる井端監督。オーストラリアに研究されるのを承知で早い時期に井上温大の開幕投手を発表するなど、かなりの強気。それくらいの気概じゃないとプレミア12を勝ち抜けないということか。
空は太陽が出て晴れてきている。SOKKENスタジアムではグラウンドの整備が続く。ライブBP(実戦形式の打撃練習)が行われる11時半前には状態が回復。グラウンドキーパーさんの支えがあっての侍ジャパン。
第1クールの最終日を体調不良で休んだロッテの鈴木昭汰も今日から復帰。本人いわく体調も万全。5日の練習試合では投げず、コンディション次第でチェコとの強化試合で投げる予定。
SOKKENスタジアムでは隅田知一郎がライブBPに備えて肩をつくる。キャッチボールの相手は藤平尚真だった。
打者10人に対し34球を投げ4三振と好調。
辰己涼介、村林一輝、坂倉将吾 、源田壮亮と2回ずつ対戦。森下翔太にはホームランかと思うフェンス直撃を打たれたが、完全なヒットはこの1本のみ。明日以降もライブBPはキャンプの目玉になる。
プルペン練習は満席で入れ替え制。土曜日とあって外は長蛇の列。清水達也が5日の練習試合に備えて投げ込み。調子は良さそうだ。
ライブBPを終えた野手陣もブルペンでコンディショニング。身体をほぐす。清宮幸太郎はMyユニホームが届いたか。
常に一緒の戸郷翔征と井上温大。開幕投手という栄誉とプレッシャーの井上を献身的に支える。
突然の雨のなかサイン会。身体が冷えてもファンサービス。早く休んでほしいがファンも必死。これもプロの仕事。
この日は松坂大輔や杉谷拳士がテレビの取材。杉谷が「本家肉巻きおにぎり」を買って戸郷翔征に「宮崎サイコー」と叫んでいた。店員さんに何を買ったんですか?と訊くと、最初は2種類を言ったが、訂正して3点セットの1500円と言った。商売上手。それに乗っかって3点セットを買った。
これからミーティングが始まる貴重な時間に源田壮亮もサイン会。野球少年に「グローブにサインしてもいいの?」と優しい気遣い。さすがの人柄。
30度を超えるカンカン照りだがグラウンドの状態は回復せず。宮崎キャンプ第2クール初日は14時前に終了。予定されていた屋外打撃、守備練習は無くキャッチボールのみ。今日からペアを組む小園海斗が紅林弘太郎に「雨の日は朝早くから来ないほうがいいよ」とアドバイス。ブルペンでは佐藤都志也、坂倉将吾、古賀悠斗のキャッチャー陣が守備練習。捕手陣は3人だけなので連帯感が強いのか、村田バッテリーコーチも含めて、かなり和気あいあい。最も雰囲気が良い三枚看板かもしれない。明日からの清武は30℃を超える真夏日。侍ジャパンのエンジンも加速していく。
11月3日(日)キャンプ5日目
雲ひとつない蒼天。いつもより30分早く宿を出て駆け出してしまう。気温25℃、エンドレスサマーの宮崎が帰ってきた。
鈴木昭汰は早朝からの自主トレ。体調不良も完全に治り9日、10日のチェコ戦で登板予定。
大勢、村林一輝、早川隆久、髙橋宏斗、北山亘基も自主練組。9時半に五十幡亮汰、森下翔太などの選手バスも到着。今日はライブBP(対戦形式の打撃練習)はなく、守備練習が中心。地味ながら侍ジャパンの強さを象徴する練習メニュー。
グラウンド一番乗りは村林一輝。本大会でどんな活躍を見せてくれるか。WBCのような全員野球を見せてほしいところ。
ウォームアップの棒で村林一輝にちょっかいを出す辰己涼介。楽天の選手は仲が良くペアでいることが多い。侍ジャパンは同じ球団同士で行動する選手と他球団と交流する選手が分かれる。
一緒にいることが多い髙橋宏斗と大勢。
この日は25歳の誕生日の清水達也をお祝い。
ひとりだけ着こなしが違う清宮。ウォームアップのあとはキャッチボール。ノビのあるエグいキャッチボールをする才木浩人。超遠投でもストライク投球の大勢。ブーメランのような変化球を投げる横山陸人。侍ジャパンのキャンプはキャッチボールが最大の目玉。
最初のメニューはPFP(実戦を想定した守備練習)。地味だが本番でミスをしないように重要な練習。失敗した古賀には容赦なくヤジが飛ぶ。
PFPは普段は組まない他球団の選手との息合わせも重要。
続いてはブルペン練習。先発隊は井上温大とバッテリーを組む坂倉将吾 。そして鈴木翔天、北山亘基。長蛇の列で10分交代。土日とあって人が多い。
打者陣も詰めかけ打席に立つ。
井上温大は絶好調でストレートの球威が練習場に響く。
受ける坂倉将吾、初めて井上を観るファンも驚きの声。大谷翔平、ダルビッシュ勇、上原浩治が担ってきた侍ジャパンの開幕投手にふさわしい球。いよいよ覚醒のときを迎える。
宮崎キャンプ初日に唯一ブルペン入りした楽天の鈴木翔天も投球。データを分析するアナリストが見たことないと驚くスライダーの軌道。国際大会の初見の打者では対応できない可能性が高い。重要な場面で登場する中継ぎ。早く実戦投球が見たい。
最後のブルペン練習は髙橋宏斗。守備練習では矢のような二塁送球を見せていた。ブルペンでも全力に近い球を48球。最速は151キロでまずまずの調子。
すでに本戦での登板日は井端監督から伝えられているよう。どこで投げるのか。
午後から打撃練習と守備練習。清宮幸太郎は背番号3をお披露目。顔が似ていると言われるベーブ・ルースと同じ。そしてWBCの井端監督と同じ。
軽快な三塁守備を見せる清宮。土のイレギュラーバウンドであわや頭部直撃のヒヤッとする場面もあった。本戦は人工芝なので心配ないと思うが、怪我だけは避けてほしい。
走塁練習では初めて観る野球ファンが「はやーい、誰あれ?」と驚く足。速達で二塁に届くプリーズ・ミスター・ポストマン五十幡亮汰。まずは5日の広島戦で侍デビュー。
キャンプ第2クール最初の打撃練習は紅林弘太郎。今日は身体が重そうだったが、柵越え2本で球場から拍手。
捕手陣のバッティング練習では坂倉将吾が複数の柵越え。辰己涼介は4本、小園海斗も3本放ち、一流打者は後半に入って柵越えの数が増えてきた。
最後の打撃練習は4番候補の清宮幸太郎と森下翔太を組ませた井端監督。飛距離の清宮、打球速度の森下。本番ではどちらを4番にするのか。紅林の4番も全然ありなので三つ巴を期待。
14時頃に全体練習が終わり、ようやく侍パークで昼休憩。
「こはら家」チキン南蛮カレー900円、「黒兵衛」スープ餃子400円。甘いチキン南蛮にスパイスの組み合わせが絶妙な緩急。これぞチキンカレーの理想形。どっしりと構えるスープ餃子が口を潤す。息の合ったバッテリー。
SOKKENスタジアムでは打撃練習で最も柵越えを放っていた坂倉将吾。古賀悠斗と共に居残りで特打し、ここでも柵越えを披露。終わってからはサイン会。侍ジャパンの国際大会で初のMVPを捕手が獲ってほしい。
第二グラウンドでは紅林弘太郎、小園海斗、村林一輝、源田壮亮の内野陣が居残りノック。源田から技術を学べる貴重な機会をしっかり活かす。村林の華麗なる守備には観客からも拍手。15時8分。キャンプ5日目の侍ジャパン練習が終了。
室内練習場で居残り練習の森下翔太、佐藤都志也、そしてテレビ局のインタビューで16時過ぎまで残っていた五十幡亮汰。侍ジャパンのスタッフに、サインしてあげたいので残っていいか確認してサイン会。侍ジャパンは野球の普及活動も担う。
日本シリーズも終わり、8日から合流する選手との連絡も増える。まずは5日の練習試合に向けて三連休のラストを駆け抜ける。11月なのにスズムシやコオロギたちの歌声に満ちた涼しさは訪れない。侍ジャパンは高校球児のような夏の夕暮れを帰っていく。
11月4日(月)キャンプ6日目
練習試合を明日に控えたキャンプ6日目。早朝練習に来ていた古賀悠斗が侍ジャパン全体練習前にサイン会。国際試合という最も厳しい戦いを勝ち抜きながら、野球の普及という伝道師としての仕事も担う。新しい野球ファンの獲得、すでにファンの人へのさらなる浸透も侍ジャパン。
一番乗りは昨日25歳の誕生日の清水達也。昨日に続いて最高気温25℃。エンドレス・サマーの宮崎も残すところ3日。強烈すぎる焼かれるような日差しに「ヤバイですね」とスタッフと会話。宮崎は太陽が近く痛さを伴う。温泉宿の朝ご飯のハムエッグになった気分だ。
全体キャッチボールは無しでブルペン練習。スポーツ報知によるとプレミア12の本戦は坂倉将吾と佐藤都志也が交代でスタメンマスク。古賀悠斗はバックアップに回る。
先発隊は才木浩人(佐藤都志也)、早川隆久(坂倉将吾)の組み合わせ。早川隆久は坂倉を捕手に変化球中心。
才木浩人は宮崎合宿のブルペン投球のなかでストレートの球威がナンバーワン。ちょっと手が出ないくらいに圧倒的。
ブルペンは10分で交代なのでグラウンドへ移動。源田と村林の好守コンビがノック。今大会は紅林がスタメンで2人はバックアップに回ることが濃厚。
その紅林は亀井コーチを打撃投手に6発以上の柵越え。完全なる絶好調男。
流し打ちで何発も柵越えを放っていた清宮幸太郎はサードの守備練習。かなり軽快な身のこなし。4番サードもありなんじゃないかと思うほど、めちゃいい三塁守備。捕球の動きに加えて送球の良さ。WBCやアジアCSでのエラーの多くが送球ミス。国際大会では使用球が異なるのでキャッチできても投げるときにミスが起きやすい。
11時45分からライブBP。北山亘基vs.清宮幸太郎の日ハム対決の第1ラウンドは清宮がショートに強烈な打球。第2ラウンドは北山亘基が清宮幸太郎をセンターフライに打ち取る。
紅林弘太郎vs.大勢は紅林のライト前ヒット。大勢は他を完璧に抑える。
侍ジャパンのユニホームを着た選手はカッコよさの前に「美しさ」を感じる。強さと脆さがあり、歴史と未来を背負っている。そこに美しさが宿る。
大勢はそのまま第2グラウンドに行き髙橋宏斗とキャッチボール。この2人はいつも一緒にいる。
その髙橋宏斗もブルペン入り。今日は直球のみ23球。昨日とはスピードも球威も段違い。かなりギアを上げている。本人いわく「体が開いていたので我慢して修正した」とのこと。
手応えを感じていたような表情。黒とゴールドのグローブも勇ましい。佇まいに美しさを感じる。
戸郷翔征は地元宮崎への恩返しに今日も長時間のサイン会。ソフトバンク・ホークスの帽子を出すファンにもやさしく対応。
午後から坂倉将吾、古賀悠斗が打撃練習。アジアCSコンビの打ち込みの量にはキャンプ前半から驚かされっぱなし。坂倉はオーバー・フェンス連発。古賀悠斗も柵越えを披露。佐藤都志也も加わる。坂倉将吾はかなりの数のバットを振って疲れていても必ずグラウンドに一礼してから去る。
13時48分に捕手陣の打撃練習が終了。その時間に才木浩人は長蛇の列のサイン会。2年後のWBCでは日本のエースと呼ばれるかもしれない可能性を感じさせる球威。
釜揚げうどん700円。これを食べると宮崎に来たと実感できる。This is Miyazaki。
侍パークは期間中、店賃7万円+売上の15%が引かれ、どこも大赤字。駐車場3500円が影響しているのか。駐車料金で儲けるのと、地元の名産を失うのとでは損失は比べられない。駐車場を無料にして球場に多く来てもらったほうが良いのは明白。それにしてもオリックスのキャンプより少ないとは。プロ野球の頂点に立つはずの侍ジャパンのキャンプで閑古鳥が鳴くとは皮肉なもの。
宿舎に戻ったが、宮崎のカープファンの方に「広島のキャンプ見に行きましょう」と誘われ、日南の天福球場にやってきた。明日、侍ジャパンと戦う敵情視察。
試合前日とは思えないスパルタ追い込みティー打撃。アニマル浜口がいるかと思うほど、球場に「気合いだ」という叫び声が響く。
1(三)村林一輝
2(捕)坂倉将吾
3(中)辰己涼介
4(二)小園海斗
5(遊)紅林弘太郎
6(一)佐藤都志也
7(指)五十幡亮汰
8(左)清宮幸太郎
9(右)森下翔太
CSに出場せず実戦から離れている選手に多く打席数を積ませる。明日の試合は交代自由の7イニング+8回はタイブレーク。五十幡亮汰は6、7、8回代走の予定。明日はまだチーム全員が揃っていない段階。まずは実戦の感覚を取り戻すこと。めくちゃなオーダーやルールのようで理にかなっている。何より侍ジャパンの試合が観られる。それに勝る喜びはない。
11月5日(火)キャンプ7日目
キャンプ7日目のSOKKENスタジアム。古賀悠斗が室内練習場で早朝の自主トレ。大勢、早川隆久、村林一輝も練習場へ。最初に球場に来たファンは鹿児島からの親子。息子さんが陸上大会で優勝したご褒美に学校を休んで観戦しに来た。
大詰めの今朝も好天。プレイボールまで5時間。実戦感覚を戻す調整試合、井端監督はノーサインで自由に身体を動かすことが目的。それでも心躍ってしまうのが野球。
10時半のSOKKENスタジアムは肌寒く太陽がグラウンドの向こうでスタンバイ。13時のプレイボールが近づくと、お日様も観客のひとりになって、めちゃくちゃ暑くなる。去年のアジアCSでもそうだった。野球場の不思議。
ウォームアップのあとはシートノック。二塁の守備に不安を口にしていた小園海斗も軽快な動き。一方でシートノック不調の梵英心コーチ。フライの打球が何度か客席に飛び込む。古巣の広島カープと対戦とあって力が入ったのか。
試合では見せ場がなかったが打撃練習で光ったのが清宮幸太郎。昨日と同じく逆方向で柵越え。7日間のキャンプで流し打ちでホームランは清宮しか観ていない。坂倉将吾も柵越え2発と好調。
昼休憩の時間が来ても投げ込む北山亘基。キャンプ初日から積極性が際立っていたひとり。井端監督も起用法を悩むほど好調。
侍ジャパンが昼休憩に入ったときに「麺屋つつみ」の宮崎名物「辛麺」800円。ピリ辛と玉子のまどろみが活力をくれる。これで侍パークの10店舗コンプリート。明日の最終日は何を食べようか。
プレイボール2分前から太陽が目を覚ます。お天道様も侍ジャパンの試合を観たい。それにしても強烈。地元の人ですら参るほど。侍ジャパンを明るく照らし、同時に「存分な暴れてみろ」と挑発するような朝日だった。陽光が散弾銃のように降り注ぐ。
井端弘和、新井貴浩のアライバ監督対決。去年のアジアCSと同じカード。この練習試合から破竹の4連勝で優勝した。昨日、午後から4時間ノンストップでバットを振り続けた広島カープの調子はどうか。
侍ジャパンのベンチは出場する十数人だけ。源田壮亮や投げないピッチャー陣はおらず、控え選手を用意していない。あくまで練習試合の目的は実戦に慣れること、タイブレークは先攻の戦い方を学ぶこと。目的によって戦略は変わる。昔のように試合をして課題を見つける後手ではなく、先に課題を設定して検証と改善を行う。
この試合は打順は本番とは全然違うグチャグチャ。だが打席に多く立ってもらう点では理にかなっている。つくづく井端監督の戦略には感嘆させられる。
侍ジャパンは後攻。先発は開幕投手の井上温大。本来のピッチングなら広島の若手陣が打てるピッチャーではない。
3イニングを圧巻のパーフェクト。4者連続三振の計5奪三振。オーストラリアは野球の子ども教室を府中で行なっていたらしいが、ある意味で不気味。蓋を開けてどうなるか。
広島の先発・常廣羽也斗は2回1安打無失点。2027年のプレミア12では代表入りしてほしい。ストレートの質が他の投手とは違う。1巡目の相手には打たれる気がしなかった。
4回のリリーフは横山陸人。最速153キロのストレートで1回無安打2奪三振。サイドスローからの凄まじい直球には広島の打者が打ちにくそうだった。去年のアジアCSでは少しコントロールに苦しんだが、プレミア12では侍ジャパンのリーサル・ウエポン。
今日のMVP候補のひとりが紅林弘太郎。4回に小園がフォアボールで出るとライト前ヒット。引っ張るバッティングではなくチームをつなぐ。今日の侍打線を作ったのが紅林。こういう打者が「選手の寄せ集め」を「チーム」に変える。まだチームがバラバラだった去年のアジアCSとの違いを感じさせてくれた。
小園と紅林が作ったチャンスを佐藤都志也がタイムリーで先制。調整試合で打順もめちゃくちゃくでも個々の能力が高い。プレミア12はプロ野球のトップ・オブ・トップが集まっていると実感させてくれた瞬間。
5回からマウンドに上がった隅田知一郎は0点に抑えたが2安打を許した。ストライクを狙ったストレートが高めに浮いたらしいが、本番までに調整できればいい。本来は先発だが、3月の欧州代表のようにリリーフを務める可能性もある。
6回の鈴木翔天も三者凡退。初見でスライダーは攻略されないか。
今日のMVPは辰己涼介。安定感バツグン。ノーアウト満塁からタイムリー。チャンスで回ってきたときに頼りになる。侍ジャパンのリードオフマンは辰己涼介。
紅林弘太郎もきっちり犠牲フライ。打線をつくっている立役者。この日、唯一の猛打賞。
森下翔太も鋭い打球の二塁打。このフルスイングもリードオフマン向きではある。森下が何番を打つのかで侍ジャパンの打線が大きく変わる。
投手陣では清水達也も苦労。去年の練習試合は無双だったが田村俊介の安打を許しピンチ。その後は2三振で抑えたのはさすが。
7回裏の最終回は待望の五十幡亮汰。期待に応えて二盗。そして凄いのは辰己涼介。打撃技術や走塁に加えて、五十幡亮汰が盗塁を企図するまでバットを出さなかい。追い込まれても走るまで手を出さずに「待つ」技術と貢献は果てしなく凄い。
三塁打の激走、小園海斗の犠牲フライでタッチアップ。足でも魅せる。やはり一番を打ってほしい。5-0の快勝の立役者。今日は辰己劇場。
8回は延長タイブレークの練習。小園海斗の守備ミスで一点を失う。アクロバティックな動きが余計だった。
藤平はあわやホームランの三塁打を打たれ2失点。昨年のアジアCSで韓国に逆転サヨナラ優勝を決めたときと真逆になった。
強化試合の意義を体現できた内容。負けた試合のほうが多くを学べる。本番までに対策を打てる。優勝するために負けるのが強化試合。広島も昨日4時間ノンストップでバットを振り続けた粘り強さを見せた。去年の練習試合より収穫は多い。
野球を終えたスタジアムの夕陽ほどやさしくノスタルジーなものはない。
太陽と埃の中で、侍ジャパンは大きなものを得た。
11月6日(火)キャンプ最終日
快晴が広がるキャンプ最終日。昨夜は満天の星空がキラキラ輝いていた。秋風が吹いて朝は少し肌寒い。南国の宮崎も少しずつ秋に向かう。髙橋宏斗、坂倉将吾、村林一輝、才木浩人、早川隆久、北山亘基は早朝練習。
最終日のランウェイ。12時半の打ち上げ後、スーツに着替え宮崎空港に移動。キャリーケースの大荷物で球場入り。国際大会は過密スケジュール。移動による疲労も難敵。
最終日のグラウンド一番乗りは清宮幸太郎。続いて宮崎合宿MVPの紅林弘太郎のコウタロウ組。KKコンビがファイヤーボールとなって日本に火をつける。
戸郷翔征、井上温大の巨人ふたりが集合写真に遅刻。侍ジャパンでは30分前行動のジャイアンツタイムは発動せず。球場の雰囲気を和ませる。
エレファントカシマシ『俺たちの明日』が流れる中でキャンプ最後のウォーミングアップ。怪我の防止を支える大切な基礎工事。地味ながら、シーズン中にファンが観ることは少ない貴重な風景。
キャッチボールは行わずシートノックとシート打撃を並走。今回はバックアップに回りそうな源田壮亮。その源田からサバイバル・ポジションであるショートを奪った紅林弘太郎。最終日のシート打撃でも柵越え連発。特に今日はゆったり振っても軽々オーバーフェンス。アーロン・ジャッジのようだった。
最後の打撃練習の締めはキャンプ中、誰よりも楽しそうに守備練習をしていた清宮幸太郎。柵越え連発。初球はスコアボード直撃。逆方向もオーバフェンス。
投手陣は各自調整。初日から最終日まで二人三脚で行動し続けた戸郷翔征と井上温大。
地元のちびっ子が「トゴーちゃん頑張れ」と応援に来てくれ、うれしそうに談笑。
9日間のキャンプだったが、初日に比べて選手の距離が近くなったように見えた。今のプロ野球は他チームでも仲良しは多いが、初日は壁のようなものを感じた。最終日は完全になくなっていた。
侍ジャパンのキャンプはウォーミングアップで始まりコンディショニングで締める。疲労が溜まる時期だからこそ、その重要さが増す。
12時30分、キャンプ全日程を終了。怪我なく大団円を迎えた。代表の挨拶、一本締めは坂倉将吾。
山本祐大の侍ジャパンも見たかったが、大団円の真ん中に坂倉将吾がいるのを見て、これで良かったと思った。早朝練習から居残りの打撃練習まで、誰よりも長くキャンプ地でバットを振り続けた。横浜の選手は宮崎に来ない。正捕手は合宿に参加してほしい。侍ジャパンのマスクを被るのは坂倉将吾。怪我人で欠場者が多く、暗雲が立ち込めたスタート。しかし、合宿を経て予定調和よりも愉しが増えた。11月とは思えない宮崎の太陽を浴びた侍ジャパンは不死鳥のように名古屋へ羽ばたいていく。
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