ベースボール白書

野球場で逢おう

グリーンスタジアム神戸〜八月のカクテル光線

グリーンスタジアム神戸

甲子園や大阪ドームと違い、野球ファンしか名前を知らず、オリックスの準本拠地である「グリーンスタジアム神戸」。正式名称は「神戸総合運動公園野球場

グリーンスタジアム神戸

神戸にあるのにアクセスは不便。神戸市営地下鉄西神・山手線で「総合運動公園駅」を目指す。すでに電車がグリーンを基調にしており、このスタジアムの匂いが色から漂ってくる。

グリーンスタジアム神戸

総合運動公園駅の目の前が野球場であり、この駅近は西武ドームに比肩する。

西武ドームより広いので窮屈感もない。外観は野球場というより陸上競技場。

グリーンスタジアム神戸

野球場とは思えない入場ゲート。まさに名は体を表す総合運動公園だ。

グリーンスタジアム」の名前が示す全面の天然芝、土はクレー舗装。球場周りを緑の木々が囲む美しい球場を「日本一の野球場」と呼ぶファンは少なくない。目の前の大阪湾から海風が吹き、土煙が舞い上がる。

これまで「ヤフーBBスタジアム」「スカイマークスタジアム」、そして現在の「ほっともっとフィールド」に改名してきたが、この緑の美しさを全身に浴びると「グリーンスタジアム」の呼称がふさわしいことが身に沁みる。

グリーンスタジアム神戸

フェンスの高さは2.4mと日本で最も低い。バッターの打率も得点の入りやすさも横浜スタジアムに次ぐ2位のヒッターズ・パーク。ただし、ホームランの数は少なく、大阪ドーム、甲子園と同じく関西の球場は本塁打が出にくい。野球の神様がクラシカルなベースボールをさせる。関西が野球の聖地である所以だ。

グリーンスタジアム神戸

特徴的なのがマウンドからホームベースまで引かれた土の直線。これがあるプロ野球の本拠地はグリーンスタジアム神戸のみ。野球黎明期の1800年代の形式でメジャーでも2、3球場しかない。

グリーンスタジアム神戸

ダグアウトから打者の花道が設けられているのもメジャー仕様。アリゾナチェイス・フィールドと同じ。見れば見るほど素晴らしいスタジアム。地元では少年野球の大会でも使われるというから贅沢だ。

八月のカクテル光線が似合うのは甲子園だけではない。グリーンスタジアム神戸では5回裏終了時に名物の花火も打ち上がる。それは神戸の夜景の如く美しく、球童や野球ファンたちを祝福する。

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侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

2024年8月28日(水)、甲子園の決勝から始まった野球旅のラスト・ピクチャー・ショー。兵庫で始まり兵庫で終わる。この対決を見るのは昨年の東京ドームに続いて2回目。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

侍ジャパンのグッズ売り場には長蛇の列ができている。ただし、観客は1万人。日本人はWBCのような圧倒的なスターか、オリンピックのような歴史とブランドがなければ自分で意味を見出すのは苦手な民族。まだまだ野球の発展には根気が必要だ。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

高校三年と大学四年生。「4年間」の熟成が何を生み出すのか。その違いがハッキリ見てとれる試合。身体的な大きさだけではない。ピッチャーの球速と球威、バッターの打球、スイングの速さ。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

わずか数キロのスピードに大きな結果の違いが表れる。この数キロの中に、大学で流した3、4年間の汗の重力が宿る。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

夕方5時。試合開始が近づくに夕陽が顔を出す。翌日なら雨天中止。台風が1日待ってくれた。屋外球場はお天道様も観客。若人の躍動を祝福した。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表
侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

球場メシは、鶏塩ももwithコカ・コーラ。甲子園焼き鳥に始まり、福岡ドームのチキンガーリックライスを経由し、最後も鶏で締める。関西の飯は鶏ガラである。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

今年の春から高校生は新基準の金属バットに変わり、飛ばない野球を経験した。その影響がどう出るか。18時、プレイボール。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

高校代表の先発は甲子園の優勝校・京都国際の中崎琉生。甲子園の決勝で9回を投げ切ったときは130キロ台だったが、疲れが取れて141キロを出す。大学生を相手にすると威圧感が違ので、本来の自分のピッチングができない投手が多い。去年の前田悠伍は大物を相手にしても動じないエースの資質を発揮したが、今年の中崎にも同じ資質が備わっていた。大学進学を明言しているが、どんな4年間を過ごすのか。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

大学の先発は3月の侍ジャパンのトップチームに呼ばれた中村優斗。欧州相手に直球7球すべてが155キロを超え完全試合のリリーフを担った。あれから自己最速が2キロ伸び159キロを記録したが、この日はそこまで直球のキレがなく本調子には遠い。それでも、すべて150キロ台。高校生に4年間の差を見せつける。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

リードする捕手の印出太一もドラフト上位候補。この日も先制の二塁打を放った。大学代表のピッチャーは早稲田の伊藤樹の糸を引くような低めのストレート、仙台大の渡邊一生の大きな弧を描くカーブと150キロを超える直球の緩急。全員が3回生。来年が恐ろしい。秋に社会人vs.大学代表の侍ジャパンをやってほしい。

青学の西川史礁は別格の打球速度。走塁でも魅せ格の違いが出た。

高校生も負けていない。1点リードされている3回裏、2アウト満塁のチャンスで高校野球の象徴テーマ曲「 アゲアゲホイホイ」が流れるなか、押し出しで同点にした高校生の粘力、未来力。これぞ侍ジャパンにふさわしい。直後の守りでもピンチを守り切る。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

東海大相模の198cmピッチャー・藤田 琉生のスケール感が示すように高校代表のポテンシャルは末恐ろしい。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

こうなれば意地の殴り合い。ヨーロッパでの国際大会で全勝を優勝を飾った矜持を発揮する。その象徴が中央大の3年、繁永 晟(しげなが あきら)。2本の二塁打に加え、守備でも投手を助ける。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

その繁永が放ったライト前ヒットで走者を刺したのが大阪桐蔭の境亮陽。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

ノースリーからでも振っていく積極性は欲しいが、ピッチャーの中崎と同じく存在感が頭抜けていた。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

最後の2回を締めたのが今朝丸。打者に食い込むように襲ってくるストレート。快速球でも豪速球でもなく重速球。高校生では観たことがない。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

9回の西川史礁との対戦では威圧感に負け四球を出す若さを見せるが、その後のクリーンアップを抑える切り替えは驚異。台湾で行われるワールドカップでも世界を驚かせるだろう。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表
侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

青学の西川史礁や大阪桐蔭の境亮陽をはじめ、今日この球場で躍動した球児たちは将来の侍ジャパンを牽引する。

侍ジャパン 高校代表vs.大学代表

この日、確信したことはひとつ。やっぱり野球は侍ジャパン

千葉マリンスタジアム〜マリンの風は熱く

見出し画像千葉マリンスタジアムZOZOマリンスタジアム)とは因縁がある。立命館大学の卒業を半年後に控えた2005年、タイガースファンの友人からロッテー阪神日本シリーズを観に行こうと誘われた。

「巨人以外は草野球」を公言していた自分だったが、青学に通う弟の引っ越しを手伝ってくれること、日本シリーズ未観戦だったことでOK。10月29日(土)、この日は22歳の誕生日。だが第6戦のチケットを入手したものの、阪神が歴史的大敗を喫し4連敗。初の千葉マリンスタジアムは幻となった。ボビー・バレンタイン監督が率いた同年のロッテは強く、8人が半年後のWBC日本代表に選ばれている。韓国代表にはイ・スンヨプも送り出した。あれから17年、WBCが縁となり、幻だったマリンスタジアムに来ることができた。侍戦士の山本由伸が登板するからだ。

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8月8日(火)、仕事を15時で切り上げて海浜幕張へ。台風接近により曇天の予報だったがカンカン照り。野球観戦はいつだって小旅行。しかも今回は都を越え隣の県、そして初めてのスタジアム。総武線西船橋まで行き、武蔵野線海浜幕張駅へ。約1時間半。

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ZOZOマリンスタジアムまでの徒歩15分がキツい。駅から100円で送迎バスが出ているが利用する気持ちがわかった。日中にゲリラ豪雨があったようで湿度が最凶。マンガみたいな汗が噴き出る。サウナ状態。これが海辺の街か。

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ZOZOマリンは映画『冒険者たち』の孤島のような、ローマのコロシアムのような佇まい。

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来月に行くマイアミの空気を思わせる。夕陽がよく似合う。アクセスは良いと言えないが、東京ドームや神宮球場とは別世界が待っている。

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「ガーナゲート」「コアラのマーチゲート」「クーリッシュゲート」など面白い名前で野球ファンを迎える。東京ドームも「長嶋茂雄ゲート」「王貞治ゲート」「沢村栄治ゲート」「松井秀喜ゲート」など、先人たちへのオマージュを込めた工夫をすればいいのに。

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レフトスタンド7列目に陣取るとオリックスの守備練習中。南国感たるや。赤土が映える。どこからでも見やすく、美しい。子どもの頃に来ていたらプロ野球選手を目指したくなっただろう。千葉の市川出身の会社の同僚は一度も来たことないらしい。

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腹が減っては野球観戦はできぬ。球場メシを求めて彷徨う。食べたいと思っていた『ストライク』の「かずちゃんのもつ煮込み」650円。1992年から販売しているらしい。これが中々見つからず、球場内を歩き倒した。

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これまで食べた球場メシでダントツのNo. 1。なんですか、もつ煮込みと野球の相性は。これを考えた人は佐々木朗希のパーフェクトに匹敵する快挙。

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超・超・大行列のロッテリア。先に買っておけば良かった。

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朗希ロコモコチーズバーガー900円。かずちゃんのもつ煮込みには遠く及ばないが、これもイケる。

エースのマウンド

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試合開始30分前、眼の前で山本由伸がピッチング練習。単なるウォームアップではなく、死地に向かう戦士の崇高な儀式。プロ野球のピッチャー全員がそうではなく、山本由伸だからこそ発するオーラ。同じものを感じたのはWBC大谷翔平だけ。

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しなやかで強靭。よほど体幹が強いのか、190センチを越えるメジャーリーガーよりも力感がある。「柔」と「剛」を足して2で割らない。究極のフォームと呼んでいい。

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試合が始まっても圧巻。テークバックは威風堂々、大きく広げた両腕。打てるものなら打ってみろという自信が漂ってくる。足をスライドするステップは今年から取り組む「すり足」。ミサイルを放つように一気に加速していく。

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肩を外旋させるレイトコッキングでは全身のバネを使って強靭なねじれを生み出す。そこから放たれるストーレトは最速157キロ。155キロを下回ることがほとんどない。左脚で強力なブレーキをかけ、全身の力を押し出す。時折、混ぜるカーブは120キロ台。30キロ近い緩急は打者を困惑させる。ちょっと手が付けられない。

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肩を内旋させるアクセラレーションは凄まじい右腕のしなり。コルトパイソン357マグナムに変化球の機能を搭載したような手のつけられなさ。日本人初のサイ・ヤング賞は大谷でもダルビッシュでも佐々木朗希でもなく、山本由伸だろう。一軍の投手が並レベルに錯覚してしまう。それが山本の恐ろしさ。

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相手のロッテ打線もすごい。157キロでもバットに当てる。4本のヒットも失投ではなく、むしろ厳しいコース。さすが2位のチーム。プロ野球のレベルはここまで進化したか。それでも山本は動じない。菅野智之田中将大はランナーを出してからギアを上げるが、微動だにしない、迷わない、不動の境地。

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フォロースルーは歌舞伎の見栄のようなフィニッシュ。打たれる気配を一切感じさせない。敵地のマウンドが山本由伸のために存在しているようだ。

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森友哉がファウルフライにダイブすると、マウンド上から拍手を送り、直後に三振を奪う。エースの風格。7回110球4安打2四球の無失点。奪三振は4で少なかったが、日本最高峰のピッチングを見せてくれた。

山崎颯一郎

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8回のセットアッパーは山崎颯一郎。女性ファンが多い。去年のソフトバンクとのCSファイナルステージ第4戦では球団最速の160キロを記録した。190センチの長身から投げ下ろすストレートが武器。

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山本由伸が157キロでもバットに当てられたのに対し、山﨑颯一郎は150キロでも空振りを奪える。長身による角度なのか、タイミングの取りにくさなのか、ストレートの質を改めて考えさせてくれる。

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3年後のWBCのリリーバー候補。このダイナミックなフォームが東京ドームで観られる日を楽しみにしている。

光の球場

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小学生の頃、こち亀の『光の球場』を読んで憧れた大毎オリオンズ東京スタジアム。現在のZOZOマリンスタジアムは照明塔を設置せず、球場の円形。美しいマリン。青空が似合う。

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拡声器で叫ぶ昭和を彷彿とさせる応援、照明塔のない演出、千葉マリンスタジアムは個性にあふれている。老朽化で移転や改装も噂されているが、球場が変わってもこの雰囲気は残してほしい。

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わずか数時間で、こんなに空の感情が変わっていく。屋外球場の魅惑。

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祝福の花火。ホームランが出なかったこの日、唯一の祝砲となった。

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こち亀で憧れた光の球場の匂いがZOZOマリンスタジアムにある。

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やはり千葉のスタジアムは夢の国より夢の国だった。

大阪ドーム〜レイジング・ブルース

見出し画像2023年の夏、宮城大弥を観るために大阪行きを決めた。毎週水曜日に登板するはずなので事前に往復の深夜バスと一塁側の席を予約。

京セラドームは2010年9月25日、ロッテの西岡剛がシーズン200安打を達成した日から13年ぶり。朝から甲子園で2試合を観てドーム前駅に移動。開場まで1時間半あるので金毘羅の湯という銭湯に入る。

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16時、開場と同時に球場入り。この日は満員御礼。昔はお盆休みといえば15日までだったが、いつの間にか16日も休みのようだ。年配の観客が多いが小学生の集団もいる。親はいない。近所なのか、最近の子どもはずっと大人びている。大阪ドームはまるで宇宙船のような天井。宇宙人が降臨してもおかしくないが、半年前に大谷翔平というユニコーンが降臨した。京セラドームはペッパーミルが生まれた地として語り継がれる。3年後はどんな伝説が生まれるのか。本戦はもちろん、強化試合も行きたい。

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席に着くとソフトバンクの打撃練習。柳田悠岐がスタンドに放り込む。豪快さで言えば日本人のスケール感を超えている。メジャーに行かなかったのが不思議で仕方ない。

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近藤健介も貫禄のスタンドイン。WBCのMVPは大谷翔平吉田正尚と近藤健介の3人にふさわしい。4番タイプではない気がするが、藤本監督の意図があるのだろう。打撃練習を見届けたら球場メシを求めてコンコースへ。

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座席の幅とほぼ同じ長さ、30センチを超える『いてまえドッグ』今日は席が真ん中なので途中で抜け出しにくい。ドリンクも3つ先に買っておく。味はともかく、コンセプトが素晴らしい。ネーミングも抜群で大阪ドームの名物にぴったり。次回も買うだろう。

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リスカはちょっとイマイチ。甘さを重視しているので清涼感が足りない。

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前回のZOZOマリンで見逃した山本由伸の大遠投。これを観られただけでも価値がある。リリーフから先発に転向した2019年から行うルーティンは今も名物。軸足の感覚、重心移動などを確かめる。約100メートルの距離を助走なしで、しかも低空飛行でキャッチャーミットに叩き込む弾丸は圧巻。

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異次元のキャノンアーム(鉄砲肩)は来年、大谷翔平のバッティング練習に続いてメジャーリーガーを驚愕させ、アメリカの観客を魅了するだろう。

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しかし、この日の山本は台風で登板日が1日ズレた影響か、本来の球速、キレがない。

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最高球速は155キロ。十分すごいが山本にしては物足りない。球が次々と甘いコースに入り、初回からヒットを許す。

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それでも近藤健介を三振に斬ったカーブの曲がりと緩急はエグく、ソフトバンク打線を手玉に取る。不運にも味方の守備のミスが重なり5回までに3失点。5回110球、被安打7、奪三振5、四球3の内容。それでも自責点は0と貫禄のピッチングを見せてくれた。調子が悪くてこれはありえない。ここまで「エース」という形容が相応しいのは上原浩治菅野智之くらいか。

そして、ここからはWBCタイム。甲斐はスピードに注目されがちだが、送球の安定感がすごい。二塁や一塁へ必ずストライク送球。ミスる空気がない。WBCの本戦で観られなかった牧原大成は4打数ノーヒットで活躍なし。

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目を引いたのは7回に代走で登場した周東佑京。

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盗塁は仕掛けなかったが、180センチの長身で70キロちょっとしかない身体は余計にスリムに見える。しなやかな身のこなしも合わさって、まるで風が抜けていくよう。

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代走のスペシャリストのイメージが強いが、俊足は外野の守備でも活きる。3年後のWBCでは30歳。果たして代表入りできるか。少なくとも来年のプレミア12では見たい。

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そして超ラッキーだったのが9回に1点リードされる場面で宇田川優希が登場。WBCではランナーを背負った場面でのリリーフは伊藤大海、湯浅京己、そして宇田川祐希と決められていた。しかし、伊藤のような図太さとは真逆のデリケートでガラスのよう。

とてもランナーを背負った場面に強いピッチャーとは思えないが、誰よりも繊細だからこそピンチに向いているか。奥が深い。宇田川は野球に愛される何かを持っているのだろう。

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ストレートは150キロ台前半。まだ本調子ではなさそう。それでも140キロ前半の落差の少ないフォーク。三振を奪いにいく弾丸フォークの使い分けは魅力。なにより184センチの体躯より大きく見える。そして重厚感。迫力がボールに乗るかの球の走り。この日は26球を投げ、四球1、三振0。無失点で抑えた。

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プレミア12ではどんな活躍を見せてくれるか。今後に注目したい。

神宮球場〜終わらざる夏

画像甲子園では準々決勝が行われ、海の向こうでは大谷翔平が43号グランドスラムを放った2023年8月19日の土曜。相も変わらず東京は殺人的な酷暑に襲われた。お盆を過ぎても秋の気配は来ない。終わらざる夏が続く。

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神宮球場に来るのは今年3回目。春の早慶戦、初夏の全日本大学野球選手権だ。ヤクルト戦を観るのは2年前以来。そのときは最下位を独走していた頃で退屈な野球だった。今回も同じく最下位争いだがモチベーションが違う。

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村上宗隆が欠場したものの楽しみは変わらない。相手は最下位を争う中日だが先発が髙橋宏斗。3週間前に東京ドームで観たが、もう一度あの投球を見られるとは。そしてヤクルトの先発が高橋奎二。WBCでピギーバックとリリーバーを務めた両雄の投げ合い。このふたりならWBC並の9,000円という破格の値段も納得。

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恵比寿での用事を済ませ、16時の開門と同時に球場入り。まだ日差しは強い。守備練習のビシエドも辛そうだ。

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打撃ゲージでは細川成也がバッティング練習。

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一流選手の美しいフォロースルー。高橋奎二との対戦が楽しみだ。

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球場メシは中村悠平の福井名物タレカツ丼。1,100円。中村悠平は今日の観戦のお目当てのひとり。

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しかし、つば九郎と談笑するものの今日は休養日。ホームでそれはないだろう。休ませるならアウェイのときにしてくれ。恨むぜ高津監督。

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ナンダカンダ叫んだって夏も終わろうとしている。17時を過ぎると涼風が訪れ、気温が少し下がる。

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初対面の高橋奎二。このストレッチによって今のダイナミックなフォームが完成した。

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中日の髙橋もウォームアップ。

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WBCの両雄が並び立ってピッチング練習。タカハシ対決を制するのはどちらか。

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選手より存在感のあるマスコットつば九郎も見守る中、18時プレイボール。

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高橋奎二はセットポジションからユニホームを引っ張ってグラブを隠す。そこから脚を高く上げる。

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伝統の平安サウスポーにふさわしいダイナミックなアーリーコッキング。

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レイトコッキングも躍動感に溢れている。

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体重が乗り、鞭のようにしなるリリース。ストレートの球速は常時150キロを超える。130キロ台後半のスライダー、100キロ台のチェンジアップを使い分け緩急は申し分ない。

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ダルビッシュに教わったスライダーも披露。あとはストレートで空振りを奪えるようになれば一気に化けるに違いない。

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初回、ストレートを狙い撃ちされ石川昂弥に2ランホームランを浴びる。しかし、失点はこの一打のみ。徐々に調子を上げ6回121球、被安打7の5奪三振とまずまずの成績。将来メジャーに行くには決め球のチェンジアップとストレートをどれだけ磨けるかだろう。

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21歳にして中日の顔になりつつある髙橋宏斗。この日は最速154キロと本調子ではなかった。コントロールも甘く三振は3つしか奪えない。

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それでも終わってみれば7回117球、被安打5の自責点2。見事に試合を作った。ヤクルトの高橋と違い、ストレートで空振りが奪えるのが大きい。決め球のスプリットも活きてくる。

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山田哲人の盗塁を見たかったが、この日は活躍なし。2四球を選んだのは流石だが、これでは物足りない。ボールが全然手前なのにバットはすでに中間地点まで来ている。スイングスピードが速い山田哲人ですらコレ。いかにプロの選手が0コンマの世界で戦っているか。

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ヤクルト1点リードの9回表、クローザーは現在セ・リーグのセーブ王・田口麗斗。夏らしいミントグリーンのグローブが映える。

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最速151キロのストレートに大きく曲がるスライダー。堂々たるマウンドさばき。

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最後のバッターを三振にとると、アロルディス・チャップマンを彷彿させる仁王立ち。セーブ王も納得。これは打てん。WBC戦士の2人とは違う凄みがあった。次は巨人の最終戦。今度こそ中村悠平を見たいが厳しいか。

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神宮球場大学野球の聖地であり、高校野球にとっては甲子園への登竜門。球団の持ち家ではない。間借りしている球場。しかし、一塁スタンドからは新国立競技場、NTTドコモビル、新宿の都庁のライトアップが見える。

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景色が閉ざされた東京ドームとは違い、東京のランドマークを望める。かつてヤクルトは四国移転(松山坊ちゃんスタジアム)への移転も噂されたが、立派に東京を代表するチーム。

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打ち上げ花火も夏を彩る屋外球場ならでは。

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日本一柄の悪いかもしれない在京の中日ファン。昭和の匂いがあり大好きだ。逆にバンテリンドームのファンは大人し過ぎる。野球は代理戦争。ファンはこうであってほしい。

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最下位を争うチーム同士の試合。内野席は8,900円のセレブ価格。それでも完売御礼の人気コンテンツ。競技人口は減ってるらしいが、野球が日本のナンバーワンSPORTSであることは変わりない。

ナゴヤドーム〜Dragon Night

見出し画像そうだ名古屋、行こう。思い立ったのは2日前。秋に出版するWBCの書籍を執筆していたらバンテリンドームに行ってないことに焦った。ナゴヤドーム侍ジャパンにとって重要な地。詳しくは書籍に書くので割愛するが、今回は試合や選手が目的ではなく、あるスポット。

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かつてジャイアンツ時代の松井秀喜イ・スンヨプが叩き込んだライトスタンドの5階、パノラマ席と名付けられたホームランゾーン。12球団で最もホームランが出にくいといわれるナゴヤドームで、こんなところまで飛んでくる心配はない。そこにぶっ飛ばしたのが大谷翔平だった。

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8月11日、三連休の初日。予想はしていたが品川駅はごった返し、新幹線の指定席、グリーン車はすべて売れ切れ。自由席に座れたのはありがたかった。11時17分発の新大阪行き。車内でずっと寝ていたが15分遅れの到着。駅員さんが必死に乗客に誤っていた。何かあったのか?

13時9分、中央本線に乗り換え大曽根駅へ。13時半、開場の16時まで時間が余っているので駅前のQBハウスへ。

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「旅先で髪を切れ」は水曜どうでしょう軍団の掟。サッパリして野球観戦にのぞむ。安室奈美恵のCAN YOU CELEBRATE?が流れていた。

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続いてはドームから歩いて7分ほどの大幸温泉。WBC優勝のTシャツを着ていたら、女将さんが日の丸の国旗のマークを見て右翼と思ったらしい。「WBCのTシャツです」と言っても「なにそれ?」と野球のことを全く知らない。ナゴヤドームの前に住んでいて逆にすごい。

一方、サウナから出てきた近所のおじいちゃんは整うどころか愚痴のオンパレード。「ドラゴンズが弱いもんで、もう野球観戦なんて何年も行ってねえよ。広島戦なんてドームが真っ赤っ赤のときがあるでよう」

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2013年からの10年間、2020年の3位が最高で順位で9年間Bクラス。しばらく球場から足が遠のいていた野球ファンにWBCは強力な磁石となっている。

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水風呂に浸かったあと、ドームに向かうとドラゴンズカラーのファミマを発見。ただし店内は普通で竜のグッズはなかった。

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ナゴヤドーム前矢田駅からのびるドラゴンズロード。3月はここがサムライロードになった。

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UFOのような円盤状のバンテリンドーム外観。多くの野球ファンがWBCという未知との遭遇を果たした。

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この駐車場も3月は人で溢れかえった。目の前のイオンモールでショッピングや夕食をとりながら胸を躍らせたのだろう。

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16時の開場と同時に球場入りすると広島のバッティング練習中。

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秋山翔吾や小園海斗が打撃練習をするが、パノラマ席どこから柵越えもない。

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そのパノラマ席から望むバンテリンドーム。ゴルフじゃあるまいし、こんな所まで野球の重いボールを運ぶなんて人間業じゃない。

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試合開始まで、名物「がぶりもも焼き」を求めて並ぶ。みんな練習そっちのけ。1時間以上も待った末に、なんと売り切れ。それはないだろう。もうちょっと在庫を多くできないか?

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ピンチヒッターに球弁(たまべん)のホームラン弁当1,300円。この日、2本のホームランを見れたのは、この縁起のいい弁当のおかげか。

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ご飯、おかず、どれも絶品。この日も売り切れ。野球は最下位に沈んでいるが、弁当の美味さは首位ではないか。

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野球は試合前の円陣がいい。赤のユニホームと合わさって、余計に元気に見える。負のオーラがない。

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広島の先発は野村祐輔絶滅危惧種になりつつあるワインドアップ。この日のピッチャー17人の中で唯一、振りかぶっていた。いや、今年に入って野球を11回、観戦しているが、振りかぶる投手は野村が初めてではないか。

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ピッチャーは振りかぶることでパワーを蓄積し、間を作る。そこから一気に全力を解放し発射する。やはりワインドアップはスケール感、躍動感があってカッコいい。東尾修が「今のピッチャーはセットポジションばかりでつまらない」と嘆くが同意見だ。

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最下位をひた走る中日の希望は岡林勇希。最初の打席でレフトへのテキサスヒットを放ち、94年のイチローを超える24試合連続安打。

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まだ21歳。3年後はWBCで躍動するか?ライバルはヌートバー。厳しすぎる戦いになるが、どこまで成長するか楽しみ。

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9回表、3-3の同点の場面でうれしいライデル・マルティネスの登場。WBCキューバ代表。祈りを捧げる儀式がピッチャーの孤高を語る。

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同じくキューバ代表のジャリエル・ロドリゲスがシーズン前にアメリカに亡命したが、マルティネスは中日に帰ってきた。

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大谷翔平と同じ193センチ。細身だから余計に長身に見える。長い脚の踏み込みの迫力。

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ここまで防御率0.00も納得の最速158キロ。WBCで日本と対戦していたらどうなったか。

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先頭打者の西川龍馬にはヒットを打たれるが、その後は危なげなく抑える。バント作戦を取らなかった広島の新井監督もすごい。この駆け引きが野球の醍醐味。

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9回裏、今度は広島のクローザー栗林良吏。なんという幸運。WBC戦士を2人も観れた。ロジンをつけるローテーションもピッチャーの崇高さが出ている。

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WBCに選出されるピッチャーはフォームの躍動感、球のキレが全然違う。典型的なフォークボーラーと思っていたが、156キロの直球があるからフォークが生きる。地元の名古屋で気合が入ったのか、山本由伸のストレートよりすごかった。

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日本のプロ野球侍ジャパンに選ばれるかどうかが基準のひとつになる。来年のプレミア12でも見たい。セ・リーグの野球はDH制の導入をめぐって議論されるが、代打の面白さは野球の醍醐味。先日のパ・リーグでは代打はゼロ。メリットの多さを考えるとDH制を導入すべきだが、どちらの野球が面白いか聞かれるとセ・リーグだった。

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12回を戦い3ー3の引き分け。タイブレークはあったほうがいいか?それともシンプルな延長戦がいいか?野球ファンと議論してみたい。

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試合後、グラウンドを整備するスタッフ。美しい夢の球場は陰日向に咲く仕事で作られる。

夏のベルーナ、夏の西武ドーム

野球ファンには共通の季語がある。「夏のベルーナ」「夏の西武ドーム

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西武球場に屋根をカポっとかぶせた西武ドームは小籠包の蒸籠(セイロ)のように選手・観客を苦しめる。その噂を確かめたくて2023年8月26日(土)、高田馬場から西武球場前に向かった。数年前までは登山で利用していた西武電車。駅構内はライオンズブルーに染まっている。

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横浜スタジアムも駅から近かったが、駅近球場でベルーナドームの右に出るものはない。改札を出れば球場は目の前。ドームじゃなかったら駅にボールが飛び込むだろう。

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比較的この日は涼しい日だったが、蒸し風呂なのがよくわかった。風がないと汗が噴き出る。密閉されているから空気が重い。ちびっ子、じいちゃんばあちゃん、スマホで競馬中継を見てるおっちゃん、大谷翔平エンゼルスのTシャツを着た年配の夫婦。 野っ原の匂い、昭和の野球臭、昔のパ・リーグ感が残る。やはり野球場はそれだけで素晴らしい。来てよかった。

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アレックス・カブレラが放った180メートル弾の記念プレート。今後、日本人で現れるか。

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屋台が立ち並ぶのも食欲をそそる。さあ球場メシ。

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会社の熱狂的なライオンズファンに教えてもらったライオンズ焼き。冷やしあんこが夏に涼をくれる。対戦相手によって味が変わる日本ハムの「きな粉あん」はイマイチ。スタンダードなあんこが一番。

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今日一番の目的、WBCでは大谷翔平に気を取られてきちんと見れなかった。

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ベルーナ名物・球弁(きゅうべん)の『箸とまらん弁当』1,800円。大分名物のとり天。しかし、明太子ご飯と漬物が一番うまい。

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狭山ほうじ茶のソフトクリームも買って観戦。こんなんナンボあってもいいですからね。

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コーラもライオンズブルー。コーラは赤やろというツッコミは野暮か。

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試合開始前に髙橋光成が登場。2014年のドラフトで巨人に来て欲しかった投手。10年越しにピッチングが見られる。

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今年の日ハム戦は3登板で防御率0.75の怪物スタッツ。どんなピッチングを披露してくれるか。

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おかわり中村剛也は同じ体格の4番・渡部健人をイジる。西武は相撲部屋のような体格が多い。アグーが居ないのが寂しすぎる。

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大好物の粉もん、ロジンの妖精・伊藤大海が登場。大谷翔平と同じカラーボールを使った壁あてのルーティン。WBCの影響か。

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中国戦では9回にクローザーで登場してくれたが、試合前のアップを見るのは初めて。キャッチボールでロジンバッグを使う投手なんて初めてみた。セルフブランディングが完璧。

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野球というスポーツが特殊なのは「ショート」の存在だろう。一塁から三塁まで合計3人でいいところを、なぜか二、三塁の間にショートストップという第四の存在を置いた。ベースボールの草創期、ショートは外野手からの送球を受ける中継としての役割だっという。また、打者によって二、三塁間や、一、二塁間など守備位置を変えたとも言われる。

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その役割を指して「ショートストップ」を「遊撃手」と訳した中馬庚(ちゅうま かなえ)の感覚は鋭い。今、日本を代表する遊撃手といえば坂本勇人を殿堂入りさせれば源田壮亮。今日はファインプレーを見せてくれるか。

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17時プレイボール。髙橋光成は2週間ぶりの復帰登板で本調子からは遠い。3回7失点の安土城なみのスーパー大炎上。

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それよりピッチングフォームが前橋育英のときと印象が全然違う。ダイナミックなフォームと思っていたが、かなり省エネ。風貌といい、山口俊みたいだ。成績が良いので、これが合っていると思うが、ダイナミックなフォームが好きなので少しガッカリ。

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絶好調の清宮幸太郎には左右に打ち分けられる。バッティングセンスは非凡。才能が爆発したらどんな打者になるのか。BIG BOSS次第。

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まだ23歳の野村佑希も豪快なホームラン。日本ハムの二本刀が目覚めればすごい打線になる。3年後のWBCに選ばれるかもしれない。

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うれしい誤算が4番にアリエル・マルティネスを使ってくれたこと。WBCキューバ代表。あまり活躍できなかったが、その打撃は魅力。捕手でこれほどのバッティングができるれば大きな戦力。見れてよかった。

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一方の西武打線はダメダメ。特におかわり。諦めの早い走塁など、バッティングにも覇気がまったくない。アグーを出せと叫びたくなった。

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対照的にリードオフマン源田壮亮は大活躍。スラッガーと同じキャッチャー寄りに立っているのは意外だった。

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安打を放てばWBCの韓国戦でも披露した盗塁。

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余裕の盗塁成功。足で引っ掻き回せると強い。そして源田の代名詞の守備。

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ショートが良いと試合が引き締まり、グッと面白くなる。

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フィールディングもすごいが、よほど体幹が強いのか、なんでこの態勢から、あんな正確な送球ができるのかわからん。

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この日もファインプレーを魅せてくれた。安定感が半端ない。

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この日の主役は伊藤大海。テークバックは目いっぱい右腕を伸ばし、左腕を顔の高さまで上げる。北海道の広大な大地のように全身を使った伸び伸びとしたフォーム。

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オーソドックスな投球フォームなのにメチャクチャかっこいい。176センチより大きく見える。フィニッシュのフォロースルーなんか千両役者。

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プロ初の無死球完封7奪三振

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本人も言うとおりリリーフ向きの投手なのに先発やらしても最高。ストレートでグイグイ押すから決め球のスライダーやフォークが活きる。投手とは何かを物語るピッチングを披露してくれた。

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ベルーナドームは試合終了後にグラウンドに降りられるのがありがたい。選手が戦っていた神聖な場所だけど、ファンからすればうれしいサービス。

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ちびっ子が多いのも納得。ただし、この芝でダイビングキャッチは怖い。

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ベルーナドームの天井を使った世界最大のプラネタリウム

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なんたるエンタメショー。素晴らしきファンサービス。

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この企業努力は12球団イチではないか?

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最後に西武ライオンズの獅子座が現れると大歓声。見事なオチ。

進撃の巨人たち、さらば熱男

2023年は9月が終わり残暑の秋が始まった。10月1日(日)、侍ジャパンの社会人代表は中国でアジア選手権に挑み、MLBマイアミ・マーリンズワイルドカード進出に王手。ジャイアンツの1軍は2年連続Bクラスだが、2軍がイースタンリーグ優勝をかけて西武との最終戦にのぞむ。

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朝10時、開門前から長蛇の列。チケットは売り切れ。今年3回目のジャイアンツ球場は別の球場に変わっていた。まさか売り切れと思わず、当日券を目当てに来た人もいる。

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川崎の天気は試合中が雨予報。雲行きが怪しい。 マイアミにすむYさんからLINEが届く。マーリンズワイルドカード進出決定の報。最高のスタート。にわかファンだが巨人の優勝よりうれしいかもしれない。

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10時開門。ジャイアンツ・キュロス500円も最後。東京ドームでも売り出して欲しい。いつもなら、やかましいくらい元気な声が聞こえてきたが、今日は静か。1人の存在がこれほど大きいとは。

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4月25日の松田宣浩

このあと東京ドームで行われる引退セレモニーに出る松田宣浩。同い年、同姓、同じ近畿出身。そして双子。これほど共通点の多い野球選手は他にいない。40歳を迎えても誰より元気な声を出し、球場のどこにいるかすぐに分かる。野球選手の引退に感傷的になることは無いが、イチローと熱男の引き際には込み上げてくるものがある。

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岡田悠希。平安高校出身というだけで無条件に応援する。今風の大人しい青年。熱男くらいガムシャラになって欲しいが、今の選手はクール。バッティング練習では、めちゃ飛ばすらしい。高橋由伸からは「直すところがない」と絶賛されている。来年は2軍でタイトルを取るか、1軍に定着するか。

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一人だけ風体の違う異様なノッカーがいると思ったら中田翔だった。

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バッティング練習前にリラックスしているようだ。本来なら2軍にいるべき男ではない。軽く振っているのに柵越え連発。格が違う。怪物。

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将来は中田翔を超えるスラッガーになってもらわないと困る浅野翔吾。同じ"翔"。大谷翔平にも翔がつく。It's 翔 time

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浅野と同期のドラフト2位、萩尾。同じ大卒の門脇が1軍で躍動している。その悔しい思いをボールにぶつけて欲しい。プロでやっていくには善人では厳しい。皮が剥ければ1軍で首位打者も獲れる逸材。

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守備位置はセンターからライトへ転換。丸佳浩の後継者。レフト秋広、センター浅野、ライト萩尾の外野陣になれば夢のトリオ。

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正午を回り、太陽が試合をのぞきに来た。曇りのち雨予報は完全に外れ、カンカン照りの熱中症注意。日焼け止めがないと肌が荒れる。優勝決定戦を祝福するような天気。

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巨人の先発は来季の左のエース候補、井上温大(はると)

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去年も期待を受けて1軍に昇格するが、一流の壁に跳ね返された。今年1月には今永昇太との合同自主トレでチェンジアップを習得。今年ファームでは6勝0敗、防御率0.85。優勝決定戦の先発にふさわしい堂々の成績。

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西武は早くも終戦支配下契約を結ぶかどうかの育成メンバーが中心。背番号は3桁。優勝は決まったようなもの。

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まだ18歳の浅野翔吾。今日はDHでの出場。一発を打てるか。赤が似合うのは主人公、ヒーローの証。

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井上温大が軽く三者凡退に抑え、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマが鳴り響く。ジョニー・デップ村田諒太より似合うかもしれない。そして打席に立つときのルーティンがアレックス・カブレラ。まだ18歳のルーキーなのに打撃練習の飛距離は巨人でも上位。東京ドームのスタンドに何発も放り込む。第1打席はライトフライ。

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常総バレンティンこと菊田拡和。坂本勇人が引退し、岡本和真がメジャーに行ったあと巨人の4番サードを継ぐ男。華がある。

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六番サードで出場。この日は4打数ノーヒット。まずは来年、イースタン本塁打王をとってほしい。

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打撃は振るわなかったが、ファインプレーで優勝に貢献。失点を防ぐ守備は打点1と同じ価値。スラッガーでありながら守備の巧い選手はチームにとって2点増えるのと同じ。

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チーム唯一の猛打賞だった山瀬慎之助。小林誠司より肩が強く盗塁阻止ができるキャッチャーは貴重。井上温大をうまくリードした。打者の力が落ちている現代のプロ野球ではキャッチャーによって勝敗が決まる。1日も早く、巨人の正捕手の座を奪ってほしい。

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2回、浅野の第2打席はショートゴロ。相手は育成契約の選手だが打ち崩せない。それでも自分のバッティングフォームができている。171センチの小さな巨人アストロズのホセ・アルトゥーべのレベルになってくれることを期待してしまう。

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満員御礼2488人。最終戦での優勝決定戦といえ快挙。日本の野球熱は世界一だ。

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浅野翔吾の第3打席は死球を受け、6回最後の第4打席もショートゴロ。今日は快音なし。しかし、すごいのは三振しないこと。今日に限っては、たぶん空振りもゼロ。まだ18歳で異常なミート力。岡本和真と吉田正尚を足した選手になるかもしれない。

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試合は井上温大のワンマンショー。9回を投げて1安打完封。コースにズバズバ決める。1本の被安打もボテボテの当たりがショートの内野安打になったもの。実質ノーヒット・ノーラン。とても2軍のレベルの投手ではない。

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来週のファーム日本選手権ソフトバンク戦でも投げて欲しい。今日のピッチングができたら1軍でもローテ確実。

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優勝の直前、ブルペンから飛び出そうと準備していた横川凱。来年こそは1軍のローテーションを担ってほしい逸材。グリフィン、井上温大と左利きの三銃士を結成してほしい。

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優勝決定のボールをキャッチしたのは萩尾匡也。守備に華がある。あとはプロの一流の投手を打ち崩して門脇に追いついてほしい。

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真っ先に井上温大のもとに駆けつけた山瀬慎之助、菊田拡和。3人とも同じ22歳。浅野翔吾が日本一の野球選手になったとき、巨人が王朝を築くのに必要な仲間。

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歓喜の輪ができる。どのスポーツ、どのリーグ、どのチームであっても、この瞬間に立ち会える喜びは大きい。

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二岡智宏2軍監督は就任2年目で胴上げ。1人の選手交代なく動かざること山の如し。大将は座っているだけ。あるべき姿を見せてくれた。

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優勝セレモニーを見る間もなく東京ドームに移動。

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次に浅野翔吾を見るのは宮崎のフェニックスリーグか。18歳なのに、すでにチームの顔になっている。この雰囲気は松井秀喜が入団したときに似ている。ひとりの選手が巨人を変える。プロ野球を動かす。

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京王よみうりランド駅から調布で乗り換え京王線で新宿。すぐに総武線に飛び乗り16時過ぎに東京ドーム到着。スタメン発表に間に合った。

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三塁側のバルコニー席から。といっても実質は最も遠い外野席。球場の全体は見渡せるが選手との距離は遠い。ここで5000円は高すぎる。フリードリンクでコーラとオレンジジュースが飲み放題なのは唯一の救い。

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さすがに、ここまで声は聞こえないが存在感が違う。元気なオーラが出ている。

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WBCでコンビを組んだ坂本勇人も満面の笑み。うれしそうだ。

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この笑顔がチームを照らすキャプテンシー。良くも悪くも巨人は坂本勇人のチーム。

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引退試合は6番サードでスタメン。原監督も粋なことをする。

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同時にショート坂本も復活。やはり坂本勇人は遊撃が似合う。

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先発はフォスター・グリフィン。今年のジャイアンツ観戦は4月1日の開幕カードの中日戦、グリフィンの快投からはじまった。安心感は戸郷と並んで巨人でナンバーワン。

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ホットコーナーには熱男が似合う。やはり三塁はダイナミックに守ってほしい。

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岡本和真の守備はピカイチだが、こうして見るとファーストで良い。どっしり構える岡本には一塁が似合う。

その岡本は初回はショートゴロに倒れ、4回の第2打席も同じくショートへの併殺打。バッティングはともかく、やる気のない走塁には腹が立った。今日は調子が良くないかもしれないが、覇気がまったくない。第1打席を見ただけで、今日のノーヒットがわかってしまう。シーズンを通しての通算成績は飛び抜けているが、ムラがある男にはキャプテンは似合わない。

四球を2回選んで出塁し、ヒットも放った坂本勇人とは雲泥の差。坂本はスキャンダルは起こすが、グラウンドで手を抜くプレーは見たことがない。ジーターと同じくプレイボーイだが、キャプテンに相応しい。

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5回の最終打席。巨人のユニホームを着て東京ドームでホームランを打つことが夢だったが、結果はライトフライ。最後に歌舞伎ケンケン打法を見られてよかった。野球史に残る個性。

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熱男は6回の守備に就いたところで交代。メジャー流の花向け。

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選手をリスペクトする原監督らしい演出。

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綺麗なお辞儀、見事な引き際。

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松田に代わったのは門脇誠。やる気のない岡本と違い、全身から覇気に溢れている。プロ野球では「ドラフト4位の法則」と名選手を多く輩出している。 イチロー、山本由伸 、近藤健介、中村紀洋金本知憲青木宣親前田智徳和田一浩。ここに門脇も加わるだろう。

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なぜ門脇誠が1軍なのかわかる。 ボテボテのゴロでも「なんとしても塁に出る」という気迫がみなぎっている。 2軍の選手は打率や安打数など、成績や査定を気にしているように見えるが、門脇は「塁に出る」「ランナーを返す」ことに全集中しているように見える。起用する側は使いたくなる。

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グリフィンはコントロールは荒れているが、球威があるからボール球を振ってくれる。ランナーを出しても崩れることがない。エースの資質がある。

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今年のプロ野球を見て気づくのはキャッチャーの差で勝負が決まること。巨人の岸田がホームランの決勝点を放ったのに対し、ムーチョは絶不調。2三振でヒットなし。打てる捕手は球界全体の課題になっている。

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7回108球、被安打4、8奪三振、1四球と見事なピッチング。今年のジャイアンツ観戦はグリフィンで始まりグリフィンでしまった。来年は左のエース。

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試合後は熱男の引退セレモニー。野球には走、攻、守、「声」があることを教えてくれた。

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誰よりも流した汗が多いから、涙も止まらない。

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1日に巨人の胴上げを2回も見ることは二度とないだろう。

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東京ドームの23ゲートは「熱男GATE」と名づけるべきだ。

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帰りに𠮷牛を食べてから記憶がない。今年の夏に深夜バスで大阪⇨炎天下の甲子園(高校野球)2試合⇨大阪ドームプロ野球)のトリプルヘッダーでも平気だったが、巨人2連戦のほうが何倍も疲労する。特別好きなものを観るときはパワーを使う量が違う。1軍の試合を観るのは2024年。生まれ変わった新生ジャイアンツに出逢えるのを楽しみにしている。