甲子園や大阪ドームと違い、野球ファンしか名前を知らず、オリックスの準本拠地である「グリーンスタジアム神戸」。正式名称は「神戸総合運動公園野球場」
神戸にあるのにアクセスは不便。神戸市営地下鉄の西神・山手線で「総合運動公園駅」を目指す。すでに電車がグリーンを基調にしており、このスタジアムの匂いが色から漂ってくる。
総合運動公園駅の目の前が野球場であり、この駅近は西武ドームに比肩する。
西武ドームより広いので窮屈感もない。外観は野球場というより陸上競技場。
野球場とは思えない入場ゲート。まさに名は体を表す総合運動公園だ。
「グリーンスタジアム」の名前が示す全面の天然芝、土はクレー舗装。球場周りを緑の木々が囲む美しい球場を「日本一の野球場」と呼ぶファンは少なくない。目の前の大阪湾から海風が吹き、土煙が舞い上がる。
これまで「ヤフーBBスタジアム」「スカイマークスタジアム」、そして現在の「ほっともっとフィールド」に改名してきたが、この緑の美しさを全身に浴びると「グリーンスタジアム」の呼称がふさわしいことが身に沁みる。
フェンスの高さは2.4mと日本で最も低い。バッターの打率も得点の入りやすさも横浜スタジアムに次ぐ2位のヒッターズ・パーク。ただし、ホームランの数は少なく、大阪ドーム、甲子園と同じく関西の球場は本塁打が出にくい。野球の神様がクラシカルなベースボールをさせる。関西が野球の聖地である所以だ。
特徴的なのがマウンドからホームベースまで引かれた土の直線。これがあるプロ野球の本拠地はグリーンスタジアム神戸のみ。野球黎明期の1800年代の形式でメジャーでも2、3球場しかない。
ダグアウトから打者の花道が設けられているのもメジャー仕様。アリゾナのチェイス・フィールドと同じ。見れば見るほど素晴らしいスタジアム。
地元では少年野球の大会でも使われるというから贅沢だ。
八月のカクテル光線が似合うのは甲子園だけではない。グリーンスタジアム神戸では5回裏終了時に名物の花火も打ち上がる。それは神戸の夜景の如く美しく、球童や野球ファンたちを祝福する。
侍ジャパン 高校代表vs.大学代表
2024年8月28日(水)、甲子園の決勝から始まった野球旅のラスト・ピクチャー・ショー。兵庫で始まり兵庫で終わる。この対決を見るのは昨年の東京ドームに続いて2回目。
侍ジャパンのグッズ売り場には長蛇の列ができている。ただし、観客は1万人。日本人はWBCのような圧倒的なスターか、オリンピックのような歴史とブランドがなければ自分で意味を見出すのは苦手な民族。まだまだ野球の発展には根気が必要だ。
高校三年と大学四年生。「4年間」の熟成が何を生み出すのか。その違いがハッキリ見てとれる試合。身体的な大きさだけではない。ピッチャーの球速と球威、バッターの打球、スイングの速さ。
わずか数キロのスピードに大きな結果の違いが表れる。この数キロの中に、大学で流した3、4年間の汗の重力が宿る。
夕方5時。試合開始が近づくに夕陽が顔を出す。翌日なら雨天中止。台風が1日待ってくれた。屋外球場はお天道様も観客。若人の躍動を祝福した。
球場メシは、鶏塩ももwithコカ・コーラ。甲子園焼き鳥に始まり、福岡ドームのチキンガーリックライスを経由し、最後も鶏で締める。関西の飯は鶏ガラである。
今年の春から高校生は新基準の金属バットに変わり、飛ばない野球を経験した。その影響がどう出るか。18時、プレイボール。
高校代表の先発は甲子園の優勝校・京都国際の中崎琉生。甲子園の決勝で9回を投げ切ったときは130キロ台だったが、疲れが取れて141キロを出す。大学生を相手にすると威圧感が違ので、本来の自分のピッチングができない投手が多い。去年の前田悠伍は大物を相手にしても動じないエースの資質を発揮したが、今年の中崎にも同じ資質が備わっていた。大学進学を明言しているが、どんな4年間を過ごすのか。
大学の先発は3月の侍ジャパンのトップチームに呼ばれた中村優斗。欧州相手に直球7球すべてが155キロを超え完全試合のリリーフを担った。あれから自己最速が2キロ伸び159キロを記録したが、この日はそこまで直球のキレがなく本調子には遠い。それでも、すべて150キロ台。高校生に4年間の差を見せつける。
リードする捕手の印出太一もドラフト上位候補。この日も先制の二塁打を放った。大学代表のピッチャーは早稲田の伊藤樹の糸を引くような低めのストレート、仙台大の渡邊一生の大きな弧を描くカーブと150キロを超える直球の緩急。全員が3回生。来年が恐ろしい。秋に社会人vs.大学代表の侍ジャパンをやってほしい。
青学の西川史礁は別格の打球速度。走塁でも魅せ格の違いが出た。
高校生も負けていない。1点リードされている3回裏、2アウト満塁のチャンスで高校野球の象徴テーマ曲「 アゲアゲホイホイ」が流れるなか、押し出しで同点にした高校生の粘力、未来力。これぞ侍ジャパンにふさわしい。直後の守りでもピンチを守り切る。
東海大相模の198cmピッチャー・藤田 琉生のスケール感が示すように高校代表のポテンシャルは末恐ろしい。
こうなれば意地の殴り合い。ヨーロッパでの国際大会で全勝を優勝を飾った矜持を発揮する。その象徴が中央大の3年、繁永 晟(しげなが あきら)。2本の二塁打に加え、守備でも投手を助ける。
その繁永が放ったライト前ヒットで走者を刺したのが大阪桐蔭の境亮陽。
ノースリーからでも振っていく積極性は欲しいが、ピッチャーの中崎と同じく存在感が頭抜けていた。
最後の2回を締めたのが今朝丸。打者に食い込むように襲ってくるストレート。快速球でも豪速球でもなく重速球。高校生では観たことがない。
9回の西川史礁との対戦では威圧感に負け四球を出す若さを見せるが、その後のクリーンアップを抑える切り替えは驚異。台湾で行われるワールドカップでも世界を驚かせるだろう。
青学の西川史礁や大阪桐蔭の境亮陽をはじめ、今日この球場で躍動した球児たちは将来の侍ジャパンを牽引する。
この日、確信したことはひとつ。やっぱり野球は侍ジャパン。
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— YAMATO (@yamatoclimber) 2023年11月9日
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