プレミア12の決勝戦が終わった翌朝、神宮球場へ向かった。明治神宮大会を観るためだ。立命館大学の後輩・桜井俊貴が投げて以来、9年ぶりの観戦。きっと井端監督も来ていると思ったが予想どおりだった。
明治神宮野球大会
明治神宮野球大会は、毎年11月に神宮球場のみで開催されるトーナメント大会。主催は球場のオーナーである明治神宮、そして日本学生野球協会。1970年(昭和45年)に明治神宮鎮座50年を記念して始まった。当時は大学のみの15チームで初代王者は東海大学。第4回大会から高校野球も加わり、高校と大学の日本一を同日に同球場で決める特殊な大会が生まれた。
横浜高校vs.広島商業
高校は全国の秋季地区大会で優勝した10チームによるトーナメント。青空に響く金属バットの打球音、DHなしの野球。懐かしさと未来が漂う。決勝戦は横浜高校vs.広島商業。横浜は27年前、松坂大輔を擁して初優勝。そして同じ高校で同じ怪物が現れた。
1年生・織田翔希。4日前の明徳義塾戦で衝撃の完封デビュー。2日前の準決勝・東洋大姫路戦でも4イニングを投げている。そして映えある優勝決定戦で先発を託された。
初回を三者三振。投球フォームは違うが、マウンド上の雰囲気はダルビッシュ有が出てきたときを思い出す。それほどの存在感と威圧感。この投手がマウンドに上がれば打てないと、試合を支配するオーラを持っている。寒さと疲労もあってか球速は142キロちょっとだが、伸びがすごい。甲子園、ワールドカップの決勝戦で投げていてもおかしくないほど。とんでもない怪物だ。
スーパー1年生は9回1アウトまで108球の熱投。また日本の野球界に至宝が現れた。中には1年生でピタリと成長を止めてしまう黄金の卵もいる。そうならないよう、将来の侍ジャパンのエースにもなってほしい。
横浜高校が4-3で優勝。最初は大敗の雰囲気もあった広島商業の粘りも凄かった。来年の甲子園で両チームを再び観たい。
青山学院vs.創価大学
明治神宮野球大会の大学部門は11校によるトーナメント。各大学野球連盟の秋季リーグ戦優勝校、もしくは各地域でのリーグ戦優勝校の中から選ばれた大学が出場する。DHがない。木製バット。最もクラシカルな野球が観られる。
13時10分のプレイボールの前に2024年最後の球場メシ。神宮球場の「かき揚げそば」750円。関東風の醤油味。寒空の五臓六腑に沁みわたる。
初めて買う神宮球場オリジナル珈琲。球場創設時の1926年(大正15年)に日本で流行していたブラジルとジャワ豆のブレンド。酸味と苦味のバランスが優れて高級な味わい。こんなクオリティの高い珈琲が野球場で飲めるとは。
創価大は4年生のエースの田代涼太。一方の青学のスタメンに4年生はなし。青学は去年、決勝戦で慶應に敗れている。部員数44人。先発とキャッチャー、4番は智辯和歌山、他にも平安高校、大阪桐蔭など主に西の高校で構成される。関西から上京した若者が東京で覚醒する。
初回から相手エースを攻め、満塁の場面で5番・中田達也。6月の全日本選手権では8番レフトで首位打者を獲得。秋からクリーンアップに駆け上がってきた。中田は一塁へ激走し、アウトになっても外野までオーバーランする気合いがすごい選手。
その中田が、まさかのグランドスラムで先制。昨日の陳傑憲(チェン・ジェシェン)のようなバッティング。本人も「僕は持っている」と斎藤佑樹ばりのコメント。初回からのお祭り騒ぎ。やはり神宮球場は大学野球だと感じさせてくれた。
青学の先発は中西聖輝。下村海翔の背番号11を受け継ぐ右のエース。6月の全日本選手権でも決勝戦で先発した。
6月は4イニングで交代したが、この日はエースのピッチングを披露。初回に1点を返されるが、それ以降はキレのある直球とスライダーで7回まで長打なし。王者の風格を見せる。
そして青学にまたもや逸材。4番・青山達史。
ドライチの西川史礁に近い貫禄。これで1年生なのが信じ難い。日本野球はホープが金太郎飴のように出てくる。
3打数1安打だったが、追加点となる三塁打を放った。4年生になったとき、どんなスイングをするのか楽しみだ。
青学は球威が落ちている中西を8回も継続。エース番号を背負うからには、ここを乗り越えて欲しいという想いか。
来年のドラ1候補とされる立石正広にタイムリーヒット。
創価大も追い上げを見せる。それでも中西は後続を抑え最少失点で切り抜けた。
9回の中西の打席で西川史礁の登場。大学最後の打席。
やはり振りは凄かったが最後は際どいボールを見逃しの三振。これは仕方ない。バックネット裏からはボール球に見えた。
9回は2年生の鈴木泰成がマウンド。これも6月と同じ。187センチの長身。
6月もピンチを招いたように、この日もタイムリーを打たれる。今後はどんなピッチャーに育つのか。
最後はセカンドゴロに打ち取り、7-3の優勝。青学の未来を照らすように2年生バッテリーで締めた。
6月と同じ歓喜の輪。最強青学は大学4冠達成。最高の令和6年の野球納め。
西川史礁はWBCの4番になるまで駆け上がってほしい。
優勝旗を受け取る主将の佐々木泰。優勝インタビューでは後輩に10冠を達成するよう煽った。
本当に10冠を達成するのではないかと感じさせる強さと若さ。青学の栄冠はどこまでも続く。
全日本大学野球選手権2024
昨年の全日本大学野球選手権
東京ドームの全日本大学野球選手権
秋の明治神宮大会
侍ジャパン大学代表vs.高校代表
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