ベースボール白書

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プレミア12の未来、第3回大会の振り返り

プレミア12の未来、第3回大会の振り返り

プレミア12が終わって1ヶ月。大会期間中は仕事をストップしてアジアを彷徨い、大会後も著書『燃月(ねんげつ)』の執筆に命を燃やした。WBCがシーズン前に昇る太陽なら、プレミア12はシーズン後に現れる月。どちらかが欠けても空は寂しくなる。第3回大会を振り返り、プレミア12の未来について語りたい。

プレミア12を変える4つの要因

プレミア12の未来、第3回大会の振り返り

  • 開催場所(ドーム球場)
  • 参加国
  • メジャーリーガーの参戦
  • 大会方式

プレミア12は第4回大会の開催が2027年に決まっている。今後、大会が大きく変わるとすれば2031年もしくは2030年の第5回大会からだろう。11月という開催時期は動かしにくいため上の4つが変わる可能性がある。

開催場所

プレミア12の未来、第3回大会の振り返り

これまでのプレミア12の決勝戦は3大会とも東京ドームで行われた。第3回大会の大会スポンサーも日本企業であり、収益面でも日本の開催が有力。しかし、できれば今後は韓国や台湾など決勝戦の場所が持ち回りになって欲しい。少なくともオープニングラウンドやスーパーラウンドに関しては開催場所が変わるはずだ。まず台湾、韓国ともにドーム球場が増える。今大会でも雨のなか天母棒球場で行われたが、台風が直撃していれば開催自体が危ぶまれた。台湾には台北ドームがあるが、韓国も2025年以降、ドーム球場が急増していく。韓国最大の「チャムシル野球場」は2026年末から解体工事が始まるため、2027年の第4回大会は厳しいが、第5回大会には間に合うだろう。ぜひ韓国での開催が復活してほしい。韓国の球都・釜山のサジク野球場は屋外球場だが2031年には生まれ変わる。プレミア12やWBCが行われてほしい球場である。

参加国

プレミア12の未来、第3回大会の振り返り

すでに2027年の第4回大会から参加国が16になり、プレミア12でなくプレミア16(シックスティーン)に増設される。今後も参加国は増えていく可能性があり、アイドルグループのようにプレミア48までになれば凄い。48カ国という数字はサッカーのW杯の参加国と同じ。しかし、野球の場合は実力差の観点から一方的なコールドゲームが増えてしまうため、闇雲に増やす必要はない。多くてもWBCと同じ20カ国、すなわちプレミア20(トゥエンティ)、もしくはプレミア24(トゥエンティフォー)が限界だろう。できることならサッカーに追いついてプレミア48の開催を目指して欲しいものである。

メジャーリーガー

プレミア12の未来、第3回大会の振り返り

プレミア12の知名度、盛り上がりを向上させる最大の飛び道具はメジャーリーガーの参加である。しかし、結論から言えば参加資格は変えなくていい。WBCはトップレベルであり彩りが豊かだが、参加資格の緩さは気になる。

◎WBCの参加資格

  • その国の国籍を持っている
  • 永住資格を保有している
  • 該当国で生まれている
  • 親のいずれかがその国の国籍を持つ
  • 親がその国で生まれている
  • 国籍やパスポート取得資格がある
  • 過去のWBCに同国代表として登録されたことがある

例えば韓国人メジャーリーガーのイ・ジョンフは父親が中日ドラゴンズに所属していた関係で名古屋の病院で生まれており、「該当国で生まれている」の資格から日本代表として参加できてしまう。これはちょっと無理がありすぎる。万国博覧会であるWBCはそれでもいいが、プレミア12は現在の「国籍やパスポート取得資格がある」のみに限定して欲しい。モンゴル人ばかりの大相撲のように日系人や日本で生まれた外国人だらけの侍ジャパンは面白みに欠ける。彩りは豊かになるが日本人が大半を占める「侍ジャパン」という野球部の匂いを残してほしい。今回のプレミア12が白熱したのはNPB組しかいなかったからだ。

ラウンドロビン方式

プレミア12の未来、第3回大会の振り返り

最も変えないでほしいのがプレミア12とWBC最大の違いであるラウンドロビン方式。総当たり戦であること。WBCは準々決勝からトーメント方式になる。WBCと同じルールであれば今大会の台湾の優勝はもちろん、第2回大会の日本の優勝もなかった(スーパーラウンド初戦でアメリカに負けているため)。プレミア12とは一言であらわすと「敗者復活戦」であり、敗北からどう立ち上がるかが最大のドラマ。WBCは昨年の日本と第3回大会のドミニカが全勝優勝しているが、プレミア12で全勝優勝はいない。参加国が増えるほど日程の関係でラウンドロビン方式は厳しくなるが、トーナメントはWBCに任せ、プレミア12は今後も敗者復活のドラマを貫いてほしい。

大谷翔平の不在の在

プレミア12台北ラウンド〜韓国、台湾、オーストラリア、ドミニカ

台北ドームがある國父紀念館駅出口の一番目立つところに大谷翔平の看板がある。大谷翔平はプレミア12には出場しないが、その影響はアジア野球の推進という形であらわれている。もちろん大谷は規格外であり野球史上最大の怪物なので完全な特例ではあるが、アジア人が史上最高の野球選手になり、欧米人を圧倒したことで、韓国や台湾も自信がつき、大谷翔平を目標とするようになった。今後のWBCやプレミア12ではアジアの3カ国がますます強くなる。大谷翔平はアメリカで戦いながらアジアの野球を推進している。

第3回大会を振り返って

プレミア12の未来、第3回大会の振り返り

宮崎キャンプから優勝決定戦までプレミア12と侍ジャパンの背中を追いかけた。そこで分かったことはプレミア12とは敗者復活戦が生んだドラマであり、ミスを許容する野球の本質を最も体現している国際大会であるということ。しかし、残念だったのは試合後のインタビューで誰も3年後の「プレミア16」出場を願うコメントがなかったこと。口にしたのは2026年WBCと2028年のロサンゼルス五輪。まだまだプレミア12の価値を上げるには時間がかかる。開催時期やスケジュールの過酷さから、開催反対の声が多いが、プレミア12が発展してこそWBCとの両翼になり、野球の未来は昇華する。プレミア12という滑走路を力強く育てて欲しいと願っている。

2027年プレミア16の展望

プレミア12の未来、第3回大会の振り返り

3年後に開催が決まっているプレミア16。侍ジャパンの奪還を願うのはもちろん、今大会の決勝戦でベンチだった紅林弘太郎、清宮幸太郎、五十幡亮汰の3人の野手。そして宮崎キャンプから精力的だった北山亘基の4人はぜひ出場して欲しいと願っている。侍ジャパンへの想いが強く、今度こそ主力として躍動してほしい。4人については著書『燃月』でも詳しく書いた。WBCだけが侍ジャパンではない。プレミア16の顔となって東京ドームに帰ってきて欲しい。

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