野球を観て泣いたことが2回ある。最初は中学1年生だった96年。オリックスが地元優勝を決めた試合。1点差で負けている9回裏2アウト、代打D・Jがライトスタンドに放った同点ソロ。2回目は去年のWBC準決勝、吉田正尚が7回裏に放った同点スリーラン。逆転ホームランやサヨナラホームランは興奮を呼ぶが、そこに感動の粒子は少ない。感涙までブーストしない。勝利はその瞬間、ゲームセットが訪れる。同点ホームランは再びプレイボールをつくる。ふりだしに戻し、野球を再生する。逆転ホームランは過去形、同点ホームランは未来形。そこに夢の蜃気楼が立ち上がる。同点ホームランという輪廻転生に涙が溢れる。