ニューヨーク、フィラデルフィア、そしてマイアミ。米国に求めるものは、いつも東海岸にあった。2023年9月17日の日曜日。ビスケーン湾の朝日に救われ、朝食も食べたことで少し気分が晴れた。ホテルでシャワーを浴びて10時半にUberの車を頼む。10ドル。この旅で一番安い。歩けば50分だが、マイアミの暑さでは無理。車内のカーステレオではザ・キッド・ラロイの『STAY』が流れていた。
目的地は501 Marlins Way。10分で到着。白の外観にパームツリー、そして青空。この球場はデーゲームに向いている。
球場はリトル・ハバナにあり、反対側にはマイアミ・リバーが流れる。大阪ドームや福岡ドームの環境に近い。野球場は川や海の近くに造られる。野球ファンは流れ者。
デレク・ジーターによって撤去されたホームラン・フィーチャーが外にあった。この位置で正解かもしれない。すぐにチケット売り場が見つかったので購入。
レフトの外野席を希望したが、ホームラン狙いの年間シート購入者で埋まっている。三塁側の端っこ、セクション26の7列目、24ドルなので3,600円くらい。ひどい円安を考えると高くない。
球場の周りを一周しようとしたら「日本人の方ですか?」と背後から声。振り返ると「もしかしてYAMATOさん?」60歳前後の女性。マイアミらしく肌が焼けている。もしかしてYouTubeの方ですか?と訊くと「そうです!似顔絵と顔がそっくりだから、もしかしてと思って!」
何週間か前、MLBのチームを紹介するYouTubeにコメントしたとき、その女性が返信でマーリンズについて教えてくれた。ブレーブス戦を観る予定だと書いたが、それを覚えていてくれたとは。しかも見知らぬ人に声をかける度胸がすごい。
名前はYさん。マイアミ在住35年。キューバ人の旦那さんと結婚し、子どもも成人して今は独り暮らし。イチローがマーリンズに移籍したのをきっかけにMLBにハマ理、仕事を引退した今はマーリンズの年間シートを購入。今年はすべてのホームゲーム60試合以上を観戦している。Perfect attendance、皆勤賞。
今年のWBCもプールDの試合と準決勝、決勝戦を全試合観戦。当時の様子を詳細に教えてくれた。何よりの収穫。地獄に仏とはこのこと。生まれ故郷も奈良に近く、日本では西新宿で働いていたから話も弾む。
開場までの間、Yさんにレクチャーを受け選手の出待ちをする。ルイス・アラエスが普通にサインしている。凄い光景だ。
選手が全員球場入りしたら暑さを凌ぐためにチームストアに入る。透明のクリアバッグを買った。マーリンズの会員であるYさんのおかげで15%オフ。2,000円ちょっとだった気がする。
12時に開場すると球場を案内してもらう。ローンデポ・パークはフィールドを見渡せしがら場内を一周できる。日本のマツダスタジアムのように観やすい。
美しい。人工芝とは思えない。しかもドームなのに閉塞感ではなく開放感すらある凝縮感された空間。
Yさんは数メートル歩くたびに声をかけられる。観客もスタッフも皆、顔見知り。異邦人であろうとアメリカという国は愛のある者を歓迎する。年間シートを買ってマーリンズを応援する仲間。81試合で外野席は900ドル。1試合あたり11ドル(1500円)ほど。安い。東京ドームの巨人戦だとこうはいかない。
ローンデポパーク名物のバブルヘッド・ミュージアム。
知っている選手が多いが、人形にはあまり興味ない。
野球ゲームができるブース。球場に来てまでやらんでええやろ、とツッコみたくなるが、球場でやるゲームは格別なのかもしれない。
光が差し込む巨大なガラス。水族館に来たような感覚になる。これが開放感の秘訣。ボールパークであり、アクアリウム。
ローンデポ・パークは収容人数が37,000人とMLBの球場ではかなり少ない。その理由のひとつがレフト側の外野席の少なさ。だからこそ息苦しさがない。
この椅子なんか、なんとテキトーな並べ方。
かつてジャンカルロ・スタントンが叩き出した最長飛距離484フィート(約147・5メートル)のモニュメントがあった場所。デレク・ジーターがオーナーになったとき撤去したらしい。地元ファンから大ブーイング。ジーターはニューヨークでは英雄だが、マイアミでは嫌われ者らしい。
レフトスタンドにはマーリンズ・ミュージアム。
ワールドシリーズの優勝トロフィー。
イチローのユニホームが目立つ。日本では気難しいイメージがあるが、試合後はファン全員にサインをした。どんなに帰りが遅くなっても断らなかったという。逆にチームメイトの田澤純一はサインを断ることが多く、あまり好かれていない。
今でもイチローはマイアミのファンから愛されている。イチローはプロなのだ。プロとはサービス精神のこと。
ミュージアムの先はグッズショップに通じている。さすがアメリカ、商売繁盛。ヘイヘイおおきに毎度あり。
再びのレフトスタンド。ブルペンが丸見え。ファンには嬉しい素晴らしい環境。WBCでは大谷翔平が準備をしていた。
球場にはさまざまなフードコート。
やはりメキシコ料理の店もある。
これもメキシコ系か?どれを食べるか迷う。
お目当てのキューバサンドイッチ。
ペプシコーラとキューバン・サンドイッチ。見た目は悪いが味は美味い。キューバ珈琲も買えばよかった。
ライトスタンドの外野席から見ても美しい球場。
この日はワンちゃんとの観戦がOK。なんという緩さ。さすがアメリカ。
ライトスタンドではボールをねだる人が最前列に来ている。この積極性がアメリカの良さ。
ライトのブルペン。こっちのほうが広い。
ライトは2階席がある。来年Yさんは、この年間シートを購入しているらしい。
村上宗隆が決勝戦でロケット弾を打ち込んだ席。Yさんの知り合いが素手でキャッチした。3日間、手が腫れた。日本で売ればプレミアがつく。
そろそろ自分の席でゆっくりしたくなってきた。
と思ったところにブレーブスの選手の練習が始まる。残念ながらアクーニャJr.は欠場。ローンデポ・パークの人工芝はメジャーの球場の中では足に負担がかかるらしい。
アメリカ人はガタイがでかい。
マスコットのビリーもまあまあイカツイ。
ここでYさんと別れ、自分の席で観戦。試合前には地元マイアミのスターPitbull の『Don't Stop The Party』
今日の先発チャーリー・モートン。同い年でメジャーの一線級で戦う。頑張ってほしい。
マーリンズの選手もグラウンドに登場。選手の名前がわからない。
先発ピッチャー。実力はどっこいどっこいか。
マーリンズの先発はヘスス・ルサルド。ペルー出身の25歳。両親はベネズエラ人なので、WBCにも出場。低めへの球がキレ、強力ブレーブス打線を0点に抑える。
今日は日曜日なので、子どもたちにフリーチケット(無料券)が配られる。野球熱が盛んではないマイアミにおいて、ベースボールの文化を伝承していく大事な取り組み。
アメリカは始球式なんぞ誰も注目していない。素晴らしい。
国歌斉唱は地元のスクール生っぽい。緊張からか音程を外していた。
地元の少年野球チーム。未来のメジャーリーガーがいるかもしれない。
ブレーブスのパワーヒッター、オースティン・ライリー。迫力はあるが、低めに弱そう。
先発のチャーリー・モートン。勇ましい。
世界最高の安打製造機ルイス・アラエス。この日も大活躍。
ここまで凄いバッティングセンスとは。ノーマンズランド(無人地帯)にボールを落とすのが上手い。イチロー以上のセンスかもしれない。惚れた。
最高のスーパースターであるジャズ・チザム。JAZZの名前がカッコ良すぎる。しかも2日連続のグランドスラム。これほどセクシーにかっこよくベースをまわる選手はいない。
この日ホームランを打ったジェイク・バーガー。あとで登場。
天井は無機質な倉庫なのに嫌な感じがしない。開いているときも訪れたい。試合は16-1で勝利。大差で負けているチームばかりじゃなく、大差で勝っているマーリンズもキャッチャーが登板。このデタラメさが最高。
試合後、猛暑の中でもサインをしてあげるジェイク・バーガー。
最後に出てきたホルヘ・ソレアにサインしてもらった。特大のホームランをかました。この日は夜にマイアミ・ビーチに行くつもりだったが、泥のように眠り、起きたら23時を過ぎていた。
2日目。サウスビーチまで足をのばし、日の出を見てホテルに戻る。マイアミの最終日は18時40分。Yさんに言われ開始の6時間前にローンデポ・パークに向かう。
ホテルの窓から球場が見える。猛暑じゃなければ歩くのだが。
今日はメッツ戦。フランシスコ・リンドーアが観られる。
15時にチケット発売開始。一塁側ダグアウトの3列目を買う。105ドル(1万5千円くらい)。ヤンキースやドジャースの人気球団なら、この値段では無理。こんないい席も無理だ。
Yさんと合流して話していると昨日サインをくれたホルヘ・ソレア。Yさんが声をかけ写真を撮ってもらう。まったく壁がなく気さく。大ファンになった。
ルイス・アラエスは笑顔でサインをくれた。歴史に名を残すプレーヤーが簡単にサインをくれる。ファンサービスが日本とは桁違い。
極め付けはジャズ。Yさんがバハマ・カラーのユニホームを着ていたかか。2人だけしかいないからか、自分から歩み寄ってきて写真を撮ってくれた。これで完全にマーリンズのファンになった。すぐにグッズショップに行きTシャツを買った。
17時会場。まだ日差しは強い。いよいよ最後のローンデポ・パーク。
近い。この距離でメジャーリーグが見れるとは。マイアミは最高すぎる。
この日はアメリカがNational cheese burger day。チーズバーガーが5ドルになる。それでも十分に高いが。
今日もPitbull の『Don't Stop The Party』。これがないとマイアミの野球は始まらない。
始球式の最中、リンドーアはファンにサイン。Yさんもゲットしていた。さすがだ。
マスコットのビリーも目の前を通る。
この日のキープレーヤーのジェフ・マクニール。白熊アロンソはゴツい。この規格外の体格を見るだけも金を払う価値がある。日本のプロ野球との違いだ。球場に来たくなる。
迫力あるバッティング練習。しかし彼らが大谷翔平にビビるのだから一体どうなっているんだ。
客席はまばら。こういう野球観戦も味がある。
美しいマリンブルーのシート。マイアミにふさわしい。
試合前の打撃練習でみんなボールをもらう。プエルトリコのユニホームのファンが乱舞していた。
先発はエドワード・カブレラ。低めに球を集め試合を作った。将来のエース候補。名前を覚えておこう。
アラエスは200本安打達成。世界一のヒットマン。サインをもらえて光栄だ。
翌試合は怪我で欠場したのでラッキーだった。早く戻ってきて欲しい。ワイルドカードに出るにはアラエスの力が必要だ。
ジャズはこの日、快音なし。それでも打席に立つだけで華やぐ。
暗くなると場内の雰囲気が変わる。屋根が空いたら全然違う空気かもしれない。後ろの席に座っているアメリカ人が話しかけてくる。試合中でも遠慮なくガンガン話す。英語が不自由なので会話を曖昧にしてしまったが、こんなチャンスは少ない。しかもホテルがあるブリッケルに住んでいる。隣のアメリカ人は奥さんが日本人で娘さんもいる。もっと積極的に会話すればよかった。
フランシスコ・リンドーア。ヒット1本だったが、すべての仕草がカッコいい。
オレンジのスパイクがオシャレ。
塁に出ると鍋つかみ。
この日の一番の見せ場はホルヘの特大ファウル。試合前の気さくな雰囲気とは違い威圧感がある。これがメジャーリーガー。このオフにFAになるようだが、マーリンズに残って欲しい。どの球団に行っても応援するが、移籍するならヤンキースにしてほしい。
唯一無二の球場。サウスビーチの朝日も、ダウンタウンの夜景も美しいが、ローンデポ・パークが一番輝いていた。夜は雷雨で月は見えなかったが、それでもムーンライトは見えた。This is my Field of Dreams
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— YAMATO (@yamatoclimber) 2023年11月9日
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