
2025年2月21日から3週間限定で、昨年のプレミア12 を追ったドキュメンタリー映画 『結束、その先へ~侍たちの苦悩と希望~』 が公開される。それに先駆け、2月11日に 新宿バルト9 で完成披露上映会が行われた。運よくチケットぴあの抽選に当選。来月にリリースする温泉の書籍の執筆で、上映前の井端監督の舞台挨拶の最初のほうは間に合わず、後半と本編のみを鑑賞した。
プレミア12の映画を上映する意義

現在、プロ野球は春季キャンプ真っ最中。世間の関心はすでに2026年WBCへと向かっている。昨年出版したプレミア12の書籍『燃月』 よりも、WBCの書籍『球春のマイアミ』 のほうが今年に入って読まれる機会が増えている。
2023年WBCを追いかけた電子書籍

Amazon Kindle『WBC 球春のマイアミ』
それは嬉しいことではあるが、プレミア12への思い入れが強い者としては寂しさもある。だからこそ、この映画を通じて「映画と一緒に書籍も読んでほしい」と呼びかけたかった。しかし、映画の内容は、野球ファンに強く推せるものではなかった。
一言で表せば、「プレミア12のハイライト映像」 に過ぎなかった。
ハイライト映像を期待している野球ファンにとっては満足する内容だろう。約1ヶ月間の大会を120分に無理矢理まとめている分、よほどのファンでないと意味がわからないシーンも多々あるが、スポーツ映像をドラマチックに見せることには成功している。
なぜタイトルを『結束』にしたのか
映画の最大の問題点はタイトルに掲げた「結束」が描かれていないことだ。「結束」というキーワードは、2024年の元日に井端監督が侍ジャパンのテーマとして掲げたもの。普段は敵同士として戦う選手たちが、 日本代表のユニホームを着て、どのように一つになっていくのか。その過程こそ、 舞台裏に密着した関係者だからこそ描けるテーマだった。しかし、蓋を開けてみれば試合映像がほとんど。プレミア12を現場で追いかけ、映像を飽きるほど見返した自分にとって、この映画は退屈でしかなかった。ダメなドキュメントは無理やり「熱気」を追いかける。熱気は撮るものではなく、観客の中で生まれるもの。凡庸なドキュメントだから、映像が跳躍しない。野球を狭いスクリーンの枠の中に閉じ込めてしまっている。
せっかく侍ジャパンに密着できる立場にありながら、プレミア12という大会の意義や、過酷なスケジュールの中で選手たちが日の丸を背負う"眼には見えないもの"を描かなかった。カメラを片手に井端監督や選手を追いかけ、彼らの発言を拾っているだけ。映画は、眼に見えないものを映すことである。
試合映像をほとんど使わなかった 『八月の歓喜』(2021年東京オリンピック・侍ジャパンのドキュメント) や、前回のプレミア12を描いた『侍の名のもとに』のほうが、むしろ日本代表の「結束」を伝えていた。
実は舞台挨拶で井端監督が「ジュニア(U12や15)に比べて一流のプロ野球選手は手がかからない。指揮して楽だった」と語った。映画のテーマをぶち壊す身も蓋もない発言だが、だからこそ映画にする意味がある。監督の言葉を鵜呑みにするのではなく、侍ジャパンを追った者だから捉えられる真実がある。「結束」をテーマにするのは難題。だからこそ、試合のハイライトではなく、結束というテーマにフルスイング、全力投球してほしかった。
この映画が伝えた唯一の「光」
この映画には一つだけ光るポイントがあった。それは、辰己涼介の「献身性」という視点。辰己涼介が献身性が強い選手であることは、著書『燃月』で触れた。多くのメディアは辰己の言葉尻だけを取り上げ、彼を自己中心的なプレーヤーとして扱っていた。だが、監督の三木慎太郎は辰己涼介の内面にある「チームのために動く姿勢」を見抜いていた。だからこそ、その着眼点と視点を活かし、侍ジャパンの「結束」の真相に迫ってほしかった。
映画が描けなかった侍ジャパンの真実
勝手な推測であるが、凡庸な映画になってしまったのは試合映像をほとんど使わなかった 『八月の歓喜』 が不評だったからではないか。逆にWBCを追った『憧れを超えた侍たち』 は平凡なドキュメンタリーだった。今回の 『結束、その先へ』 のラストも、お涙頂戴の惨憺たるもの。しかし、現代の視聴者にとって、そうした感動の演出が「受ける」のもまた事実。作り手が提示する「新たな視点」よりも、お決まりの「感動ストーリー」のほうが波風がたたない。それは現代において仕方のないこと。侍ジャパンは大きなビジネスだから、自分の描きたいものより、観客が求めているものを優先する。「侍ジャパン」という大きな看板があるので、作り手の個性によってブランドを毀損してもいけない。
それでも"結束" という言葉を冠したならば、もっと深く、もっと本質的な侍ジャパンに迫って欲しかった。侍ジャパンはもっと度量の大きな存在。世間の波紋を呼んでこそ。もっと作り手の個性にフルスイング、全力投球してほしい。
映画とは関係ないが、井端監督には2026年のWBC優勝よりも、2027年のプレミア16でリベンジしてほしいと思っている。
2006年にWBCが誕生して以来、 すべての日本代表監督がWBC終了後に辞任している。井端監督の契約もWBCまでだ。だからこそ、その前例を破り、WBC翌年に控えるプレミア16で雪辱を果たしてほしい。「結束、その先へ」――その言葉を、映画ではなく、実際の侍ジャパンの戦いで証明してほしい。
最後に、この映画を観て 「やはりWBCよりプレミア12は見劣りする」「他のスポーツに比べて野球は面白くない」と思う人がいたら、ぜひ 『燃月』 を読んでほしい。
単なる試合のハイライトではなく、プレミア12という大会の本質に深く切り込んでいる。
映画では伝えきれなかった 「侍ジャパンの戦い」、プレミア12という大会が持つ意義と葛藤を追いかけ、記録した。プレミア12の核心に迫る一冊。ぜひ、その目で確かめてほしい。
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