
2026年3月5日から始まる(侍ジャパンは6日)WBCの強化試合の日程と対戦カードが決まった。
侍ジャパンの強化試合の日程
| 日付 | 時間 | 球場 | 対戦カード |
|---|---|---|---|
| 3月2日 | 12:00 | 京セラドーム | 韓国 vs 阪神 |
| 3月2日 | 19:00 | 京セラドーム | 日本(侍ジャパン) vs オリックス |
| 3月3日 | 12:00 | 京セラドーム | 韓国 vs オリックス |
| 3月3日 | 19:00 | 京セラドーム | 日本(侍ジャパン) vs 阪神 |
2023年の前回大会は中日、阪神、オリックスと3試合を行ったが、今回は開催が4日早いこともあってか、2試合に短縮された。前回はメジャーリーグ側の規制により、大谷翔平やヌートバーなどのMLB組は3月6日の阪神戦から出場が解禁された。果たして、2026年は強化試合にメジャー組が出場できるのかも注目だ。
前回大会は強化試合なのに京セラドームに詰めかけた観衆は33,460人。一年前の日本シリーズ(最多33,210人)よりも多かった。
大谷翔平が阪神・才木浩人から放った片膝本塁打は、大会前の侍ジャパンを一気に加速させる象徴的な一打となった。片膝をつきながらバックスクリーンに運んだ打球は、練習試合の枠を越え、チームの起爆剤として語り継がれている。
その才木浩人は、今度は侍ジャパンの一員として日の丸を背負う可能性が高い。かつて大谷に本塁打を許した投手が、同じユニフォームに袖を通し、共に世界一を目指す立場へと歩を進める。伝説の一打は、打った者と打たれた者の双方に刻まれ、次の大会へとつながっていく。
本番前夜の真実、勝負なき勝負

祭りは本番の賑わいより、準備の手つきにこそ真実が宿る。鍋の湯気がまだ静かに立ちのぼる頃、味はもう決まっている。
どれほど強靭な肉体を持つアスリートでも、ウォームアップを怠るとパフォーマンスを発揮できない。致命傷につながる。WBC前の強化試合も同じだ。スコアブックに残るのは数字だけだが、そこへ至るまでの呼吸、隊列、譲り合いと奪い合いの手触りが、見えないまま本番の勝敗を支えている。
強化試合は、勝ち負けよりも「役割」の位置合わせだ。ペナントの看板を外し、タイトルの鎧を脱いで、エースはリリーフへ、四番は六番へ、名刺の肩書きを裏返す。会社でいえば異動通達。慣れた椅子を立ち、知らない部署のドアを叩く。そのとき笑えるか、黙って動けるか。控えに回る者のうしろ姿に、短期決戦の本当の強さがにじむ。強化試合は、その顔つきを確かめる場所でもある。
強化試合は敗者を持たない。相手は看板を預けて、こちらの鏡になってくれる。鏡が曇れば、自分の歪みが見えない。相手が強ければ、こちらの弱さがはっきり映る。強化試合にふさわしい相手がいるから、準備は本番になる。祭りの準備が楽しいのは、準備そのものがひそかな本番だからだ。
来年もまた、京セラドームで、同じ光景が繰り返される。ユニホームに袖を通す瞬間の沈黙、円陣で声を張る若手、控えに回りながらも背中で支えるベテラン。強化試合とは、ひとりひとりが自分の静けさを持ち寄り、やがてチームの呼吸を合わせていく時間である。
昨年の栗山監督は強化試合でファンに向けて放った。
「一緒に戦いましょう」
応援してください、ではない。観客席とダグアウトの境界線を、言葉でまたいだ。選手が役割を少しずつ持ち寄り、観客が熱を少しずつ預け、球場がひとつの体温を持つ。大会が始まる前に、すでに始まっている物語。スコアのない勝敗が、静かに積み上がっていく。
祭り囃子の出だしは、もう鳴っている。次の春、侍ジャパンはふたたび太鼓を叩く。その一打が、世界を震わせる余白をいま、準備している。
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