ベースボール白書

野球観戦、野球考察。活字ベースボールを届けます。『WBC 球春のマイアミ』をリリースしました。

2026年WBC侍ジャパン代表メンバー:史上最強の日本代表、球春のマイアミ再び

2026年、WBCは20年の節目を迎える。侍ジャパンの"全進野球"により神話を創った3年前を超え、その先へ行けるか。再現か、更新か。その静かな緊張が、冬と春のはざまに静かに漂っている。

今大会、侍ジャパンは30人で世界の頂点に挑む。守るための連覇ではない。奪い返し、奪い続けるための連覇だ。短期決戦は、強さの総量だけでは勝てない。1球のテンポ、1秒の判断、1打の意味。細部が国の運命を決める。

2026年WBC侍ジャパン代表メンバー〜球春のマイアミ再び

20年目のWBCは、過去を祝う記念大会ではない。次の10年の基準を作る大会だ。勝てば連覇以上の意味を持つ。その期待が、この冬の胸の奥で燃えている。

ここから紹介する30人は、その未来へ踏み出すための足音だ。誰がヒーローになるかではない。どんな“日本の勝ち方”を、もう一度世界に刻むか。役者は揃った。あとは、どこで誰が火をつけるかだ。

※写真は主に侍ジャパン公式サイトから引用

DH

大谷翔平(背番号16)

  • 出身地:岩手県水沢市(現:奥州市)
  • 生年月日:1994年7月5日(31歳)
  • 身長:193 cm
  • 投打:右投左打
  • 所属:ロサンゼルス・ドジャース
  • 経歴:花巻東
  • プロ入り:2012年 ドラフト1位(日本ハム)
  • 代表歴:プレミア12(2015年)、WBC(2023年)

侍ジャパンのロッカールームに、今回も“宇宙一”がいる。日本人というより、宇宙人。

前回大会のMVP。二刀流として世界を制し、7試合すべてで安打を記録した。安打数10はノーラン・アレナド、ムーキー・ベッツ、メキシコのジョーイ・メネセスと並んで大会トップ。

投手としても別次元だった。3試合に登板し、2勝1セーブ、防御率1.86。奪三振11はキューバのロメロ(13)、山本由伸(12)に次ぐ全体3位。さらに9回2/3イニングの投球回は全体トップ。マウンドでも主役だった。

二刀流をこなすだけでも異常だが、投手と指名打者の両部門でベストナインに選出という異次元。

あの大会は「大谷の、大谷による、大谷のためのWBC」今後、二度と破られないパフォーマンスと記録を打ち立てた。

そして今大会。二刀流起用は所属するドジャースから禁じられた。それでも、大谷翔平は帰ってくる。自ら「今が全盛期」と語る打球と、圧倒的な存在感を携えて。

数々の常識と“不可能”を打ち破ってきた男が、次に挑むのはジンクスだ。過去5回のWBCで、「前年のMLBシーズンMVP受賞者は優勝できない」という壁。

3年連続MVPのユニコーンが、その呪いに風穴を開ける。背番号16が、再び新たな伝説を刻む。

投手

今大会の侍ジャパン投手陣は、20カ国の中でも最少クラスとなる登録14人で戦う。人数が少ないということは、先発と救援の境界が薄くなり、「想定外」を誰かが飲み込む前提の布陣になる。

さらに国際舞台では、慣れない球場以上に、ピッチクロックへの対応が勝敗を左右する。テンポを保てる投手は強くなり、リズムを乱した投手は球威があっても崩れる。

今までと決定的に違うのは、ワールドシリーズMVPという“世界一の証明”を持つ投手がいることだ。その存在は、相手にとっては試合前からの圧であり、味方にとっては継投の軸になる安心だ。少数精鋭と時計、そして世界一の経験。この三つを味方にできたとき、連覇の道筋が見えてくる。

山本由伸(背番号18)

  • 出身地:岡山県備前市
  • 生年月日:1998年8月17日(27歳)
  • 身長:177 cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:ロサンゼルス・ドジャース
  • 経歴: 都城高校
  • プロ入り: 2016年 ドラフト4位(オリックス)
  • 代表歴:プレミア12(2019年)、WBC(2023年)

侍ジャパンのマウンドに、今回も“優勝請負人”が立つ。出場した国際大会は、すべて最後に栄冠を抱えて終わってき背番号18。エースという呼び名は、山本のために残されている。

大谷翔平という打者の最高峰が同じユニホームを着る。その隣に、投手の最高峰がいる。両輪が揃ってしまった国が、短期決戦でどうなるか。相手国は、試合前から胃が重い。

背番号18は、松坂大輔がWBCで刻んだ“エースの物語”を継ぐ番号でもある。数字も美しいが、何より美しいのは「18番は勝つ」という空気だ。背番号には、そういう重さが宿る。

今大会はワールドシリーズMVPの称号を携えて凱旋。それを背負って平然と投げられるのが山本由伸だ。大舞台で強くなる投手はいる。だが山本は、大舞台のほうを小さく見せる。

菊池雄星(背番号17)

  • 出身地: 岩手県盛岡市
  • 生年月日:1991年6月17日(34歳)
  • 身長:183 cm
  • 投打:左投左打
  • 所属:ロサンゼルス・エンゼルス
  • 経歴:花巻東高校
  • プロ入り: 2009年 ドラフト1位(西武)
  • 代表歴:初代表

侍ジャパンに、遅れてきた“悲願”がある。菊池雄星、34歳。意外にも日の丸を背負うのは、プレミア12も含めて今回が初めてだ。メイド・イン・ジャパンが誇る最強サウスポーが、オールド・ルーキーとして最初で最後WBCのWBCに挑む。

「野球は冬のスポーツ」と語るように、宮崎合宿に万全のコンディションで入ってきたのは、有言実行だった。準備の仕方が、すでに代表仕様。

左腕は、チームにとって“角度”だ。右打者の内角に食い込み、左打者の外へ逃げていく。対戦相手の打線にとって、視界が一枚ずれる。しかも今大会、MLB投手で唯一のサウスポーという希少性がある。短期決戦は、希少性がそのまま価値になる。

菊池の強みは、腕だけではない。代表への意気込みに、野球界全体の発展への視線が混ざっている。勝つためだけの火ではなく、灯し続けるための火種を持っている。こういう選手が一人いると、チームの温度が下がらない。

背番号17が担うのは、左の一枚札ではない。一次ラウンドでも、決勝トーナメントの出口でも躍動する。日の丸で投げるその一球目の音が待ち遠しい。

菅野智之(背番号19)

  • 出身地:神奈川県相模原市
  • 生年月日:1989年10月11日(36歳)
  • 身長:185cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:コロラド・ロッキーズ
  • 経歴:東海大相模高校→東海大学
  • プロ入り: 2012年 ドラフト1位(巨人)
  • 代表歴:プレミア12(2015年)、WBC(2017年)

ついに、この男がWBCに帰ってきた。前回の11番ではない。ジャイアンツ時代の原点、背番号19で日の丸を背負う。

侍ジャパン史に残るベストピッチを挙げるなら、2006年の韓国戦での上原浩治と、2017年のアメリカ戦での菅野智之。前日に原辰徳が訪れ、「腕がちぎれてでもやれ」と火を入れた言葉どおり、強力打線を相手に6回3安打6奪三振、自責点0に抑えた。

最後のWBCとなる今大会は、メジャー組で誰よりも早く宮崎合宿に合流。気持ちが先に来る投手は多いが、準備が先に来る投手は多くない。火は言葉で吹くのではなく、マウンドで吹く。

背番号19が、WBCで再び記憶に残る試合を作る。

大勢(背番号15)

  • 出身地:兵庫県多可郡八千代町
  • 生年月日:1999年6月29日(26歳)
  • 身長:183cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:読売ジャイアンツ
  • 経歴:兵庫県立西脇工業高校→関西国際大学
  • プロ入り:2021年ドラフト1位(巨人)
  • 代表歴:WBC(2023年)、プレミア12(2024年)

石井大智、平良海馬、そして松井裕樹と3人の辞退者を経て、侍ジャパンの守護神へ。負の連鎖をすべて断ち切るのが大勢だ。

前回WBCでは、3イニング以上投げた投手の中で唯一の無失点。短期決戦で、この数字はただの記録ではない。「終盤を預けても試合が壊れない」という証明になる。勝ち切るチームが必ず持っているのは、打線の勢いより、最後の安定だ。

2024年プレミア12の決勝。0-4という絶望的な状況で最終回に登板。普通なら「消化試合の1イニング」になりかねない場面で、チームの奮起を促すような威風堂々の投球を見せた。勝敗だけでは測れない価値があるのが大勢。守護神は、スコアを守るだけでなく、空気を守る役でもある。

大勢は火消しではない。火を消すのではなく、火を持って立つ。背中で“最後は任せろ”と言える投手がいると、打線は1点を取りに行ける。侍ジャパンの優勝の道筋は、9回の大勢から逆算されていく。

伊藤大海(背番号14)

  • 出身地:北海道茅部郡鹿部町
  • 生年月日:1997年8月31日(28歳)
  • 身長:176cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:日本ハムファイターズ
  • 経歴:苫小牧高校→駒澤大学→苫小牧駒澤大学
  • プロ入り:2020年 ドラフト1位(日本ハム)
  • 代表歴:WBC(2023年)

沢村賞右腕が、満を持してWBCに挑む。前回大会では準々決勝で大谷翔平が作ったピンチを防ぎ、大会を通じて被安打0、与四死球0の“完全”をやってのけた。

本来なら先発の柱に据えたいが、国際大会は、予定表どおりに進まない。流れが曲がり、継投の順番が崩れ、出番がいつ来るかわからなくなる。ピッチング・カオス。そういう混乱を、最も嫌がらずに引き受けられるのが伊藤大海だ。

ランナーを背負った場面でも、表情が動かない。むしろ状況が荒れるほど、投球が締まる。先発でも、中継ぎでも、抑えでも成立する「何でも屋」。器用というより、適応力が異常に高い。ブルペンに置けば“いざという時の柱”になる。

力めば力むほど球が走る、Mr.ホワイトスモーク。侍ジャパン連覇の鍵は、背番号14が握っている。

宮城大弥(背番号13)

  • 出身地:沖縄県宜野湾市
  • 生年月日:2001年8月25日(24歳)
  • 身長:171cm
  • 投打:左投左打
  • 所属:オリックス・バファローズ
  • 経歴:興南高校
  • プロ入り:2019年 ドラフト1位(オリックス)
  • 代表歴:WBC(2023年)

親友の佐々木朗希がドジャースの事情で出場を抑制されるなか、日本が抱える貴重なサウスポーが宮城大弥だ。左が一人いるかどうかで、短期決戦の設計図は変わる。相手打線の並びが変わり、継投の扉が一枚増える。

制球という言葉で測ると、ボール先行が目立つ場面もある。だが宮城の武器は「コントロール」ではなく「コマンド」だ。決めるべき瞬間に、狙うべきコースへ投げ込む。無駄に整っていないのに、要所が崩れない。佐々木朗希が令和の怪物なら、宮城も十分に化け物である。

日の丸の経験値も高い。侍ジャパンU-15、U-18。代表の空気に慣れているというより、代表の空気で落ち着くタイプだ。身長171センチの身体から、投球はアグレッシブに飛び出す。遊び球を使わず、三球で仕留めにいく。三球勝負で三振を獲りにいくのは、球威だけではできない。覚悟と読みが必要になる。

捕手のサインを確認すると、首を横に振らないまま投球モーションに入る。あの“即決”がテンポを生む。テンポの良さは上原浩治を思わせる。

背番号13は、左腕の希少価値では終わらない。勝負どころで、迷わずストライクゾーンに踏み込める左。WBCの舞台で、その一歩が試合を決める。

隅田知一郎(背番号22)

  • 出身地:長崎県大村市
  • 生年月日:1999年8月20日(26歳)
  • 身長:177cm
  • 投打:左投左打
  • 所属:西武ライオンズ
  • 経歴:長崎県立波佐見高校→西日本工業大学
  • プロ入り:2021年 ドラフト1位(西武)
  • 代表歴:アジアCS(2023年)、プレミア12(2024年)

石井大智の負傷により、念願のWBCユニホームに袖を通した隅田知一郎。代表の扉は、いつも予定どおりには開かない。だが開いた瞬間に、空気を変えられる左腕がいる。

アジアCSでは韓国を相手に7回77球、7奪三振。完璧に近い内容で大会ベストナインに選ばれた。球数が少ないのに、奪三振が多い。ゾーンで勝負しながら相手のバットを空振りさせている。国際試合で頼れる形だ。

プレミア12ではリリーフで4試合に登板し、防御率2.25。8イニングで16奪三振という数字が示すのは、短いイニングでギアを上げられるということ。先発もできて、リリーフでも戦える。便利屋という言葉で片づけるには、武器が鋭い。

とりわけ印象深いのは、プレミア12決勝。戸郷翔征のあとを継ぎ、台湾打線を無失点に抑えた場面。決勝戦の継投は、空気に飲まれない胆力が要る。そこでゼロを並べたことが、今回の抜擢の説得力になっている。

背番号22は、左の“保険”ではなく、勝負の選択肢だ。先発の入口でも、リリーフの出口でも、必要な場面に差し込める。短期決戦は、こういう一枚が最後に効く。

金丸夢斗(背番号24)

  • 出身地: 兵庫県神戸市
  • 生年月日:2003年2月1日(23歳)
  • 身長:177cm
  • 投打:左投左打
  • 所属:中日ドラゴンズ
  • 経歴:神港橘高校→関西大学
  • プロ入り:2024年 ドラフト1位(中日)
  • 代表歴:初代表

1年目を終えたばかりのヤング・ドラゴンが、WBCへ。名前のとおり、夢を掴み、侍ジャパンの歴史を塗り替えた。松井裕樹の負傷という痛手を受けて合流したラストサムライ。穴埋めではない。

井端監督が大学時代からトップチームに呼び、手元に置いてきた。秘蔵っ子という言葉は、甘やかしではなく“見込み”だ。国際大会で通用する要素を、早い段階から見抜かれていた。

2024年3月の欧州代表との親善試合では、大学生で先発を任され、2イニングを三者凡退。継投による完全試合の口火を切った。

大舞台でもコントロールが乱れにくい。さらに、今どき珍しいワインドアップで投げる。合理化の時代に、あえて“間”を作るフォームは、それだけで打者の呼吸をずらす。

背番号24は、経験不足を恐れるより、伸びしろを武器にする。短期決戦は、想定外の一人が流れを変える。金丸夢斗が、その「想定外」になれるかどうか。侍ジャパンの左の未来が、この大会で一段濃くなる。

種市 篤暉(背番号26)

  • 出身地:青森県三沢市
  • 生年月日:1998年9月7日(27歳)
  • 身長:183cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:千葉ロッテマリーンズ
  • 経歴:八戸工大第一高校
  • プロ入り:2016年 ドラフト6位(ロッテ)
  • 代表歴:初代表

前回大会の今永昇太のように、第2先発からサプライズでの決勝戦でも先発もあり得る種市篤暉。短期決戦は、そういう跳躍が起きる。

井端監督が親善試合から招集し、手の内に入れてきた秘密兵器が、ついに本戦でヴェールを脱ぐ。ドラフト6位からここまで来た道のりが、そのまま強みになっている。見られていない時間が長い投手ほど、国際舞台では怖い。

最大の武器はフォークだ。落差が大きいだけではない。落ち方が一定ではない。打者の視界では「落ちる」とわかっていても、「どこへ落ちるか」が最後まで定まらない。初見での被打が生まれにくい球種というのは、国際大会で最も価値が高い。研究される前に、試合が終わる。

宮崎合宿でも他の投手から一目置かれ、壮行試合でも状態の良さを見せた。“隠し玉”が隠しきれていない。いい意味で、周囲にバレてきている。こういう投手は、ベンチの継投ボードに名前が書かれた瞬間、空気が少し変わる。

本戦でどんな抜擢を受けるのか。どこで投げるのか。何回からなのか。種市篤暉は、投球内容だけでなく「起用法そのもの」が注目される存在だ。短期決戦の鍵は、想定内ではなく想定外に落ちている。背番号26が、その当たりになる。

髙橋 宏斗(背番号28)

  • 出身地:愛知県尾張旭市
  • 生年月日:2002年8月9日(23歳)
  • 身長:186cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:中日ドラゴンズ
  • 経歴:中京大中京高校
  • プロ入り:2020年ドラフト1位(中日)
  • 代表歴:WBC(2023年)、プレミア12(2024年)

弱冠20歳で、マイク・トラウトを中心としたアメリカ打線をねじ伏せた決勝から3年。あの衝撃が、もう一度マウンドに帰ってくる。大舞台の記憶を持ったまま、今度は“実績”まで背負って戻ってくる。

この3年で積み上げたのは、気迫ではなく数字だ。杉下茂が持っていた球団記録の防御率に触れるシーズンを送り、さらにプロ野球記録の「被本塁打1」を樹立。山本由伸が持っていた被本塁打2のラインを塗り替えてみせた。ホームランを打たれない投手は、短期決戦で最も頼もしい。

プレミア12では、堂々エースとして登板。山場の韓国戦、アメリカ戦で勝利し、日の丸の推進力になってきた。強い相手に強い。その性質が、国際大会でいちばん信用できる。

役割は先発の柱だけではない。同い年の宮城とともに、重要なリリーフを担う。短いイニングで出力を上げ、流れを切り、試合の温度を変える。

背番号28は、成長の途中ではない。すでに一度、世界の中心で勝っている。あとは、その勝ち方を“再現”できるかどうか。再び衝撃を起こす準備は整っている。

藤平尚真(背番号46)

  • 出身地:千葉県富津市
  • 生年月日:1998年9月21日(27歳)
  • 身長:185cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:楽天イーグルス
  • 経歴:横浜高校
  • プロ入り:2016年 ドラフト1位(楽天)
  • 代表歴:プレミア12(2024年)

前回プレミア12、侍ジャパンの“顔”は藤平尚真だった。野手も投手も含めてMVP。リリーフは目立ちにくい。その常識を、登板した瞬間にひっくり返した。

起用のされ方が、もう答えだ。チーム最多の6試合に登板し、防御率0.00。6イニングで被安打4、12奪三振。短いイニングで、毎回きっちり空振りを奪って帰ってくる。チェコ戦、オーストラリア戦、韓国戦で積み上げた9者連続奪三振は圧巻で、球威の質感は藤川球児の“あの頃”にそっくり。

数字以上に記憶に残るのが、台湾での雨のキューバ戦だ。あの熱投は、侍ジャパン史に残るハイライトとなり、今後も語り継がれる。

平良海馬の負傷辞退で、ブルペンの設計は揺れた。逆に言えば、藤平の出番が増える可能性が上がった。試合の終盤を、火力で押し返せる投手が一枚増えるのは、短期決戦では楽しみになる。

背番号46は、穴を埋める存在ではない。流れを奪い返す存在だ。9回だけではなく、7回でも8回でも、勝負の芯を握れる。侍ジャパンの終盤は、この右腕の真っ直ぐから強くなる。

曽谷龍平(背番号47)

  • 出身地:奈良県生駒郡斑鳩町
  • 生年月日:2000年11月30日(25歳)
  • 身長:183cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:オリックス・バファローズ
  • 経歴:明桜高校→白鷗大学
  • プロ入り:2022年 ドラフト1位(オリックス)
  • 代表歴:初代表

侍ジャパン投手陣の中で、最も未知数で、最も爆発力を秘めた一枚が曽谷龍平だ。短期決戦で怖いのは、相手の準備を無力化する“初見殺し”。曽谷は、その匂いが濃い。

昨秋のオランダとの親善試合では、3回をパーフェクト。成績以上に価値があるのは、打者の反応だ。ゆったりしたフォームのスリークォーター。タイミングが合いにくい。その時点で、国際試合向きの条件を満たしている。

そして「ジェッスラ」こと、ジェットコースタースライダー。斜めに大きく曲がるあの軌道は、教科書のスライダーではない。打者は「曲がる」と知っていても、バットの置き場が決まらない。国際大会は研究の時間が短い。だから、こういう球が一番生きる。

起用法も、結果も、何もかもが未知数。短いイニングを任せるのか、左のワンポイントのように差し込むのか。答えが決まっていないからこそ、相手も対策を決められない。未知数は不安ではなく、武器になる。

背番号47は、予定表の外から試合を動かす可能性を持っている。短期決戦の面白さは、こういう一枚が当たりになる瞬間にある。

北山亘基(背番号57)

  • 出身地:京都府北桑田郡京北町
  • 生年月日:1999年4月10日(26歳)
  • 身長:182cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:日本ハムファイターズ
  • 経歴:京都成章高校→京都産業大学
  • プロ入り:2021年 ドラフト8位(日本ハム)
  • 代表歴:プレミア12(2024年)

ドラフト8位から侍ジャパンへ。野球は、順番どおりに夢が叶う競技ではない。最後のほうで呼ばれた名前が、最後に一番頼られることもある。北山亘基には、その逆転の匂いがある。

プレミア12の宮崎合宿では、キャッチボールの段階からブルペン練習に至るまで、誰よりも気合が伝わってきた。

武器は最速157キロの直球。速さだけではなく、押し込みの強さでストライクゾーンを制圧する。短いイニングなら出力を上げてねじ伏せられる。長いイニングでも、真っ直ぐを軸に試合を作れる。リリーフでも先発でも成立する。この“どっちもいける”が、国際大会ではそのまま価値になる。

WBCは予定表が崩れる大会だ。継投が早まる。延長がある。雨で流れる。流れが曲がる。そのたびに「誰が投げる」を現場で決め直すことになる。そういうとき、便利屋は最後の手段ではなく、最初に置きたい保険になる。

背番号57は、フル回転のための番号だ。目立つ登板より、効く登板。勝負の隙間に差し込まれて、試合の芯を折らない。北山亘基は、その仕事ができる。

松本 裕樹(背番号66)

WBC 球春のマイアミ2.0〜20年目の侍ジャパン

  • 出身地:神奈川県横浜市
  • 生年月日:1996年4月14日(29歳)
  • 身長:183cm
  • 投打:右投左打
  • 所属:福岡ソフトバンク・ホークス
  • 経歴:盛岡大学附属高校
  • プロ入り:2014年 ドラフト1位(ソフトバンク)
  • 代表歴:初代表

11年目で、ようやく“肩書き”が追いついた。昨季、自身初タイトルとなる最優秀中継ぎ投手。さらに日本シリーズでは胴上げ投手。中継ぎという仕事は、勝っても名前が残りにくい。だが最後の一球を投げた投手の名前だけは、残る。松本裕樹は、その場所まで辿り着いた。

武器は最速159キロの「ブチギレストレート」。速いだけではない。球が来るというより、襲ってくる。強い真っ直ぐの本質は、そこにある。

初代表という立場も、むしろ好材料だ。相手にとっては未知。短期決戦は研究の時間が短い。強い直球で押せる投手は、初見の価値が最大化される。ワンポイントでも、回またぎでも、火消しでも、最後の締めでも、出番が来た瞬間に空気が変わる。

背番号66は、静かなまま試合を終わらせる役ではない。終盤の勝負を、力でひっくり返せる役だ。侍ジャパンのブルペンに、もう一つ“純度の高い球威”が加わった。どこで投げても、見逃せない。

 
 

捕手

捕手は、侍ジャパンの“中枢神経”だ。今大会はピッチクロックの影響で、配球の迷いがそのまま失点に直結する。だからこそ、捕手の判断速度が価値になる。

そして鍵になるのが、今大会から本格的に重要度が増すピッチコムだ。サイン交換を短縮する装置ではなく、バッテリーの“共通言語”そのものになる。意思疎通が1秒遅れれば、投手のリズムが崩れる。1秒早ければ、相手の準備が間に合わない。

三人の捕手は、守備力だけでなく、配球の設計、投手のメンタル管理、そしてピッチコム運用まで含めて役割が分担される。短期決戦の勝敗は、マスクの内側で決まる。

坂本 誠志郎(背番号12)

  • 出身地:兵庫県養父郡養父町(現:養父市)
  • 生年月日:1993年11月10日(32歳)
  • 身長:176cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:阪神タイガース
  • 経歴:履正社高校→明治大学
  • プロ入り:2015年 ドラフト2位(阪神)
  • 代表歴:初代表

侍ジャパンの勝敗は、投手陣をどう“働かせるか”で決まる。その中枢に座るのが、背番号12・坂本誠志郎だ。大学の侍ジャパンでは主将を務め、チームをまとめ、試合を読む役目は、昔から似合ってきた。

2度のゴールデングラブ賞が示す守備力は、まず土台。坂本の価値は、守備の上に積み上がる“頭脳”にある。チームメイトが「配球の天才」と呼ぶインサイドワーク。ダルビッシュに「日本人選手で組みたいキャッチャー」と言わせたのも、肩やフレーミングだけではない。投手の持ち味を、最短で勝ちに変える能力だ。今回から導入されるピッチコムではバッテリーの呼吸が命。坂本は重要な役割を担う。短期決戦は、投手を揃えるだけでは勝てない。投手を迷わせず、相手打線を迷わせる捕手が必要になる。

そしてもう一つ、ムードメイク。捕手の声は、守備位置からベンチまで届く。空気が重くなる回、球場の風向きが変わる回、そこで一番先に顔を上げられるのはマスクの内側だ。侍ジャパンの優勝に不可欠なのは、優秀な捕手という“装備”ではない。優秀な捕手という“司令塔”である。背番号12が、その役を引き受ける。

若月健矢(背番号4)

  • 出身地:埼玉県加須市
  • 生年月日:1995年10月4日(30歳)
  • 身長:180cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:オリックス・バファローズ
  • 経歴:花咲徳栄高校
  • プロ入り:2013年 ドラフト3位(オリックス)
  • 代表歴:初代表

山本由伸の“相棒”として名前が出る捕手が、ついに日の丸をつける。若月健矢。侍ジャパンの扇の要は、坂本誠志郎との二枚看板になる。奇しくも、ともに関西のチーム、ともに初選出。新しい空気を入れながら、守備の芯は太くなる。

高校時代には18Uワールドカップ準優勝を経験。大舞台の匂いは、早い段階から嗅いでいる。

武器は、まず守備。2度のゴールデングラブ賞が示すとおり、土台が固い。強肩で盗塁を止め、ブロッキングで一球を守る。捕手の守備は地味だが、投手の呼吸を一番楽にする。投手が思い切って腕を振れるのは、後ろに確かな受け手がいるからだ。

そして若月の価値は、投手の“いつもの勝ち方”をそのまま持ち込めるところにある。山本由伸にとっては、配球の翻訳者であり、リズムの管理人でもある。短期決戦は、ちょっとしたズレが失点に直結する。そのズレを、最初から作らせない捕手が必要になる。

若月健矢のマスクは、投手陣の肩を軽くし、試合の終盤を静かに勝ちへ運ぶ。

中村悠平(背番号27)

  • 出身地:福井県大野市
  • 生年月日:1990年6月17日(35歳)
  • 身長:176cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:ヤクルト・スワローズ
  • 経歴:福井商業高校
  • プロ入り:2008年 ドラフト3位(ヤクルト)
  • 代表歴:WBC(2023年)、プレミア12(2015年)

捕手というポジションは、新陳代謝が激しい。侍ジャパンにおいて毎年、席が入れ替わる。その世界で、ムーチョがWBCに帰ってきた。

前回大会以降、所属球団では思うような成績を残せていない。だが代表は、シーズン成績の延長ではない。短期決戦で必要なのは「ゼロを作る技術」と「ゼロを守る胆力」。井端監督が「俺の精神的支柱になってくれ」と声をかけたのは伊達ではない。

前回WBCでは、甲斐拓也から正捕手の座を奪った。奪ったというより、試合の流れが中村悠平のマスクを選んだ。今回も、同じことが起きる可能性がある。正捕手争いは、名前の格で決まらない。侍ジャパンが勝ち切るための鍵を、野手最年長の捕手が持ち込む。

 
 

内野手

内野は、侍ジャパンの“エンジンルーム”だ。点を取る入口にもなり、失点を防ぐ壁にもなる。WBCの短期決戦では、派手な一発よりも、1つのゴロ処理、1つの進塁打、1つの四球が勝敗を決める。

攻撃では、上位から下位まで「つなぐ」と「仕留める」を同居させられるかが鍵になる。今大会の内野陣は、固定されたレギュラーというより、状況に応じて最適解を出せる“可変システム”だ。

守備で試合を整え、走塁で圧をかけ、得点圏で一打を出す。その全部が同時に求められる。

牧 秀悟(背番号2)

WBC 球春のマイアミ2.0〜20年目の侍ジャパン

  • 出身地:長野県中野市
  • 生年月日:1998年4月21日(27歳)
  • 身長:178cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:横浜DeNAベイスターズ
  • 経歴:松本第一高校→中央大学
  • プロ入り:2020年 ドラフト2位(DeNA)
  • 代表歴:WBC(2023年)、アジアCS(2023年)、プレミア12(2024年)

侍ジャパンの“過重労働者”と呼ぶなら、この男だ。2023年WBCからアジアCS、プレミア12まで、代表フル稼働。オフを削って国のユニフォームを着続け、それでもシーズンでは結果を落とさない。疲労が溜まるほど、打席の輪郭が濃くなる。

立ち位置も変わった。前回大会は山田哲人の控え。今回は正二塁手として、最初から真ん中に座る。二塁手は守備の要であり、攻撃の流れの要でもある。二遊間が落ち着くと、内野全体が落ち着く。

打順は6番、7番。得点圏で回ってくる“重要な場所”だ。上位が作ったチャンスを返すのはもちろん、下位に流れを渡す役も担う。目立つのは4番の一撃だが、勝ちを決めるのは6番の一撃だったりする。短期決戦は特にそうだ。

代表での一発は、すでに記憶に刻まれている。アジアCS決勝でのソロ本塁打。プレミア12のベネズエラ戦での満塁弾。空気が固まる瞬間に、空気ごと壊せる打者である。

背番号2は、脇役の番号ではない。推進力の番号だ。代表を回し続けてきた男が、今度はWBCの真ん中で回す。牧秀悟のバットは、今回のWBCでも必ずチームを前に進める。

小園海斗(背番号3)

  • 出身地:兵庫県宝塚市
  • 生年月日:2000年6月7日(25歳)
  • 身長:178cm
  • 投打:右投左打
  • 所属:広島カープ
  • 経歴:報徳学園高校
  • プロ入り:2018年ドラフト1位(広島)
  • 代表歴:アジアCS(2023年)、プレミア12(2024年)

国際大会に強すぎる男がいる。小園海斗。日本トップクラスの打撃センスが、短期決戦になるほど濃く出る。リーグ戦で「良い打者」は毎年生まれる。だが国際大会で「怖い打者」は、そう簡単には出てこない。

アジアCSでは打率.412。大会ベストナイン。プレミア12では、6試合連続安打に、2打席連続本塁打。さらに1999年以来の国際大会における日本人プロ野球選手の最多打点記録を更新した。数字が派手というより、打つタイミングが派手だ。点が欲しいところで、点を取ってしまう。これが国際大会で一番の才能になる。

シーズンでも首位打者を獲得し、日本を代表するバッターに躍進。見逃す球の見極め、逆方向への運び。派手さの下に、きちんとした設計がある。短期決戦で安定して打てる理由がそこにある。

ただ、守備位置の事情は厳しい。遊撃に源田、二塁に牧、三塁に岡本や村上。スタメンの枠は簡単に空かない。控え出場が基本になる可能性が高いが、控えに置いておくには打棒が強すぎる。終盤の代打、代走からの守備、連戦でのスタメン入れ替え。出番は必ず来る。そして出番が来たとき、一打で試合の流れを変えられる。

もう一つ、小園には“推進力”がある。ドームを揺らすスクワット応援は、ベンチの空気を前に押す。短期決戦は、空気が勝敗を連れてくることがある。侍ジャパンの攻撃は、この左のバットが“最後の一押し”になる。

牧原 大成(背番号5)

  • 出身地:福岡県浮羽郡田主丸町(現:久留米市)
  • 生年月日:1992年10月15日(33歳)
  • 身長:172cm
  • 投打:右投左打
  • 所属:福岡ソフトバンク・ホークス
  • 経歴:城北高校
  • プロ入り: 2010年 育成選手ドラフト5位(ホークス)
  • 代表歴:WBC(2023年)

背番号129の育成ドラフト5位から首位打者へ、そして侍ジャパンに立つ。こんな道のりは滅多にない。だが牧原大成は、名前の通り、滅多にないことを成し遂げた。

前回WBCでは、辞退した鈴木誠也の代替招集。行くかどうか悩んだ末に、世界一を経験した。代替という入口で入っても、最後は「必要な戦力」として残る。国際大会は、そういう選手の価値が跳ね上がる舞台でもある。

昨シーズンは、育成出身選手として史上初の首位打者。さらにゴールデングラブ賞。走れば100メートル5秒8の俊足。打って、守って、走る。全部が揃っている。

内野の全ポジションから外野までこなすユーティリティーは、国際大会で最強のバックアップになる。人数が限られる短期決戦では、一人で二人分、三人分の保険になれる選手が勝敗を左右する。守備固めで入れる。代走から入れる。ベンチの選択肢を増やせる選手は、そのまま監督の勝ち筋を増やす。

牧原大成がいるだけで、侍ジャパンは“事故”が起きにくくなる。その安定が、短期決戦では最大の武器になる。

源田 壮亮(背番号6)

  • 出身地:大分県大分市
  • 生年月日:1993年2月16日(33歳)
  • 身長:179 cm
  • 投打:右投左打
  • 所属:西武ライオンズ
  • 経歴:大分商業高校→愛知学院大学→トヨタ自動車
  • プロ入り: 2016年 ドラフト3位(西武)
  • 代表歴:プレミア12(19年、24年)、WBC(2023年)

野手の中で最もサバイバルなポジションが遊撃だ。打てるだけでは足りない。守れるだけでも足りない。試合の速さ、打球の速さ、球場の癖、その全部を一球ごとに処理する必要がある。その席に座るのが源田壮亮。

WBCは3月に行われる。この日程が判断を後押しする。球春はリセットの季節だ。前年の成績も、好不調も、一度ゼロに戻る。もし秋開催のプレミア12なら、シーズンの勢いを持ち込むため、別の選択肢も出てくる。だが3月の国際大会は違う。必要なのは勢いより、再現性と安定だ。

慣れない球場、芝の硬さ、風向き、照明。さらに相手は打球速度の上がるメジャーリーガーたち。内野の一歩目が遅れた瞬間に、試合が崩れる。だから源田がいる意味が大きい。守備で失点を防ぐというより、失点の“原因”を最初から作らせない。

前回大会も、源田の守備がなければ準決勝で終わっていた。派手なホームランの影に、派手ではないアウトがある。だが短期決戦は、そのアウトが重い。

源田壮亮は、遊撃という地雷原を平然と歩ける選手だ。攻撃の爆発力は他が担う。守備の確実性は源田が担う。その分業が成立すると、侍ジャパンは最後まで崩れない。背番号6が、勝ちの土台を静かに固める。

佐藤 輝明(背番号7)

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  • 出身地:兵庫県西宮市
  • 生年月日:1999年3月13日(26歳)
  • 身長:188cm
  • 投打:右投左打
  • 所属:阪神タイガース
  • 経歴:仁川学院高校→近畿大学
  • プロ入り:2020年 ドラフト1位(阪神)
  • 代表歴:アジアCS(2023年)

ターミネーター、ついに覚醒。シーズン40本塁打・100打点に、2桁盗塁まで積み上げた「40-100-10」。本塁打王と打点王の二冠。数字が派手なのは、派手な仕事をしているからだ。

セ・リーグMVPを引っ提げて、サトテルが侍ジャパンの打線に殴り込む。岡本和真、村上宗隆、吉田正尚。スタメン争いの相手がこの顔ぶれという事実が、今年の戦力の凄さを物語っている。佐藤輝明が入れない可能性があるチーム、というだけで異常である。

だがサトテルの強みは、ホームランの本数だけではない。アジアCS決勝で放った同点の犠牲フライ。あの一打が象徴するのは、力の使い方だ。必パワーがある打者は多いが、パワーを“勝ち”に変えられる打者は限られる。

WBCの大舞台で求められるのは、豪快な一撃と、地味な一打の両方だ。外野フライ一つで国の空気が変わる。佐藤輝明は、その空気を動かせる。しかも一振りで、試合の景色まで変えられる。

背番号7は、恐怖の番号になる。ターミネーターの覚醒が本物なら、相手バッテリーは“逃げ場”を失う。侍ジャパンの打線に、もう一つの破壊装置が加わった。

岡本和真(背番号25)

  • 出身地:奈良県五條市
  • 生年月日:1996年6月30日(29歳)
  • 身長:186cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:トロント・ブルージェイズ
  • 経歴:智弁学園高校
  • プロ入り:2014年ドラフト1位(巨人)
  • 代表歴:WBC(2023年)

前回大会の決勝戦、試合を動かした一振りがある。岡本和真のホームラン。あの一本が決勝点になり、優勝の景色を決めた。WBCの決勝で“勝ち越しの一撃”を打てる打者は、そういない。背番号25は、その経験を持ったまま帰ってくる。

侍ジャパンへの想いは強い。だからこそ、腰痛の悪化で辞退したプレミア12の悔しさが残る。その雪辱を、この大会で果たす。

岡本和真の凄さは、ホームランより二塁打にこだわっていること。豪快さを捨てたのではない。豪快さを、より確実な得点に変える工夫だ。2024年シーズンは有言実行で二塁打リーグ1位。飛ばす打者が、運ぶ打者にもなると怖い。

本塁打王3回、打点王2回。さらにゴールデングラブ賞3回。打つだけではなく、守る。四番の打者が三塁、一塁を堅く守れると、チームの設計が一段楽になる。守備の安定は、投手の安心に直結する。

前回よりパワーアップした岡本和真は、侍ジャパンの主砲の一人。大舞台の一打を知っている打者が、もう一度同じ場所に立つ。背番号25のスイングは、勝負の局面でチームを救う。

村上宗隆(背番号55)

村上宗隆(背番号55)

  • 出身地: 熊本県熊本市東区
  • 生年月日:2000年2月2日(26歳)
  • 身長:188cm
  • 投打:右投左打
  • 所属:シカゴ・ホワイトソックス
  • 経歴:九州学院高校
  • プロ入り:2017年 ドラフト1位(ヤクルト)
  • 代表歴:WBC(2023年)

日の丸への想いが、誰より強い。村上宗隆はそういう打者だ。今大会こそ、侍ジャパンの「4番」から、真の四番へ。肩書きではなく、内容でそこに座りにいく。

意志の強さは、言葉が先に立つ。プレミア12は骨折していても「出る」と言い切った。止められても出たいと言う。こういう選手は、短期決戦で空気を変える。勝負は技術で始まるが、最後は意志で押し切る場面がある。

前回大会では、準決勝と決勝で大車輪の活躍。国際舞台での打球は大げさな現象を起こす。沈黙していた時間が長いほど、一発の反動が大きくなる。あの大会の村上は、まさにそれだった。

マイアミで放ったホームランは、WBC全選手の中でトップの打球速度。速さは、説得力だ。規格外のスケールで、アメリカもドミニカも打ち砕ける打者がいるとしたら、それは村上宗隆だ。

背番号55は、期待を背負う番号ではない。期待を現実に変える番号だ。今大会、村上宗隆が“真の四番”になる瞬間が来る。

 
 

外野手

外野は、侍ジャパンの「得点」と「失点」を同時に背負うポジションだ。長打で一気に奪い、走塁で一塁を二塁に変え、守備では一本の当たりをアウトにして流れを断つ。

今大会の外野陣は、役割がはっきりしている。出塁で攻撃をつなぐ者、脚で相手の時間を奪う者、一振りで空気を変える者、そして世界最高峰の舞台で結果を出して帰ってきた者。打つだけでも、走るだけでも足りない。「一打」「一走」「一捕」が勝敗の境界線を動かす。

近藤健介(背番号8)

  • 出身地: 千葉県千葉市緑区
  • 生年月日:1993年8月9日(32歳)
  • 身長:173cm
  • 投打:右投左打
  • 所属:福岡ソフトバンクホークス
  • 経歴:横浜高校
  • プロ入り:2011年 ドラフト4位(日本ハム)
  • 代表歴:プレミア12(2019年)、WBC(2023年)

鈴木誠也の穴を埋める。そんな控えめな言い方では足りなかった。前回大会、近藤健介は“穴”を塞いだのではない。打線の回路そのものを作り替えた。2番に近藤がいるだけで、侍ジャパンの攻撃は途切れにくくなる。2番・近藤の出塁と進塁が、そのまま3番・大谷翔平の打席の景色を変えていた。2番・近藤の結果は、そのまま3番・大谷翔平の結果と連動していた。近藤が出塁した試合では、大谷も塁に出る場面が多く、近藤がアウトになった回は大谷も快音が出ない。そんな“同じ呼吸”で打線が動いていた。一蓮托生。その言葉が最も似合う関係が、この2番と3番だった。近藤の調子は、チームの得点効率に直結する。四球で出る。粘って投手の球数を増やす。甘い球を逃さず、右にも左にも運ぶ。派手さではなく、確実さで攻撃の温度を上げていく。短期決戦で最も怖いのは、こういう打者だ。相手投手が「何をしても楽にならない」と感じ始める。9年連続で出塁率4割超。異次元の選球眼は、役割を選ばない。リードオフマンも、つなぎのリンクマンも、クリーンアップもこなせる。近藤健介も山本由伸と同じく、出場した国際大会はすべて優勝している。背番号8は、攻撃の起点であり、攻撃の潤滑油であり、勝負を決める最終兵器だ。侍ジャパンの得点は、この男の“出るか出ないか”から始まる。

周東 佑京(背番号20)

  • 出身地:群馬県新田郡藪塚本町(現:太田市)
  • 生年月日:1996年2月10日(30歳)
  • 身長:180cm
  • 投打:右投左打
  • 所属:福岡ソフトバンクホークス 
  • 経歴:東京農業大学第二高校→東京農業大学北海道オホーツク
  • プロ入り:2017年 育成選手ドラフト2位(ホークス)
  • 代表歴:プレミア12(2019年)、WBC(2023年)

侍ジャパンの優勝の影には、いつも足攻がある。周東佑京は、その象徴だ。牧原大成と同じく、育成ドラフトからの侍ジャパン。原付の法定速度より速い速力ばかりが話題になるが、本当の凄さは“走力”ではなく“走塁”にある。

周東は、判断が速い。前回大会、大谷翔平のわずか0.8秒後にホームベースを踏んだ場面があった。あれは偶然ではない。村上の打球を、最初の一歩目で読んでいた。打球が落ちる前に、もう次の塁が見えている。周東の走塁は、タイムではなく予測で勝つ。

さらに今大会から導入される新しい拡大ベースは、周東に追い風になる。塁がわずかに大きくなるだけで、セーフとアウトの境界線が変わる。国際大会の一瞬は、その境界線で勝負が決まる。大会が「走れ、周東」と言っているようなものだ。

終盤、ベンチが動き、ピンチランナーのコールが響く。周東佑京。その名前が告げられた瞬間から、相手バッテリーの時間が奪われる。投球が乱れ、配球が変わり、内野が浅くなる。得点は、打つ前に始まる。侍ジャパンの足攻は、この背番号20から加速する。

森下翔太(背番号23)

  • 出身地:神奈川県横浜市
  • 生年月日:2000年8月14日(25歳)
  • 身長:182cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:阪神タイガース
  • 経歴:東海道相模高校→中央大学
  • プロ入り:2022年ドラフト1位(阪神)
  • 代表歴:アジアCS(2023年)プレミア12(2024年)

アジアCS、プレミア12。段階を踏んで階段を上ってきた若虎が、ついに頂点のWBCへ挑む。代表歴が増えるたびに、打席の顔つきが変わっていった。国際大会の空気に慣れるのではない。国際大会の空気を、打って動かす側に回ってきた。

「2年目のジンクス」など、関係なかった。プレミア12では全試合で4番。期待ではなく、責任の場所だ。その席に座り続けた事実が強い。とくに韓国戦、レフトスタンドへ運んだ一撃は試合を決定づけた。短期決戦で必要なのは、一本のヒットではない。一本で試合の結末を決める打球だ。森下はそれを持っている。

井端監督も「森下の一振りは試合の空気を変える」と評価し、今大会のキーマンに挙げる。困ったときに頼れる打者は、ベンチにとって最大の財産になる。

追いかける展開でも、膠着した展開でも、勝負を一気に動かせる。プロ3年目を終えたばかりの25歳。若さは経験不足ではなく、伸びしろだ。そのバットはすでに、日の丸の「重さ」を振れる。ラーズ・ヌートバーの背番号23を継承した中堅手が、WBCの局面を切り開く。

吉田正尚(背番号34)

  • 出身地:福井県福井市
  • 生年月日:1993年7月15日(32歳)
  • 身長:173cm
  • 投打:右投左打
  • 所属:ボストン・レッドソックス
  • 経歴:敦賀気比高校→青山学院大学
  • プロ入り:2015年 ドラフト1位(オリックス)
  • 代表歴:プレミア12(2019年)、WBC(2023年)

あの一打が、世界を変えた。吉田正尚がいなければ、侍ジャパンは準決勝で終わっていた。短期決戦は、1本のヒットでは動かない。1本の“意味”で動く。吉田のバットは、その意味を作れる。

前回大会、侍ジャパン史上でも屈指の「4番の仕事」をやってのけた。派手なスイングではない。だが当てるだけでもない。強く振って、強く当てて、強く運ぶ。相手投手が最も嫌がるのは、こういう打者だ。完璧に投げても、完璧に打ち返される。

今大会、吉田正尚はどんな仕事をするのか。打順が何番であれ、役割は変わらない。チャンスで一本を出す。流れが悪ければ、一本で流れを取り戻す。相手が逃げの配球をしたら、逃げ道ごと叩き潰す。

メジャー移籍初年度からWBCに出場した“侍魂”は、岡本や村上にも受け継がれている。代表は、覚悟が伝染するチームだ。吉田が先頭に立って見せた「国のために打つ」という姿勢が、打線の芯になった。

また世界を変える一打を放つのか。吉田正尚の打棒は、侍ジャパンの希望の轍である。あの轍の上を、チームはもう一度走る。

鈴木誠也(背番号51)

鈴木誠也(背番号51)

  • 出身地:東京都荒川区
  • 生年月日:1994年8月18日(31歳)
  • 身長:182cm
  • 投打:右投右打
  • 所属:シカゴ・カブス
  • 経歴:二松学舍大学附属高校
  • プロ入り:2012年 ドラフト2位(広島)
  • 代表歴:プレミア12(2019年)、WBC(2017年)

前回大会は、無念の負傷辞退。だからこそ、あの言葉が残った。前回大会の直前、MLBキャンプで「シーズンのことは頭にない。WBCのことしか考えていない」と言い放った背番号51が、ついにWBCに帰ってくる。欠けたピースが埋まるのではない。“本来あるべき打線の形”が戻ってくる。

昨季はMLBで30本塁打100打点に到達。メジャーでもトップクラスの外野手として凱旋する。

同級生の大谷翔平と並ぶ左右の強烈なパンチが、侍ジャパンにどんな風を呼ぶのか。右の鈴木、左の大谷。投手が左右で逃げ道を作ろうとしても、その逃げ道にもう一人が待っている。打線の圧は、連鎖して初めて“暴力”になる。

背番号51は、侍ジャパンにも特別な番号だ。かつて同じ51が残した伝説がある。鈴木誠也が求められるのは、その継承ではない。更新だ。あの時届かなかった舞台で、今度は自分の物語を刻む。WBCに戻ってきた51番が、相手の国の計算を狂わせる。

 
 

球団・ドラフト別の選出

名前 背番号 年齢 所属 ポジション
大谷翔平 16 31 ロサンゼルス・ドジャース DH
山本由伸 18 27 ロサンゼルス・ドジャース 投手
菊池雄星 17 34 ロサンゼルス・エンゼルス 投手
菅野智之 19 36 コロラド・ロッキーズ 投手
大勢 15 26 読売ジャイアンツ 投手
伊藤大海 14 28 日本ハムファイターズ 投手
宮城大弥 13 24 オリックス・バファローズ 投手
隅田知一郎 22 26 西武ライオンズ 投手
金丸夢斗 24 23 中日ドラゴンズ 投手
種市篤暉 26 27 千葉ロッテマリーンズ 投手
髙橋宏斗 28 23 中日ドラゴンズ 投手
藤平尚真 46 27 楽天イーグルス 投手
曽谷龍平 47 25 オリックス・バファローズ 投手
北山亘基 57 26 日本ハムファイターズ 投手
松本裕樹 66 29 オリックス・バファローズ 投手
坂本誠志郎 12 32 阪神タイガース 捕手
若月健矢 4 30 オリックス・バファローズ 捕手
中村悠平 27 35 ヤクルト・スワローズ 捕手
牧秀悟 2 27 DeNAベイスターズ 内野手
小園海斗 3 25 広島カープ 内野手
牧原大成 5 33 福岡ソフトバンクホークス 内野手
源田壮亮 6 33 西武ライオンズ 内野手
佐藤輝明 7 26 阪神タイガース 内野手
岡本和真 25 29 トロント・ブルージェイズ 内野手
村上宗隆 55 26 シカゴ・ホワイトソックス 内野手
近藤健介 8 32 福岡ソフトバンクホークス 外野手
周東佑京 20 30 福岡ソフトバンクホークス 外野手
森下翔太 23 25 阪神タイガース 外野手
吉田正尚 34 32 ボストン・レッドソックス 外野手
鈴木誠也 51 31 シカゴ・カブス 外野手

佐藤輝明と小園海斗、セ・リーグの本塁打王、打点王、首位打者の打撃の最高峰が控えという豪華なラインアップとなった。

球団別

  • MLB:8人
  • ホークス:4人
  • 阪神:3人
  • オリックス:3人
  • 西武:2人
  • 日本ハム:2人
  • 中日:2人
  • 横浜:1人
  • ロッテ:1人
  • 楽天:1人
  • 巨人:1人
  • 広島:1人

MLB組は過去最多の8人。松井裕樹が負傷していなければ9人、今井達也が辞退していなければ10人に達していた。さらに言えば、ヌートバーの手術がなければ11人だった。次回大会では、侍ジャパンの半数がメジャーリーガーという構成になる現実味も帯びてきた。

NPB勢では、日本一のソフトバンクが最多の4人を輩出。前回大会で最多の4人を送り出した巨人は今回は1人にとどまり、ヤクルトからの選出はゼロという結果になった。

ドラフト別

  • ドラフト1位:18人
  • ドラフト2位:4人
  • ドラフト3位:3人
  • ドラフト4位:2人
  • ドラフト6位:1人
  • ドラフト8位:1人
  • 育成選手ドラフト2位:1人
  • 育成選手ドラフト5位:1人

ドライチが18人と圧倒的多数を占め、2位、3位と上位指名が順当に代表入りしている。スカウトの目利きの精度が年々高まっていることの証といえる。

育成出身は2人。周東佑京と牧原大成はいずれもソフトバンク所属だ。育成枠から日本代表へ。編成力と育成力の高さ、そして先見の明が、数字以上の説得力を持って浮かび上がる。

 
 

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