
2026年、WBCは20年の節目を迎える。侍ジャパンの"全進野球"により神話を創った3年前を超え、その先へ行けるか。そんな問いが、今年の冬の空気に静かに漂っている。
第6回大会は30人で、世界の頂点に挑む。守るのではなく、もう一度、奪いに行く戦いへ。
侍ジャパンシリーズを終えた11月の時点で、史上最強の侍ジャパンを予想してみた。
投手
- 大谷翔平(ドジャース)
- 山本由伸(ドジャース)
- 佐々木朗希(ドジャース)
- 今永昇太(カブス)
- 菊池雄星(エンゼルス)
- 松井裕樹(パドレス)
- 今井達也(西武)
- 伊藤 大海(日本ハム)
- 北山 亘基(日本ハム)
- 大勢(巨人)
- 才木 浩人(阪神)
- 髙橋 宏斗(中日)
- 宮城 大弥(オリックス)
- 及川 雅貴(阪神)
- 曽谷 龍平(オリックス)
WBCでは、シーズンの成績がそのまま投球に表れるとは限らない。MLB仕様のボールとの相性、球春という時期、そして短期決戦。最も難しいのがピッチャーの選出だ。
侍ジャパンには二人の「軸」がいる。大谷翔平と山本由伸。ふたりが揃うだけで、投手陣は姿を変える。ラスボス2体が味方にいるRPGになる。
MLBの疲労も、怪我への不安も関係ない。野球界は関係者、ファンを含めて、早くサッカーのワールドカップに意識を追い付かなければいけない。野球の底上げのためにも、シーズンよりもWBCが最優先である。
大谷翔平の二刀流には様々な意見があるが、投げられる状態なのだから投げるべきである。そこに議論の余地はない。
佐々木朗希は先発に戻り、菊池雄星、今井達也も先発。この5人のローテーションで回し、今永昇太や伊藤大海は第二先発やリリーフとして試合を引き取る。後ろを固めるのは松井裕樹、大勢、北山、及川、曽谷。短いイニングを支える。
才木浩人(阪神)は実力、成績ともに申し分なく、大谷に片膝ホームランを打たれた男が今度は味方になるドラマ度120点も演出する。
曽谷龍平は韓国との強化試合の3回パーフェクトの内容、初見の打者が打ちにくそうな投球を見て抜擢した。奈良出身という“激甘贔屓ポイント”でも満票選出。異論は知らん。
追加招集組には、タイガースの石井大智の名前が真っ先に浮かぶ。今シーズン、防御率0.17という驚異的な数字を残したが、まだ1年。WBC球の適応も未知数なので、希望にも不安にもなる。そのあとの候補は、平良海馬、松本裕樹、松山晋也を挙げる。
捕手
- 若月 健矢(オリックス)
- 岸田 行倫(巨人)
- 中村 悠平(ヤクルト)
投手との連係を考えると、セ・リーグ、パ・リーグから1人は選ばないといけないため、オリックスの若月とジャイアンツの岸田の二枚看板で回す。
中村悠平は国際大会に強く、前回の優勝マスクの捕手である経験が大きい。大舞台になったとき、アドバイスが生きる。メインは若月と岸田で回し、ムーチョは「国際大会の知恵袋」としてバックアップに回る。
追加招集としては、タイガースの坂本誠志郎、ベイスターズの山本祐大が候補。
内野手
- 牧 秀悟(DeNA)
- 牧原 大成(ソフトバンク)
- 岡本 和真(巨人)
- 小園 海斗(広島)
- 中野拓夢(阪神)
- 村上 宗隆(ヤクルト)
- 佐藤 輝明(阪神)
- 村林 一輝(楽天)
内野手に関しては圧倒的な打撃力を持つか、複数ポジションを守れることが重要となる。ショートは今年の成績だけを見れば巨人の泉口友汰が筆頭だが、1年だけの成績であること、ショート以外のポジションが未知数なこともあって、追加招集メンバーの候補とした。
他には内野すべてを守れるホークスの野村勇も候補になる。可能性は低いが、オリックスの紅林弘太郎は最も侍ジャパンへの想いが強い選手なので、メンバー入りしてほしい選手。
外野手
- 鈴木 誠也(カブス)
- 森下 翔太(阪神)
- 周東 佑京(ソフトバンク)
- 近藤 健介(ソフトバンク)
外野で決定的なのはカブスの鈴木誠也だけ。近藤健介は実力、実績は申し分ないが、コンディションが懸念される。チームを鼓舞する着火剤のヌートバーがいないのが痛い。その代わりを森下翔太が担って欲しい。
追加招集メンバーで、岡林 勇希(中日)、西川 史礁(ロッテ)、五十幡亮汰(日本ハム)、万波中正(日本ハム)がいる。
1番・大谷 翔平(DH)
2番・近藤 健介(左)
3番・鈴木 誠也(右)
4番・村上 宗隆(三)
5番・岡本 和真(一)
6番・森下 翔太(中)
7番・小園 海斗(遊)
8番・牧 秀悟(二)
9番・岸田 行倫(巨人)
大谷翔平は普段から慣れている1番で相手をビビらす。「初回からラスボス出すなよ」と他国を呟かせる。2番はつなぎの神様、リンクマンとして近藤健介が恐怖のクリーンアップへ駅伝。得点圏でチャンスが回ってきやすい6番には勝負強い森下翔太。
そして、小園海斗という首位打者を7番に置く狂気。相手からすれば「打線…まだ続くの?」と絶望するポイント。第二の4番である8番にクラッチ・デスターシャの牧秀悟が入る。
代打には佐藤輝明。“当たれば消える”ホームラン装置。ここぞの場面で出すと、球場が即・祭り会場に変わる。代走には周東佑京。気づいたら塁が一つ増えている忍者。相手バッテリーの時間を奪っていく“走塁の怪盗”。クラッチ・ヒッターとクラッチ・ランナーで試合を決める。
相手投手にとっては拷問。日本にとってはアトラクション。試合ではなく “上映時間” と呼びたくなるレベルのメンバーで、もう一度、奪いに行く。
コラム:野球よ、世界を思い出せ
2025年11月18日。日本は静かに冬の足音を感じている。朝のニュースを見ていたら、井端監督が記者に向かってこう語っていた。「ドジャースからの返事がまだ来ない。早く欲しいんです」と。
その声には苛立ちというより、諦めかけたような無力さも混じっていた。なにしろ相手は、世界一の球団である。だが、その「世界一」がこの有様だ。迷う必要のない返事に、これほど時間をかけなければならない理由はどこにあるのか。なぜ、世界最高の国際大会出場に、これほど腰が重いのか。
「だから野球は、世界のなかでマイナースポーツなのだ」
そう言いたくなる。あまりに時代遅れである。
サッカーのワールドカップを見てほしい。各国の選手がクラブチームから離れ、誇りを胸に代表のユニホームに袖を通す。そこには、スポーツが国家や国境を超える瞬間がある。その価値を理解しているからこそ、クラブもまた後押しする。
野球は、その段階にようやく足を踏み入れようとしている。だが、悪の帝国・ドジャースのように、いまだ旧態依然とした球団が選手の「出たい」という思いを押しとどめてしまう。WBCに選ばれることは、今の野球において最大の名誉だ。選手がその舞台を望むのであれば、球団は支持すべきだ。協議など1ミリも不要。それが「世界一」を名乗る組織である。
2022年、カタールで行われたサッカーW杯の決勝戦は、地球上の15億人が目撃した。大会全体で言えば、50億人近くが何らかの形で視聴に接したとFIFAは報告している。たった一大会で、世界人口の過半数がひとつのスポーツに目を向ける。それが、ワールドカップという現象である。
収益にしても、FIFAは2022年の大会で75億ドルを超える収入を得た。SNSでは史上最多の「いいね」を記録し、Googleトレンドではあらゆるスポーツイベントの関心度を凌駕した。これはサッカーを知らない層までも巻き込む、地球規模の現象だ。
一方、サッカーのクラブ最高峰とされるUEFAチャンピオンズリーグ決勝の視聴者は、約4億人にとどまる 。つまり、W杯はクラブ大会の3〜4倍の視聴インパクトを持つ。
サッカーが世界的競技であり続ける核には、「国を背負う大会」=W杯の存在がある。そして、選手自身もそれを認識している。メッシ、ロナウドといった世界的スターも、キャリアの到達点をW杯制覇と捉えている。
次回2026年大会では100億ドル超の収益が見込まれている 。この1大会の収益だけで、プレミアリーグやセリエAを含む、欧州5大リーグの年間合計収入に迫る規模である。
この数字は、単なる興行としての成功を示しているのではない。W杯はスポーツが文化になり、言語になり、国境を越えるきっかけであることを証明している。
WBCにも、その可能性がある。選手たちが目指すのは、シーズン162試合の果てにあるタイトルではなく、国の色をまとって戦う、限られた機会なのだ。
ムーキー・ベッツが言う。「WBCはワールドシリーズよりも上だ」と。フランシスコ・リンドーアも同じように語る。リップサービスでそう言っているのではない。国の名を背負う意味を、肌で知っている。
03年に55セーブを挙げてサイ・ヤング賞に選出されたエリック・ガニエは、大谷翔平に「WBCで投げろ」と強く推す。17年WBCにカナダ代表として出場しており「野球人生で最高の経験だった。国の代表としてプレーするのは、この世で最高の舞台。あれに匹敵するものは他にない」と話す。
リスクについても「リスクはある。でも、フィールドに足を踏み入れるたびに常にリスクは存在する。リスクよりも野球そのものの価値が上回る」と力説する。
だから、ドジャースこそが先頭に立たねばならない。WBCに選手を送り出す最初の球団でなければいけない。アメリカという国が保守的になったらおしまいだ。
野球もまた、世界を本気で目指すならば、WBCを“頂点”としなければならない。いや、すでに頂点なのに、ドジャースのような球団が、そこに蓋をする。選手の想いに寄り添い、国の名を背負う誇りを支えるのが、真の「世界一の球団」の姿だ。その姿勢が、野球の未来を左右する。
球団だけではない。野球ファンも、WBCに目を向ける必要がある。
「国際大会はシーズンの妨げになる」
そんな声を耳にする。ペナントレースを大事にしたい。チームを壊されたくない。選手が怪我をするのが怖い。ファンとして、そう思う気持ちはよくわかる。だが、立ち止まって考えてほしい。
いま、あなたが熱狂しているシーズンこそ、国際大会があるから面白くなっているのだと。
WBCやプレミア12、アジアCS。あの舞台で、一流の選手たちが国を超えて交差する。その中で得た経験や技術、マインドが、シーズンに持ち帰られる。MLBや他国の代表で活躍した選手と春先にキャンプを共にし、呼吸を合わせ、意識をぶつける。その時間は試合に現れなくとも、確実にチームと選手の土壌を耕している。
2023年のWBCでは、ダルビッシュの若手への技術共有、大谷の背中が見せた野球の「本気」は、大会が終わってからも確実に残った。それはペナントの質を、着実に底上げしている。
国際大会は、選手のためだけのものではない。その先にいる「あなたの応援するチーム」のための舞台でもある。
加えて、WBCは野球というスポーツの魅力を全国、いや全世界に拡張する。2023年のWBC後、日本では少年野球の問い合わせが一気に増えた。ドラフトの入団会見で、チームの日本一や個人タイトル獲得ではなく、「侍ジャパンのユニホームを着ることが夢です」と語る選手が増えている。
その夢が、5年後、10年後にプロ野球を担う世代になる。裾野が広がり、競争が激化し、シーズンの野球が、より面白くなるのだ。
国際大会を「邪魔だ」と切り捨てる前に、その波紋がシーズンのどれほど深いところにまで届いているかを、想像してみてほしい。
国際大会は未来を作る。その恩恵を一番受けているのは、シーズンを愛するファン、あなたなのだ。
WBCが人と国をつなぎ、誇りと希望を生む場であることを、野球界が思い出す必要がある。
野球にとって、WBCとは何か。それはただの大会ではない。世界と接続する窓口であり、未来への入り口である。
2年前に出版した『WBC 球春のマイアミ』で書いた。
すべての道は、WBCに通ず。

