ベースボール白書

野球観戦、野球考察。活字ベースボールを届けます。『WBC 球春のマイアミ』をリリースしました。

ラグザス 侍ジャパンシリーズ2025 日本 vs オランダ〜再始動、プレミアの先へ

ラグザス 侍ジャパンシリーズ2025 日本 vs オランダ〜再始動、プレミアの先へ

世の中で失敗しない人間がひとりだけいる。なにもしない人だ。

アインシュタインの言葉が井端弘和を思い起こさせる。

山のようにじっと耐え、川のように流れ続ける。誰より動き回り、常に何かを始める。そこには失敗も生まれ、批判にもさらされる。それでも走り直す。何度でも。

冷静な熱狂。それが井端監督。

プレミア12で味わった屈辱。その傷跡が、今の侍ジャパンを突き動かす。

アメフトも、サッカーも、バスケットも、自らボールを持って敵陣に進む。だが、野球は違う。ピッチャーがボールを投げるまで待ち、バットで弾き返す。その衝突に弾力が生まれる。

野球とは、人生の逆境を打ち返すスポーツ。
ピッチャーは、逆境のさらに逆境を乗り越えるスポーツ。マウンドは、山を乗り越えるためにある。

2025年の春、侍ジャパンは立ち上がる。場所は、大阪ドーム(京セラドーム大阪)

童夢—そこは、野球少年の夢が育つ場所。

プレミア12は、悪天候でも押し切った。

「世界がどこまで俺たちについて来れるか」

そう言わんばかりの気概。同じ熱が、今の侍ジャパンには必要だ。

Don't Stop The Party。

【日程】

2025年3月5日(水)19:00 日本 vs オランダ @京セラドーム大阪
2025年3月6日(木)18:30 日本 vs オランダ @京セラドーム大阪

侍ジャパンメンバー

来年3月、WBCの主役はメジャーリーガーたちだ。他にも村上宗隆、岡本和真など、2023年のWBCを経験した選手たちの連続出場は確実視される。今回の強化試合で選ばれたメンバーの多くは、2027年のプレミア16へ向けた選考となる。

侍ジャパンが雪辱を果たすための戦力。その中で何人がWBCの切符を掴むのか。
未来のレギュラーを決める戦いは、すでに始まっている。

投手

  • 宮城大弥(23、オリックス)
  • 曽谷龍平(24、オリックス)※初
  • 種市篤暉(26、ロッテ)
  • 常廣羽也斗(23、広島)※初
  • 斎藤友貴哉(30、日本ハム)※初
  • 橋本侑樹(27、中日)※初
  • 大津亮介(26、ソフトバンク)※初
  • 河野竜生(26、日本ハム)※初
  • 塹江敦哉(27、広島)※初
  • 杉山一樹(27、ソフトバンク)※初
  • 今井達也(26、西武)
  • 石井大智(27、阪神)※初

注目:常廣羽也斗

プレミア12 侍ジャパン宮崎合宿、キャンプレポート

注目は青学出身、広島の常廣羽也斗(つねひろ はやと)。大学時代から注目していたピッチャーであり、将来、侍ジャパンのエースにもなれる逸材。

ストレートは軽やかに、鋭く空を切る。その球質は、かつての藤川球児を思わせる。

今シーズンの活躍次第ではWBC選出もあり得るが、常廣羽也斗が見据えるのは、再来年のプレミア16。

注目:今井達也

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本来ならプレミア12の決勝戦で先発して欲しかった投手。2023年11月19日、東京ドーム。アジアプロ野球チャンピオンシップ決勝戦。韓国の四番ノ・シファンに投げた156キロは今も忘れない。今回の強化試合はWBCへの階段を駆け上がるための足場。再び豪速球を見せてほしい。

ピッチャーの球速は不思議なもので、159キロだと「あと1キロで大台に乗るのに」と悔しさが滲み、158キロだと素直にすごいと思える。 

わずか1の違いが、興奮と焦燥を生み出す。今井達也は野球の面白さを体現してくれる。

注目:宮城大弥

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親友の佐々木朗が海を渡り、日本を背負うサウスポー。ボール先行で「コントロール」は悪いが、決めるべきときに狙ったコースに投げる「コマンド」で打ち取る。佐々木朗希も化け物だが、宮城も十分に怪物。

強化試合、初戦の先発が決まった。2023年のWBCメンバーであり、押しも押されもせぬオリックスのエース。宮城大弥の目標はWBC選出ではない。第二先発だった前回大会から、今度は先発ローテーションに入ること。

大谷翔平、山本由伸、菊池雄星、佐々木朗希、今永昇太。メジャー組だけで5人のスターターが埋まる。ダルビッシュ有も加わるかもしれない。国内組も戸郷翔征、高橋宏斗、才木浩人、伊藤大海と錚々たる顔ぶれが揃う。若手の台頭もある。山下舜平大はオリックスの後輩でありながら、代表候補として追いかけてくる。宮城にとって、この強化試合は「アピールの場」ではない。

今、宮城大弥の中には、来年、同じユニフォームを着る未来の自分がいる。今日のマウンドでどんなピッチングをするのか。宮城大弥の試合が始まる。

捕手

  • 岸田行倫(28、巨人)※初
  • 山本祐大(26、DeNA)
  • 海野隆司(27、ソフトバンク)※初

注目:山本祐大

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本来ならプレミア12の正捕手だった男。WBCで坂倉将吾とスタメンマスクを争うべきキャッチャー。去年の強化試合にも出場し、シーズンで爆発。今年はどんなパフォーマンスを見せるか。井端監督が「どの投手も山本祐大がキャッチャーだと気持ちよさそうに投げる」と絶賛。投手を輝かせる捕手。その手のひらで、どんなゲームを演出するのか。

内野手

  • 大山悠輔(30、阪神)
  • 吉川尚輝(30、巨人)
  • 森敬斗(23、DeNA)※初
  • 長岡秀樹(23、ヤクルト)※初
  • 佐藤輝明(25、阪神)
  • 太田椋(24、オリックス) ※初
  • 廣瀨隆太(23、ソフトバンク)※初
  • 矢野雅哉(26、広島)※初

注目:佐藤輝明

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佐藤輝明。見た目はターミネーター。いや、外見だけはない。日本人離れしたパワーを持ち、大谷翔平に迫るポテンシャルを秘める。本来なら、昨年のプレミア12で日本の4番を打つべき存在だった。まだその才能は開花していない。

覚醒はいつか。バットが火を噴く瞬間を、誰もが待ち望んでいる。

怪物は、まだ牙を剥いていない。

注目:矢野雅哉

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矢野雅哉。昨年のプレミア12、宮崎合宿中。日南の万福スタジアムで、4時間バットを振り続けた姿がTwitterでバズった。ありがとう。

日本一の守備。軽やかに、獰猛に、グラウンドを支配する。

目の前には絶対的な壁、源田壮亮。だが、矢野には狂気じみた執念がある。

勝ち取るのか、押し除けるのか。答えは、バットの先にある。

外野手

  • 髙部瑛斗(27、ロッテ)※初
  • 水谷瞬(23、日本ハム)※初
  • 細川成也(26、中日)※初
  • 梶原昂希(25、DeNA)※初
  • 万波中正(24、日本ハム)

注目:水谷瞬

水谷瞬

水谷瞬。エスコンフィールドで見せた先頭打者ホームラン。あの瞬間、確かにスターダムへの扉を叩いた。

細川成也と同じ現役ドラフト組。遅れてきた才能ではない。やっと舞台が整っただけ。

プレミア12に選ばれるべき選手だった。だが、チャンスは待つものではなく、奪うもの。バットを振るたびに証明する。遅すぎるなんてことはない、と。

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3月5日(水)オランダ戦

2025年の侍ジャパンには、かつての戦士たちが帰ってきた。打撃コーチに松田宣浩、投手コーチに能見篤史。ともにWBCの悔しさを知る男たち。

2013年の死闘から干支が一周し、野球界は大きく変わった。国際大会に懸ける熱量も、国民の期待も、すべてが桁違いになっている。

来年のWBCを見据える者もいれば、再来年のプレミア16に向けて歩を進める者もいる。今を生きる者と、未来を見据える者。そのグラデーションが、井端監督の描く侍ジャパンの形。

「ホームラン」。井端監督が掲げたテーマに、先頭打者が応えた。水谷瞬が放った打球は、ドームの夜を切り裂き、スタンドへと消えていった。

この日、海の向こうでは佐々木朗希が快投を見せた。その大親友、宮城大弥も負けていない。前日、ユニホームを忘れた気の緩みとは裏腹に、マウンドでは一切の隙がなかった。先頭打者に投じた150キロの直球。糸を引くように、キャッチャーミットに吸い込まれる。3イニング連続の三者凡退。40球で4奪三振。宮城のボールには、他の投手と違う色があった。まだシーズンすら始まっていないが、WBCでは左のエースもあり得る。

そして、6回から4番手で登板したのが今井達也。肘を下げた新フォームから、158キロの速球を投じた。格の違いを見せつけるように。野球場にはいなかったので、ハッキリとわからないが、味方も相手のベンチも、今井の投球に空気が変わったのではないか。それほど支配的だった。

ホームランの放物線。ファストボールの弾道。どれもが侍ジャパンの未来を指し示している。

「ホームラン」ともう一つのテーマ、「左のリリーフ」も塹江敦哉、橋本侑樹(ヒヤッとしたが)、期待に応えた。

さらには、井端監督がリードを絶賛する山本祐大も初めて組む投手でも上手くリード。昨年3月に行われた侍ジャパンvs.欧州代表でも、大学生の金丸夢斗、中村優斗らをリードし、継投の完全試合を達成した。国際舞台での適応力は、チームにとって大きな武器になりそうだ。坂倉将吾も、うかうかしていられない。

気がつけば、試合の流れはいつもの侍ジャパン。派手さはないが、着実に点差を広げ、相手に1点も許さない。許したのは1安打のみ。あわや、昨年の完全試合に続き、ノーヒットノーランだった。

横綱相撲の野球。パワー野球とスモールベースボールの二刀流。WBCでは、どんなグラデーションを描くか。

侍ジャパンの戦いは始まったばかり。

その足元には、希望の轍が続いている。

3月6日(木)オランダ戦

2025年3月6日。ちょうど1年後、この日、ワールド・ベースボール・クラシックが開幕する。

井端監督が掲げる野球はブレない。それは、相手がどんな強豪であろうと、どんな場面であろうと、一切変わることがない。それが真に試されるのは、世界最強の敵と対したときだ。そう信じさせるような試合が、昨日、そして今日と続いた。

オランダ代表との2連戦。既視感を覚えた人がいたなら、錯覚ではない。ちょうど1年前の強化試合、侍ジャパンは同じような展開を演じた。今日の試合も、5回に訪れた象徴的な攻撃、このチームの野球の本質を映し出した。

フォアボールで出塁し、盗塁を決め、相手をかき回す。シンプルにして、強い。佐藤輝明の犠牲フライは、アジアチャンピオンシップの決勝戦で見せたそれと変わらず、ここ一番で確実に点を取る姿勢を示した。そして、大山悠輔の放った打球は、迷うことなくスタンドに吸い込まれた。地元の大阪で猛虎爆発。それが勢いを生んだ。オランダの戦意と集中力を削る。王者の野球、王道の野球、帝王の野球。

打者一巡、7点のビッグイニング。理想的すぎる点の取り方だった。ベンチに目をやると、井端監督と熱男が笑っている。

8回2アウトまで、許した走者はゼロ。完全試合の期待が高まる中で、ボテボテの内野安打が生まれた。結果として、2夜連続の1安打完封。9対0の圧勝。2試合続けてエラーもゼロ。侍ジャパンの野球が、確かに試合に刻まれていた。

MVPを挙げるなら水谷瞬。果たしてWBCに選ばれるか?少なくとも再来年のプレミア16では侍ジャパンの中心にいるかもしれない。

一方、オランダ代表はどうだったか。

はるばるヨーロッパから来日し、強化試合の相手を務めてくれた。感謝したい。しかし、2試合を終えて、見せ場はまったくなかった。シーズン前の準備段階であり、移動の疲れもある。それでも、正直なところ、もう少し気を引き締めてほしかった。この内容なら、侍ジャパンにはチェコ代表との試合を組んでほしかった。

かつて、日本とオランダはWBCや強化試合で互いに鎬を削った。その記憶を持つ者にとって、今のオランダ代表は、近年の飛躍した世界野球の進化に取り残されたように見える。それならば、伸びしろだらけのチェコ代表と対戦する方が、互いの成長につながるはずだ。

3月の強化試合は、伝統として定着させるべき。試合数を増やしてもいい。2試合だと1イニングしか出られない選手もいて窮屈な起用になる。せっかく召集したのだから、あと1試合増やして、余裕のあるオーダーが見たい。日本代表を観る機会の少ないファンも喜ぶ。

限られた貴重な機会だからこそ、より有意義な時間を築いてほしいと願う。

次に侍ジャパンの勇姿を見るのは秋の強化試合(開催未定)。おそらく相手はWBCでも対戦するオーストラリア代表。もしくはチェコ代表かもしれない。

そこにはWBCに選ばれるメンバーも顔を揃える。その戦力を率いる井端監督が、どんな野球を見せてくれるか。これからペナントレースが始まるところだが、今から秋が待ちきれない。

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